ひょっとするとただ温かいだけかもしれない
この世界には二種類の味がある。濃い味と、薄い味。そして人は薄い味に出会うと大抵、それを優しい味と呼ぶ。
新国立美術館で開催されているイヴ・サンローラン展を見た帰りに立ち寄った蕎麦屋で「すみません、これちょっと薄いわ」という、蕎麦屋ではなかなか珍しいクレームを店員に伝えているおば様がいた。
私は、おば様は濃口の舌で、一般的な蕎麦よりも優しい味付けになっているここの蕎麦がどうやら口に合わなかったらしい、と勝手に解釈して、結構な声のボリュームだったそのおば様の事を心の中でちょっとだけ鼻で笑った。店員さんかわいそうに。
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