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先日、ゴジラ -1.0/C(マイナスカラー、つまり白黒版)を観た。

 ゴジラ -1.0、評判はちょくちょく目にしていたが、大変失礼なことに山崎貴監督の過去作品の印象が個人的に今一つだったこともあり、なかなか映画館に足が向かなかった。でも、わざわざモノクロに編集しなおしたものを公開することを知り、1954年版ゴジラが好きでたまらない私の重い腰はようやく上がった。

なので、カラー版は観ていない状態で、白黒版を観たのだが・・・
いやぁ、しまった。もっと早く観ておくべきだった。と真剣に後悔した。本当に素晴らしい映画だった。
面識はないが(当たり前だ)、山崎監督に謝りたい気分になった。 


興味ある人はもう既に観ているだろうから今更とは思うが、以下、多少ネタバレ有り。

まず、開始早々、「あの時代」の東宝ロゴが現れ、いきなり心を捕まれた。ゴジラがちゃんと怖かった。「うわっ、怖!」と映画館でニヤニヤしてしまった。
兵士たちの首根っこを咥えてぶん投げまくる。ジョーズのように背びれを立てながらすごい速さで泳ぎ、満を持して海面から怒りの形相を現し、船をぶん投げた。上陸とともに、人間をブチュブチュ踏み潰しながら蹂躙し、破壊の限りを尽くしていた。放射熱線の威力がすさまじかった。
核実験で巨大化し熱戦を吐くようになる前から、「呉爾羅(ごじら、と読む)」として大戸島で恐れられていた存在。人間は振り回されるしかない理不尽で恐ろしい「カミ(神、ではなく)」のような畏怖すべき存在として描かれていた。
これよこれ、ゴジラはこういう存在でなくては!

その上、ゴジラの神々しいまでの恐ろしさを際立たせる伊福部昭の楽曲の使い方が完璧で、カタルシス増し増しだった。

銀座でゴジラが電車を襲うシーンとか、我が身を捨ててリポートする記者とカメラマンとか、そしてなにより最初に現れたのが大戸島であることとか、1954年版のオマージュが至るところにちりばめられていたのも嬉しかった。

脚本もよかった。怪獣映画であるとともに、戦争映画として、実によくできていた。
「自分の中で戦争が終わっていない」「また生き残ってしまった」
という想いが丁寧に表現されていた。
そして「今度こそ敗けない」と立ち向かう。「今度こそこの国を護る」と。
「自分の戦争を終わらせる」と。
多分、この辺りの、先の大戦で生きて帰還された日本兵の方々が抱えていたもの、が理解できるかどうかで、ストーリーの評価が変わるのかもしれない。
・・・いや、正直、理解しろよ、理解を拒んでんじゃないよ、と思わざるを得ないレビューも目にしたので・・・
山崎監督による小説版も買って読んだ。
この映画が好きな人は、読んだ方がいいと思う。
さらっと流された設定が詳細に書かれたりしていて、大変興味深い。
映画では表情や行為のみで示された登場人物の想いも書かれていた。これに関しては、特に意外な点(えっ、こんなことを考えてたの!?みたいな)はなかった。演技と映像できちんと描かれていた、ということだろう。

これはカラー版も観に行かねばならない。映画館で観なけれなならない。
幸いなことにアカデミー賞にノミネートされたので、しばらく上映は続けてくれるだろう。

・・・・そう言えば、「君たちはどう生きるか」もノミネートされたようで、結構なことだ。


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