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彼岸花と薊

個人的に好きな花の二選。
桜(染井吉野以外)も梅、百合、菊、紫陽花(それぞれ自生種)なども好きなのですが、思い入れがある花は、彼岸花と薊です。



彼岸花

私は、5歳の時分に母と死別し、
父の実家で高校卒業まで祖母と同居していました。
祖母が懸命に育ててくれたことで今があります。

小学生高学年の頃、その祖母に道端に咲いていた綺麗な花を持ち帰って喜んでもらおうとしたのですが・・
凄い勢いで怒られました。
そう。その花が「彼岸花」。

彼岸花は、ヒガンバナ科ヒガンバナ属に分類される中国原産(史前帰化植物)の多年草で、路辺や畔、墓地、堤防など日当たりの良い場所に生えていることが多い植物。

日本では各地方で通じた異名が派生し、別名・地方名・方言はから数多くあります。葬式花、墓花、死人花、地獄花、幽霊花、火事花、蛇花、剃刀花、狐花、捨て子花、灯籠花、天蓋花などですが、なんとも不吉な別名が多く見られますね。祖母には、死人の花だから・・と怒られました。今から40年くらい前の話ですが、怒られた瞬間を今でも鮮明に覚えています。

しかし彼岸花は、別名として「曼珠沙華」とも呼ばれています。
梵語(manjusaka サンスクリット語)の音写であり、『法華経』などの仏典に由来します。法華経序品では、釈迦が法華経を説かれた際に、これを祝して天から降った花・「四華」の1つが曼珠沙華であり、花姿は不明ですが「赤団華」の漢訳などから、色は赤と想定され、四華の曼陀羅華と同様に法華経で曼珠沙華は天上の花という意味もあります。
(四華は、曼荼羅花(白蓮華)・摩訶曼荼羅花(大白蓮華)・曼珠沙華(紅蓮華)・摩訶曼珠沙華(大紅蓮華))

あれ?
記事を書きながら思ったのですが、日本は仏教が根付いていると思うのですが、仏典由来の花名をもつ彼岸花なのに、日本での異名は不吉な別名が多いのは何故でしょうかね。


埼玉県吉見町の「さくら堤公園」の彼岸花の数々。
花色が豊かで趣がありました。
(青い彼岸花を探してみたのですが・・。くっ、無かった。)

今秋は、未だ訪れたことがない埼玉県日高市にある巾着田に行きたいです。



薊。
キク科アザミ属 及びそれに類する植物の総称です。
スコットランドの国花。
ロレーヌ公国を象徴する花。
エミール・ガレのガラス工芸に登場する花。
そして、やたらと棘つき無暗に触ると痛い花。

※ロレーヌ公国は、現在のフランスのロレーヌ地方北東部、ルクセンブルクおよびドイツの一部からなる歴史的公国。
※エミール・ガレは、アールヌーボーを代表するフランスのガラス工芸家。

私は、高校卒業後、盆栽園で研修(6年間)をさせていただきました。

が、学生の頃からの引っ込み思案の性格から他人とのコミュニケーションが思うようにとれないこともあり、その性格はなんとか変えたかったので、研修以後もそのまま盆栽園でお世話になるか、地元に帰って盆栽園を開業するかという選択をせずに、好きだった美術品の仕事をしようとある画廊に飛び込みました。(性格的に周囲に流されることが多かったので自分で選択をしたかったのです。)
そこは主にアールヌーボーやアールデコのガラス工芸品を扱う画廊でしたが、特にエミール・ガレのガラス工芸の扱い量はおそらく業界最大手だったと思います。(どこぞの馬の骨ともしれない人間をよく雇ってくださいました。感謝。)

エミール・ガレは、植物学に対しての造詣が深く、その作品には植物や果実を描いたものが多く見られます。特に薊の花は、ガレの出身地であるフランス・ロレーヌ地方にて愛国心や勇気のシンボルとして掲げられており、特別な意味をもっています。
※1870年、プロシアとフランスの間に普仏戦争が始まり、ガレは義勇軍に志願した従軍していますが、敗戦国となったフランスはフランクフルト条約によりロレーヌ地方の一部とアルザス全域を割譲しました。
※ガレは、ナンシー水利森林学校に留学中の農商務省官僚で美術に造詣の深い高島得三と交流を持ち、日本の文物や植物などの知識を得ていました。水墨画を得意とする高島はナンシーで400点ほどの作品を描きました。このような交流が契機となって、ガレは水墨画的なぼかし表現を伴う黒褐色のガラスを生み出しています。

その画廊時代に、薊について調べていると花言葉の一つに「独立」とありました。前述しましたが、その当時、周囲に流される性格だった私にとり、ガレの作品にも数多く描かれていて「独立」の花言葉を持つ薊の印象が強く残り、今でも薊に対して一定の敬意を持っています。

上の写真は、去年、自宅に舞い込んだ棘薊(トゲアザミ)。
薊自体に棘のイメージが強いのに更に花名に「棘」が付くとは。
開花後もそのまま水遣りしていたら、種子が根付いたようで大量に発芽しています。玄関前に。

因みにですが、薊の花言葉の一つ「独立」は、私には独立「不羈」の意味合いが強く、そのまま小野不由美氏の「十二国記」にも紐付けられていますね。
※景王(中島陽子)の初勅


次回(が、あればですが)彼岸花、薊以外で好きな花である桜(染井吉野以外)について、思っていることを書いてみたいです。
私の中で「桜」といえば、品種もですが、
本居宣長「しき嶋のやまとごゝろを人とはゞ朝日にゝほふ山ざくら花」
西行「願わくは 花のしたにて 春死なん そのきさらぎの 望月の頃」です。






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