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映像の力ーー人の意識にアプローチする最良の方法を探って

JBAには動画ディレクターという職種がある。動画クリエイターって動画を撮影して編集するだけ?いいえ、違います。
今回インタビューしたのは動画ディレクターの高田さん。とある企業から“生産工場で働く社員の意識を改革してほしい”という依頼を受けてーー。今回のプロジェクトにおける動画ディレクターの立ち位置とは?具体的にどんな仕事をしているのか?JBAで活躍する、高田さんに伺います。(ライター:青山)

00/プロフィール

高田開成:入社3年目の動画ディレクター。海外の大学から日本の大学に編入・卒業後、2021年JBA新卒入社。趣味は映画鑑賞で、好きな映画は『仁義なき戦い』。本人曰く、"少し気持ち悪い”映画が好き。

01/求められたのは意識を変える“何か”

ーー今回のプロジェクトの概要を教えてください。

高田さん:映像を通じて生産工場で働く技能員さんの“品質に関する意識”を向上させる、というのが今回のプロジェクトのメインテーマです。ただ、プロジェクト始動当初には、映像じゃなくて、漫画やパンフレットで意識を向上させようっていう話もあったんです。ですが、構成次第では、情報を効率よくインプットできる可能性が一番高いという点から、映像という手段を使うことになりました。

ーー”品質に関する意識”とはなんですか?

高田さん:工場から出荷される製品の品質に関する意識のことです。この意識が低いと、”NG品”と呼ばれる、品質が担保されていない商品が量産されることに繋がりかねないんです。作り直すと時間もコストもかかる。その上、今までつくってきた商品の品質についても再度確かめないといけなくなるから、”リコール”(一旦市場に流通した商品を集めて検査し直すこと)しなければいけなくなる。NG品を市場に流通させてしまえば、重大な問題にも繋がりかねないので、ここまで大事(おおごと)にする必要があるんですよ。でもNG品の生産を意識改革で減少することができたら、必要のないコストをかけなくてもいいですよね。そこでJBAは意識改革プロジェクトの支援をしました。


02/品質に関する意識の裏側にあるもの

ーー今回のプロジェクトの背景となる原因はなんだったんですか?

高田さん:もともと、クライアントが独自で作成した品質に関する意識を向上させるための教材がありました。ただその教材は、直接的に現場に携わっているわけではない、本社の社員さんが作成したものでしたので、工場で実際に製品を作成する技能員さんには堅苦しく、理解しにくいものに思われていたんです。まるで論文みたいな教材でした。そこで、品質に関する意識があまり育たないまま製品の製造に取り組む技能員さんが増加したことが、リコール増加の原因なのではないか、ということで、JBAの人材育成のためのコンサルノウハウを活かした教材の作成し直しを依頼されました。

ーーなるほど。リコール増加の原因はそれだけですか?

高田さん:それだけではないです。僕達が行ったヒアリングを通じて判明したことなのですが、技能員さん一人ひとりが、”自分の仕事にしか興味がない”というのも原因の一つでした。工場では工程ごとに分かれて仕事をしていたのですが、ほとんどの技術員さんは、自分が担当する工程で作られたものが、今後どのような工程を辿ってどのような形になるのかに興味がなかったんです。それどころか、自分が担当する工程以外の工程を少し馬鹿にしている感じもあって。朝から晩まで同じ場所で同じ工程を繰り返していて、他の工程の人とコミュニケーションを取る機会もないようだったので、他工程への配慮がないのもしょうがないとは思います。
働き方改革で規定の勤務時間が徹底されるようになってから、他の工程を知っている先輩に教えを請う機会もなかったみたいですし。コロナで飲み会などのコミュニケーションの機会が失われたっていうのもありますしね。ただ、自分の工程にしか興味がないと、"次の工程の人が作業しやすいような、良い製品を作ろう”みたいな意識がなくなりますよね。工場としての連帯感が生まれない。この連帯感の欠如が、品質に関する意識が不足して、リコールが増加している原因だと考えました。


03/"ただ撮るだけ”じゃないからこそ生まれる、映像の力

ーーなぜ教材を映像にしようと思ったんですか?

高田さん:もともと映像は教育と相性が良いと思っていました。やはり、文字媒体よりも親しみやすいですし、"誰が見てもわかる”ようなものを作りやすいと思うんです。今回のプロジェクトは、本社の社員さんが作成した教材がわかりにくい、ということが発端となって始まったものです。だからこそ、JBAが制作する映像は“誰が見てもわかる”ものにしなければならない。そして”わかる”だけでなく、実際に”品質意識を向上させる”という目標も達成しなければならない。その課題解決の手段として、映像という媒体はうってつけだと考えました。

ーー映像を制作するにあたっての事前準備はどのように行ったんですか?

