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インドネシアにおける鉱業規制(3)

インドネシアにおける採掘の問題点

インドネシアにおける採掘の歴史のは、金の採掘から始まっており、現在でもインドネシア全土に2,000以上の金の採掘場がると言われています。

2024年現在、インドネシアは金の採掘量は年間10万キログラムで世界8位の地位にあります。

これらの採掘は、小規模に行われている場合も多いですが、全ての金の採掘場の労働者を合計すると、200万人以上に労働の機会と職を提供しているとされています。

問題は、これらの採掘が、政府による許可を受けずに行われている場合がある点です。

また、これらの採掘場では、伝統的な採掘方法を使用しており、人体に有害な水銀アマルガムを使用している点でも問題があります。

採掘の歴史

インドネシアでは、歴史的に金の採掘に関する権利は土地の所有権と一体とされてきました。そのため、金の採掘を希望する住民は、首長から許可を受け、首長に採掘した金の一部を納めることで、金の採掘の権利を得てきました。

これは、インドネシアで森林を開発する際の方法と同様です。

しかし、オランダによる植民地支配における1899年に制定されたDutch East Indies Lawにより、これらの慣習的な採掘権は明確に否定されました。

これにより、土地の所有者の権利は鉱物資源には及ばないこととなり、ヨーロッパ企業は採掘権を確立して操業ができるようになったわけです。

インドネシア独立後に制定された1967年のBasic Mining Lawにおいても、全ての地下埋蔵物は国が管理すると規定されております。

但し、土地の権利者が採掘できるとの慣習的な考え方との対立は現在も続いており、このような小規模採掘業者は、ライセンスを取得していないが慣習的に採掘権が認めれていると信じている場合があります。

贈収賄

もう一つの問題は、贈収賄の問題です。これまで見てきました通り、外国企業が採掘業を行うためには、インドネシア政府や州知事の承認が必要となります。ここで、贈賄が時に要求されるわけです。

インドネシアのスラウェシ島は、ヒトデのような形をした島で、日本の本州と同じくらいの大きさがありますが、ニッケルが豊富に採掘できることで有名です。ニッケルは、電気自動車やハイブリッドカーのバッテリーの主要部品となります。

ここに目を付けた中国企業が多額の資金を投入し、「スラウェシでは石を投げれば中国人に当たる」と言われて久しい状況にあります。

こうした状況に暗雲を投げかけているのが、スラウェシ島と北マルク島での採掘許可証発行に関連した贈収賄疑惑です。

現在裁判中又は調査中の中央政府と地方政府の役人には、エネルギー省のリドワン・ジャマルディン前鉱物・石炭局長や、停職処分を受けたアブドゥル・ガニ・カスバ北マルク州知事も含まれています。ジャマルディン氏に対し検察は懲役5年を求刑しています。

この事件は、地元の大手金属生産者であるハリタ・ニッケルのステビ・トーマス取締役を含む、いくつかの鉱山会社の幹部も巻き込んでいます。

日系企業が大手を振ってこの分野に参入していない理由の一つには、このような潜在的事業リスクが根底にあると考えられます。

(参考)
Indonesian Artisanal and Small-Scale Gold Mining—A Narrative Literature Review(file:///U:/TKH/PG%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%8D%E3%82%B7%E3%82%A2/NOTE/Indonesian_Artisanal_and_Small-Scale_Gold_Mining-A.pdf)
Indonesia nickel concerns stoked by corruption and land disputes(https://asia.nikkei.com/Business/Markets/Commodities/Indonesia-nickel-concerns-stoked-by-corruption-and-land-disputes

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