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空き地

何処かの空き地
柵の前にはスコップを持った男が三人
関係者以外立入禁止

「ガム食べます?」
「大丈夫です」
「食べます?」
「頂いていいですか?」
「どうぞどうぞ」

一枚抜き取って紙を剝いでいく男

「板のやつまだ有るんですね」
「有ります有ります」
「ガム食べないですか?、普段」
「たまぁに」
「でも確かに今もう殆ど粒々ですね」
「あれってまだあるんですか、あの、黄色いやつ」
「黄色いやつ?」
「はい、もしもし」

着信に気付いた男が電話を取って一人輪から外れていく
話を中断して一旦その様子を窺う二人
ぼそぼそぼそぼそ

「先週いました?」
「いました」
「大変でした?」
「いや、そうでも」
「何体くらいあれしたんですか?」
「三十無いくらいですかね」
「あ、大分」
「人が結構いたんですよ」
「あー」

「そう言われると確かに今日少ないですね」
「そうですよね」

辺りを見回す男二人
柵の向こうでよく見る名前の知らない鳥が地面を突っついている

「三十分くらい遅れるみたいです」

電話を終えた男がスマホを弄くりながら戻って来る

「鍵って持ってます?」
「持ってないです」「いや」
「始めちゃっていいって言ってました?」
「なんか一体凄い大きいのがいるみたいで」
「えー」


「でも鍵ないとあれですもんね」
「すね」

ふぉっ

噛んでいたガムを男が柵の中へ勢いよく吹き飛ばす
ぼんやりと柵の中を眺める三人
鳥はちょっとだけジャンプして、新しい場所を突っつき始めた


終わり

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