公園

とある公園
男が二人、ベンチに座って缶ビールを飲んでいる
空はとってもいい陽気

「便座あるじゃないですか」
「便座」
「あれ、輪っかんなってるやつとなってないやつあるじゃないですか」
「あー、はい」
「あれって何が違うんですかね？」
「あー」

「え、どっちですか？」
「うちのは輪っかんなってないです」
「あ、うちもです」

郵便屋さんがポストを開いてごそごそ袋を入れ替えている
昨日とおんなじ郵便屋さん

「強度とかがあれなんですかね」
「あー」
「輪っかになってる方が」
「確かに」

「便座どうかしたんですか？」
「ひび入っちゃったんですよ」
「えー」
「お待たせ致しましたぁ」

と、黒いケースを抱えた男が二人の前にやって来る
昨日とおんなじピザ屋の店員

「コロラドのトリプルダブルです」
「ありがとうございます」
「二千三百円です」
「すみません、大っきいのしかないんですけど」
「大丈夫ですよ」

行き交うお勘定
店員はお釣りを渡し終えると頭を下げて帰って行く
早速ピザを頬張る二人

「カバーとかしてないんですか？」
「カバー？」
「便座」
「あー、してないです」
「でもあれか、してても」
「してます？」
「うちはあの、妻が」
「そうか、結婚してますもんね」

外回りのサラリーマンが何もないところで躓いてバランスを崩す
昨日とおんなじサラリーマン

「あ、忘れてた」

と、何かを思い出した男がピザを片手にポケットに手を突っ込む
取り出した手には昨日とおんなじスクラッチくじが一枚

「お」
「今日こそは」
「いけますかね」

さっそく体制を整えて、昨日とおんなじ十円玉で今度も慎重に削っていく
シャリシャリシャリシャリ
シャリシャリシャリシャリ

「あー」
「駄目でした？」
「駄目でした」

「やっぱりこれじゃないんですかね」
「んー」
「俺も買ってみようかな」
「そうか、買えばいいのか」
「はい」

「買えるんですかね」
「買えるんじゃないですか？」
「て言うか行けるのかな」
「あー、確かに」

二人はぼんやり喋りながら昨日と違うピザを頬張る

「これ美味しいですね」
「ですね」

終わり