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クリーニング

とあるクリーニング屋さん
店員が二人、カウンターでお喋りしている
外は小雨がぱらぱらと肌寒い一日

「最近もう直ぐ息上がっちゃって」
「歳よ歳」
「だから余計によ」
「なに、躍ったりしてんの?」
「全然だめ」
「いらっしゃいませぇ」

男が一人やって来る

「これ、お願いします」
「お引き取りですねぇ、少々お待ち下さぁい」

お客様控えを手に奥へと消えていく店員
男はスマホをちらりと見るとカウンターのメニューに何となく目を向ける
すっけらかん加工、すってけてん洗浄、仕上げ云々、丸洗いかんぬん

「お待たせしましたぁ」

店員が品物を担いで戻って来る

「袋は如何なさいますか?」

「これ多分、違います」
「はい?」
「これ多分自分のじゃないです」
「あら」

お客様控えを再度確認する店員
男は言ったもののまだ確信が持てずに引き続き品物をじっと見つめている

「こんなんでしたっけ?」
「お預かりしてたのは此方で間違いないんですけどぉ」
「特に何もつけてないですよね?」
「そうですねぇ」

「電源入れてみます?」
「いいですか?」

背中の辺りを弄ってボタンを一つずつ押していく店員
男はそう言えばと振り返って後ろに並んでる人がいないか確認する
ドドドドドドドドドドドドドドドドドド

「いらっしゃいませぇ」

と、そこへ女が一人やって来る

「これお願いします」
「お引き取りですねぇ、承知お待ち下さぁい」

お客様控えを手に奥へと消えていく店員
女は音の出処をちらりと見やるとスマホを取り出して弄り始める
外を見るとまだ小雨がぱらついていて、男は再び視線を戻す
ドドドドドドドドドドドドドドドドドド
ドドドドドドドドドドドドドドドドドド
ドドドドドドドドドドドドドドドドドド
ドドドドドドドドドドドドドドドドドド


終わり

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