河川敷
何処かの河川敷
犬の散歩、ジョギング、自転車
のどかな風景が流れている
と、土手で絵を描いていた男がふと何かに気付いて空を見上げる
中空に黒い点が一つ
見ているとどうやらそれは落ちて来ている様子
男はじっと見つめながら、ゆっくりと黒い絵の具を手に取って蓋を回す
「お上手ですね」
「どれくらいやられてるんですか?」
「え?、あ、すみません」
「あ、ごめんなさい、邪魔しちゃいました」
「いえ」
「お上手ですね」
「ありがとうございます」
背中で答えながら再び空の黒に目を移す男
さっきより少し大きくなっている
男は更にもうちょっとだけ、パレットに黒を絞り足す
そう言えば今裸だったような
急いで振り返る男、女はいなくなっている
辺りを見渡してみてもやっぱりいない
気のせいか
男は意識を再び空に戻してカンバスの続きを始める
黒はさっきより更に大きくなっていて
どうやらこのままだとちょっと黒が足りそうにない
終わり
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?