高田さん:実際に工場に出向いて、そこで働く多くの方々にヒアリングをしました。短い期間で出来るだけ多くの方にお話を伺いたかったので、分刻みのスケジュールを組んで、通常業務に関する質問や品質意識に関する質問、コミュニケーションに関する質問などを投げかけました。その結果、先ほど述べたような、品質意識が低い理由が明確になりました。

ーー動画ディレクターは、映像を撮影・編集する仕事だと思っていたので、直接ヒアリングに出向かれたことが意外です。

高田さん:動画ディレクターとは言っても、実際、映像を撮影・編集している時間よりも、映像を撮影するための準備をしている時間のほうが長いですよ。映像を通じた課題解決がゴールなので、何が課題解決に繋がるのかを考える時間が必要なんですよね。僕は、もちろん映像を制作することも好きだけど、自分の撮った映像が誰かにとって良い変化を起こすことが何より嬉しいんですよね。だからこそ、今回のプロジェクトに携わって、より映像の可能性の大きさに気付くことができて良かったなと思っています。

04/映像の可能性を引き出すために

ーー映像を制作する過程で意識したことなどはありますか?

高田さん:やっぱり、誰が見てもわかりやすい映像にする、ということはすごく意識しました。工場には、性別も年齢も学歴も様々な技能員さんがいらっしゃるのですが、特定の層にしかわからない動画になってしまったら意味がありません。だからこそ、動画の途中でクイズコーナーを挟んだり、バラエティ風の編集にしたりして、誰でも見やすくわかりやすい動画にしました。なるべく堅苦しくならないように、実際に働いている技能員さんにインタビューをする映像になってます。

ーー私も拝見したのですが、本当にわかりやすく、楽しく観られました。子どもでも工場でどのような仕事をしているのかわかるような動画でしたね。

高田さん:そんな映像を目指していたので、そう言っていただけて良かったです。文字媒体だとどうしても堅苦しい感じになってしまうところを、親しみやすく表現できたと思います。ただ、どんなにいい映像を作っても、観られなければ意味がないんですよね。この映像はDVDになって、商品を生産する全ての工場に配布される予定なんですが、その中の一体どれだけの方が観てくださるのか…。おそらくあまり観ていただけないと思うんですよね。だからこそ、映像を制作するだけでなくて、その動画を観るきっかけまで与えられるような仕事もしたいと思っています。

ーー具体的にどのような形が効果的だと思われますか?

高田さん:働く方々の自由意思に任せて視聴してもらう、という形は正直難しいと思います。勤務時間内にわざわざ作業する手を止めて観る、というのも現実的ではないですし、かといって勤務時間外に観る方もあまりいらっしゃらないでしょうし。だから、強制視聴という形をとりたいと思っています。特定の日時に工場の全員で映像を視聴する時間をつくるとか。あとは、工場で働く方々の家族と一緒に映像を視聴してもらう場をつくるのもいいかなと思っています。自分がどんな仕事をしているか、パートナーや子どもに知ってもらえたら嬉しいじゃないですか。家族に映像を観てもらって、自分の仕事について家族に説明していく中で、工場で働いている方々の、工程に対する理解が深まるのではないかと考えています。自分の仕事に対する誇らしさも生まれるでしょうし。これらの取り組みに関しては、僕がぼんやり考えているだけなんですけどね。いつかそういうこともできたらいいなと思っています。

05/映像の力を最大化させる思い

ーーそこまで踏み込んでまで"品質に関する意識”を向上させたいと思う理由はなんですか?

高田さん:僕は学生の頃から、"映像制作を通して何かしらの課題を解決したい”と思っていました。だからこそ、"コンサルティングとクリエイティブの融合”を謳っているJBAに入社を決めたんです。今回は特に、取引先の企業からの「工場で働く社員の意識改革をしたい」っていう要望で発足したプロジェクトだったので、どんな映像をどう撮るか、どう編集するかはほとんど自分たちに委ねられていました。だからこそ、"品質に関する意識を向上させたい”という課題に対して主体的に関わることができていると感じています。映像制作会社に勤めていたら、こういったプロジェクトには携われないと思うので、"BAに入社して良かった”"このプロジェクトをやるためにJBAに入社したんだ”と思えました。

ーーこのプロジェクトを通して、工場で働く方々に対する気持ちの変化はありましたか?

高田さん:もちろんありました。なにせ本当にたくさんの方々とお話させていただいて、たくさんのことを教えていただいたので。JBAと取引先の企業の両方に利益を出すための仕事という側面はもちろんありますが、それよりも、工場で働いている方々に悲しい思いをしてほしくない、という感情が芽生え始めました。NG品を作り出してしまったことで重大な問題を引き起こすなんてことがあったら、工場で働いている方々はきっとショックじゃないですか。今回のプロジェクトに携わって、様々な方々と接するうちに、そのような負の感情を味わってほしくない、と思うようになりました。

ーー最後に、今後の目標を教えてください。

高田さん:僕は今回のプロジェクトを通して、"映像の力"を再確認しました。僕はもともと、映画監督になりたかった人間です。どちらかと言えば、映像制作そのものに力を入れたかったんです。だけど次第に、"ただ映像を制作するだけでなく、それを通して課題を解決したい”と思うようになっていて、今回のプロジェクトにもその思いは変わらぬまま挑みました。ヒアリングから課題を明確にして、その課題を解決するための手段として映像を制作し、視聴してもらう。その過程で、映像の無限の可能性を感じました。今後は、先程も言ったんですけど、映像の視聴方法をどうするか、というところにも切り込んでいって、僕が撮った映像の持つ力を最大化させたいですね。長期的に工場で働く方々のためになる、取引先の企業のためになる仕事をすることが当面の目標です。




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