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喫煙所

とある喫煙所
男が一人、たばこを吸っている
通りでは昼飯を食べ終えた人達がもといた場所へと帰っていく

と、そこへ男がやって来る
煙草を吸おうとするが、どうやらライターが見当たらない

「すみません、火、貸してもらってもいいですか?」
「お」

男はポケットからライターを取り出して眼鏡の男に差し出す

「ありがとうございます」
「よかったらそれ、どうぞ」
「え?」
「もう一個持ってるんで」
「まじっすか?」
「どうぞどうぞ」
「ありがとうございます」

男は煙草に火を着けるとなんとなしにライターを眺める
スナック純粋
TEL 048-225-5959

「お」

振り向くと隣の男が空を見上げている
視線の先へ目をやると、空の中を男が一人飛んでいる

「おー」

男の飛行を眺める二人
空は雲一つない晴天

「初めて見た」
「私も今通ってるんですよ」
「まじっすか?」
「まだ始めたばっかりですけど」
「あれってどんなもんで取れるんすか?」
「あ、でも、早いと二週間くらいで」
「あ、そんなもんでいけるんすね」
「意外と」

「え、もう飛べるんすか?」
「いや本当まだ始めたばっかで」
「あ」
「すみません」
「いやいやそんな」

男は煙草を吸い終えると挨拶をして去っていった
空を見上げる眼鏡の男
飛んでいた男はもう何処かへ行ってしまっている
ただただ晴天

「あの」

振り向くと女が一人立っている

「火、貸してもらえたりします?」
「あー、全然いいっすよ」

男はポケットからライターを取り出して女に差し出す

「あ、ここ、私働いてるとこです」
「え?」
「純粋」
「あー」
「来てくれたことあるんですか?」
「あ、それあの、さっき人から貰ったやつなんすよ」
「あー」
「すみません」
「いえ」

女はにこっり笑って煙草に火を着けるとライターを男に返す

「お兄さん飛べます?」
「はい?」
「空、飛べます?」
「あ、いや、飛べないす」
「今度うちの店空に移転するんですけど、もしよかったら是非来て下さい」
「あ、じゃあ、その時は」
「絶対ですよ」
「はい」

男は煙草を吸い終えると挨拶をして喫煙所を後にした
途中何気なく振り返ると、女はさっきと変わらずで
ただよく見ると少しだけ中に浮いている

教習所、申込方法、いくら

男は携帯をいじくりながらもといた場所へと帰っていく
昼休みはとっくに終わっているが大して男には関係ない


終わり

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