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今をときめくジャズドラマーにジャズの未来を聞いてみた

JAZZ SUMMIT TOKYO オリジナル企画
「サスティナブルジャズ」

第1回目のゲストは、
今をときめくジャズドラマー、柳沼佑育さん。
若手ジャズミュージシャンが語る、ジャズの将来とは。
そして、今自分達がすべきこととは。

ゲスト:柳沼佑育(やぎぬまゆうすけ)
2011年に尚美学園大学入学。在学時より、ピアニストの竹内亜里紗氏のグループ、”BeBop Revisited!”に参加し、アルトサックスの名手、澤田一範氏をはじめ、様々なミュージシャンとの共演を重ねる。卒業後は、同世代からベテランまで、多数のミュージシャンと共演。現在も様々なバンドで都内を中心に活動している。

モデレーター:中山拓海(なかやまたくみ)

2017年12月CD"たくみの悪巧み"でキングインターナショナルよりメジャーデビュー。2015年同世代のミュージシャンと共に「JAZZ SUMMIT TOKYO」を結成後、様々なイベントを企画運営。2021年に株式会社化
し、現在は高品質な動画配信サービスとして『JAZZ SUMMIT TOKYO PREMIUM』を運営している。

JAZZ SUMMIT TOKYO 公式webサイト
https://www.jazzsummit.tokyo/
動画配信サービス『JAZZ SUMMIT TOKYO PREMIUM』
https://www.jazzsummit.tokyo/premium

左 柳沼佑育 右 中山拓海

誰に向けて何を発信していくか。

中山 「サスティナブルジャズ」記念すべき第1回目のゲストは、僕と同い年で、日本ジャズ界を代表するドラマー、柳沼佑育さんです。
お忙しい中ありがとうございます!

柳沼 こちらこそ!ありがとうございます!

中山 もう10年来の仲ですが、今回は、ちょっと真面目な話。(笑) ジャズの持続可能性についてお伺いしたいと思います!コロナ禍で、僕自身このような配信を始めた訳ですが、柳沼君自身がコロナ禍で変わったことや、何か新しいことを始めたとか、どうですか?

柳沼 そうだね、やっぱりこういう緊急事態になるとさ、僕らの仕事なんてすぐパッと無くなる。しょうがないことだけどね。その時に、時間だけはあったから、自分と向き合うようになったかな。色々な仕事をやるのも良いけど、自分がやりたいことをもっと研ぎ澄ませてというか、自分は何でこういうことが好きなのかとか。

中山 みんな動画撮って上げてたり色々やってるよね。

柳沼 うん、僕もこういう機会がないとやろうと思わなかったけど、Twitterとかインスタに動画上げてみた。けど、自分で何やりたくて上げてるのかはっきりしていないのもあって。それで止めちゃったんだよね。

中山 誰に向けてどういう音楽を発信していくのかが無いと続かないよね。

柳沼 無意味になっちゃう。それもあって、自分の発信の仕方とか考えて。リーダーライブとかも今までやってきたけど、「自分で発信する」ということをやっていった方が良いなと。今更な感じもするけどね。

中山 色んな意味で、リーダーやるのは変わってくるよね。リーダーをやれば大変なことがわかる。誘ってくれた人への感謝も変わってくる。僕は、最近プロデュースとか裏方業もやるけど、ジャズのお店とか、スタッフがどういう人達かとか、ここ数年で見える景色が変わってきた。だから、そういうこともぜひ、ミュージシャンの皆様にも一度やってもらったら、変わってくるんじゃないかなと思ったりする。

柳沼 やりたいことをやった方が良いよね。やることで、音楽も活性化して面白くなる。素直に、好きなことを頑張ろうと思いますね。

ジャズが生まれて100年。サスティナブルとは何か。

中山 サスティナブルの観点で言えば、新しいことをガンガンやっていくのがサスティナブルなのか。ジャズが生まれて100年という中、クラシックとか日本の伝統芸能のような古典的なものになっていくのか。それとも、ジャズは新しいものとしての扱いになっていくのか。今はちょうど面白い時代だと思うけど、柳沼君は伝統的なスタイルを貫いている中でどう感じる?

