100%の瞬間 〜ぼくとアイドル〜
ぼくが一番最初にファンになったアイドルは伊藤つかささんだった。
当時、一番若いアイドルで自分よりも少しお姉さん。歌声はおぼろげながらもかわいらしさが溢れていた。
その後は、しばらくアイドルには興味がなかった。洋楽ロック・ポップスにハマったことともあって、アイドルの方にまで気が回らなかった。
しかし、また再びアイドルに興味を持ち始めるきっかけがあった。
洋楽が好きで、特にDAVID SYLVIANやJAPANが好きになっていたぼくは、自然と坂本龍一さんや土屋昌巳さん、見岳章(アキラ)さんにも興味を持つようになっていた。すると、土屋昌巳さんがテレビ番組「夕やけニャンニャン」に出ていることを知り、ミーハーとして土屋昌巳さん見たさに「夕やけニャンニャン」を見始めた。それが、アイドルの沼への入り口だった。
そのうち、おニャン子クラブ自体にも興味を持ち始めると、彼女たちの曲を後藤次利さんが書いていることを知ることになる。後藤次利さんといえば、サディスティック・ミカ・バンド、サディスティックスのベーシストだということを知っていたので、そこに興奮した。しかも、とんねるずの「一気」「雨の西麻布」は、一風堂の見岳章さんが作曲している。ぼくの好きな日本人ミュージシャンがこの界隈に関わっている。もう引き返せなかった。
もちろん、当時中学生のぼくは、おニャン子のメンバーでは高井麻巳子さん・河合その子さん、その他では西村知美さん・斉藤由貴さんが好きだった。しかしそれよりも作編曲者の名前を調べていくと、細野晴臣さんも坂本龍一さんも高橋幸宏さんもアイドルに曲を書いている。伊藤つかささんのレコードを見直してみると、トノバン(加藤和彦)さん、大貫妙子さん、大村憲司さんの名前も。YMOや一風堂、はっぴいえんど周辺のミュージシャンが参加しており、他の当時のアイドルなどの作編曲もしている。そんなところに目が行くので、トップアイドルだけではなく、BC級のアイドルも気になり出してしまった。
当然、その当時活躍されていた、筒美京平先生・林哲二さん・芹澤廣明さん・佐藤準さん・山川恵津子さん・高橋研さんなどなど、明星の歌本や歌番組のテロップなどで作家さんの名前を見て曲を聴くようになった。
もちろん、歌っているアイドルの女の子のかわいさにも惹かれてはいるのだが、どうしてもクレジットが気になるのだ。
レコードを買うと、書いてあったり書いてなかったりもするのだが、ミュージシャンのクレジットがあると、誰が演奏しているのかが気になりだし、ディレクターやミキサーの名前まで気になりだした。
そんな中学高校時代には、ロックやパンクを聴きながら、アイドルも聴き漁っていた。
80年代後半から90年代前半の芸能・音楽シーンはおニャン子旋風からバンドブームへと移り変わっていて、アイドルは数名のトップアイドルを除いては、冬の時代と呼ばれる低迷期を迎えていたが、みんな素晴らしい楽曲を歌っていた。ちょっと下手な子もいたが、声や雰囲気を合わせて曲が良ければ全く気にならなかった。まだ、打ち込み全盛の時代に入る手前のスタジオミュージシャンが手練手管の絶妙な演奏が聴けたとても良い時代だった。
その後、打ち込みのアレンジが徐々に主流になってくるが、それでもキラキラとしたアレンジは聴いていて楽しかった。船山基紀さん・萩田光雄さん・井上鑑さん・林有三さん・新川博さん・武部聡志さん・有賀啓雄さん・亀田誠治さんなどの書ききれないほどの素晴らしい編曲家がアレンジをしていた。
そして、ロックミュージシャンの曲提供も多かった。戸田誠司(フェアチャイルド)さん・小西康陽&高浪慶太郎(ピチカートファイブ)さん・加藤ひさし(コレクターズ)さん・氷室京介(BOΦWY)さん・奥田民生(ユニコーン)さん・森若香織(ゴーバンズ)さん・巻紙公一(ヒカシュー)さん・PANTAさん・鈴木慶一(ムーンライダース)さんなどなど豪華な面々が、素敵な曲を書いていた。
しかし、アイドルがCDを出せない時代に入ってしまい、新たにアイドルの曲を聴くことがなくなってしまった。
安室奈美恵やSPEED、モーニング娘。などが出てくるも、全く心に響いてこなかった。
そんな中、2000年代を迎えてしばらくして、アンダーグラウンドな場所からまたアイドルが活気付いてきていることを知ることとなる。そのきっかけは、1989年に出た佐藤忍さんの「ちょっとだけMY LOVE」という曲が、2006年にMUSEというグループにカバーされていると知ったことだった。1989年当時、テレビではちょくちょく見かけることはあったが、3枚のシングルCDを出しただけで消えていった彼女の曲が、10数年の時を経て甦ったことにとても驚かされた。
その後は、TOMAT 'N PINEやMaison Book Girlなどのグループアイドルを、それほど熱心にではないが聴いてきた。
今現在は、48系や坂道系、ハロプロやももクロ、BABYMETALとかのメジャーなアイドルには全く興味は湧かない(へそまがり・あまのじゃく)が、地下で頑張っているアイドルさんには、好きな曲が多い。
今はサブスクで、地下アイドルの曲もたくさん聴くことができるので、その中から良いと思ったものは、通販などでCDだったりアナログレコードを買っている。
アイドルのありようが大きく変化してしまったが、「アイドルでなければ歌えない曲」というものが好きだというぼくにとっては、そういう曲が胸に突き刺さる限りアイドルファンではい続けるのだと思う。
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