柳沼 すごい本題だね。緊張してきたな。(笑)
僕は、1950〜60年代とかの古い音楽が好きだけど、歴史的な流れで見た時に、たまたま自分より時代が前なだけで、やってる最中に古いとは思わないよね。あんまり、「あのレコードのアレをしよう」という気持ちではなくて、新しい気持ちでやってる。今、最先端なことをやってる人達も、それと同じなんじゃないかな。自分の言葉でたまたまそこでやってるのが面白かったり。いろんなミュージシャンがいて、みんな違うし、面白いよね。

中山 今まで無かったものを作り出すっていうのはどうなんだろう?

柳沼 めちゃくちゃ大事なこと。
その場の感動が起きれば、時代性関係無く、新しいものなんじゃないかと思う。

中山 実際、アメリカのヒットチャートとかもそうだし、国内でも美空ひばりさんって昭和のイメージがあるけど、「川の流れのように」とか平成の曲なんだよね。

柳沼 けど、感動するよね。決して古いのに固執しているわけではなく、アンテナが行く先がそこが多いってだけで。本当に良いものは普遍性があるというか。そこは大事なんじゃないかな。

セルフプロデュースの時代に大切なこと。

中山 今、すごく音楽的な話をしてるけど、その一方で、僕は文化というのは必ずしも経済と切り離して話せるものではないというか、すごく密接に関わっていると考えていて。
ミュージシャンは音楽のこと考えた方が良いって言うけど、だからと言って音楽が素晴らしくても残らなかった人達がいっぱいいる。
ジャズの市場ってどうなんだろうと考えた時に、縮小しているのは確かで。ジャズが商業的に上手くいっていた時は、レコード会社や代理店がバックアップしてくれていたけど、今はそこまでジャズに費やせる状況では無くなった。皆さん努力していただいているけど、時代がセルフプロデュースの時代になってきたから、ミュージシャン自身がセルフでどこまで出来るかが、今のジャズが今後生き残っていけるかというところに繋がっていると考えていて。

ゲスト柳沼が登場する『JAZZ SUMMIT TOKYO PREMIUM』の映像。映画のワンシーンのような高品質なジャズ動画が魅力の動画配信サービスである

…結構重たい話になってくるけど、ジャズミュージシャンってライブやってる本数とか、自分達で考えながらやってるのかな?
自分が1ヶ月に出るライブが何本で、ミュージシャンに対していくら払うから、集客するためにどう頑張るか、どうしたら良いか…。メディアに発信する機会とか、考えていくべきだと思う。
…それぞれのスタンスがあると思うけど、柳沼君はSNSで丁寧に告知をしてくれるよね。意識してやってるの?

柳沼 そうだね、Facebookで自分のページを見た時に、タグ付けだけだったりすると味気なく感じて。

中山 シェアだけでも、コメント付けると違うよね。
人それぞれで、キャラクターなのかもしれないけど、誰に向けて何をやってるのかを意識してやった方が良い。
尖った話かもしれないけど、お客さん入らないライブがあるのはしょうがなくても、それをずっと続けるのってどういうつもりなのか。なんか、お店の方にも迷惑がかかっちゃうと僕は思うし、いつか来てもらえるようにしなければいけないと思うし…。
こういう話、コメントしづらいね。(笑)

柳沼 これは現実問題だからね。

中山 自分も経営者としてやっていく中で、数字の変化を把握しなければいけないと思った時に、自分がジャズのお店経営していくことを考えると、その時にこのミュージシャンの組み合わせで何人入って、別の月では何人入ったというのをミュージシャンと一緒に協議したい。セットリストがどういう風になったのか、リピーターはどういう人か、告知の仕方も全部含めて。
やっぱり、経済として、商業として成り立たないといけないと思うから、ミュージシャン自身が自覚を持って、次の世代に向けてかっこいい存在であってほしい。

柳沼 僕もそう思う。

演奏活動を会社経営を両立する中山。それぞれの活動が持続可能性について考えるきっかけになっている

ジャズに憧れていた少年の頃の僕が思うこと。

中山 ミュージシャンに憧れていた僕からすると、だからこそ、「そのMCって寂しいよね」というMCがあって。お客さんが10〜20人の時に、「今日はたくさん来てくれてありがとう」って。「たくさん」って言うのが寂しい。もっともっとかっこよくいて欲しい。

柳沼 気取ってるくらいのね。

中山 そう言う意味で、お客さん入らなくても良いやってなっちゃうと次の世代に絶対続かないから。
「地球の未来を考えて環境を汚さないようにしよう」と言うのと同じこと。
コアなファンがいて、ある程度ギャラがあって、教育現場で教えてて、それでお金が入るから安心と思っていると現場に憧れる人がいなくなる。分断した社会になる。

柳沼 音楽を変えるのはよくないし、自分の信じることをやった方が良いけど、その見せ方だよね。
SNSとかも使い方は自由なんだけどさ。

中山 余計なお世話かもしれないけど、それもカッコよく、誰に向けてどうやって行くか、考えて発信して欲しい。どういう立場で言っているかというと、ジャズに憧れていた少年の頃の僕。ジャズのJも知らない時の。

柳沼 わかるわかる。

中山 何でそういうこと言っちゃうんだろうって寂しく感じる時があるよね。けど、そういう意識を持ってやっていれば、後輩達は感じてくれると思う。

柳沼 どんどんコンテンツも変わるしね。若い人にも来て欲しいけど、それはどうしたら…。

「JAZZ SUMMIT TOKYO」への想い

中山 本当にそうだよね。「JAZZ SUMMIT TOKYO」を初めたのは若い人に聴いて欲しいという目的から。
こないだちらっと話したけど、そろそろちゃんとやらないと若い人でなくなる。自分が。(笑)

『JAZZ SUMMIT TOKYO PREMIUM』に複数回出演する柳沼は、同世代のみならず幅広い世代のミュージシャンと共演し見事な演奏を見せている

柳沼 自分が若手でいる時に、同世代のお客さんも居ないといけないよね。
ちょっと照れちゃうんだけど、最近ね、高校の時隣の席だった同級生が、たまに来てくれるの。
仕事終わりに駆けつけてくれて、お酒飲んでたら、泣きそうになったって。
「仕事終わって酒飲んで音楽聴いてグッときた」
ジャズバーは、そういう気分になれる場所なんだと思うんですよ。

中山 そういう人達の感性のおかげで僕達はやれてるんだよね。

柳沼 そういう人達を増やしていくしかないんだよね。なんて言うんだろ、「遊びの選択肢になる」。
今はジャズバーっていうのは選択肢に無いんだよ。
「居酒屋いく?ジャズいく?」みたいな。「今度あいつも連れて行こうぜ」みたいなさ。
「上司でジャズ好きな人いたからさ」とか、そういう風に広がって行くしかないんだよね。
今から地道にやっていかないとこれから選択肢がなくなるからね。
やっぱ俺、ジャズ知らなかった時、ジャズバーってどこにあるのか知らなかったからさ。
実際、こんなにあるから。ちゃんと意識を持ってやって行くしかないと思う。

中山 素晴らしい!「遊びの選択肢」良い言葉だね。
今日、この現場に来る前にすげぇ真面目に話すんだろうなと思ってたけど、さすがでしたね。
普段こういう話しないからおかしい。(笑)

柳沼 照れちゃうね。(笑)

中山 本当に、第1回目にふさわしいゲストで、
ジャズの将来について考えながら活動していらっしゃるのが伝わってきました。
柳沼佑育さん、本日はありがとうございました!

文・編集 小林真由美

JAZZ SUMMIT TOKYO 公式webサイト
https://www.jazzsummit.tokyo/
動画配信サービス『JAZZ SUMMIT TOKYO PREMIUM』
https://www.jazzsummit.tokyo/premium


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