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JASTPRO DXの道 第4話「ホームページ刷新から見えたDXの本質」

【初出:月刊JASTPRO 2022年2・3月号(第514号)】

前号までで、DXとは何なのか、IT化との違いを探りながら少しずつ取組み始めた具体例を紹介してきました。今回は、まずホームページ刷新を通じて見えてきたDXの本質を探り、併せてこれから取組んでいきたいことをいくつかご紹介して参りたいと思います。

前号の最後で触れた通り、ホームページはお客様と当協会をつなぐ大変重要なツールです。インターネットの大々的な普及とともに迎えた21世紀も早20年が過ぎ、組織がホームページを広報だけでなく事業そのものにも活用するという流れは完全に定着したと言って良いでしょう。

歴史を紐解いてみますと、当協会ホームページは今をさかのぼること15年、2007年4月にオープンしています。当時の月刊JASTPRO(2007年4月号)には「これまでの印刷物版に加え、電子版での配布を開始し、デュアルメディア通信体制を開始します」と謡っており、この時点からJASTPROはオンライン事業への第一歩を踏み出したといえるでしょう。

例えば、日本輸出入者標準コード(JASTPROコード)の申請受付が紙ベースの申込しかできかったところ、オンライン申請にも対応しました。また、当協会が毎年実施するさまざまな調査・研究の成果である報告書もすべて電子化したうえでホームページに公開しています。これによって、貿易に携わる皆様への知識・情報共有が一段とスムーズになったこともホームページ開設の大きな効果でした。

しかしながら、開設当初からコンテンツを増やし続けた結果、どこに何があるかわからないという状態になってしまい、お客様からお叱りの声をいただくことが増えてきました。こうなると、ちょっとしたページ構成の改善程度ではどうしようもなく、全体を抜本的に見直す必要があるという判断からホームページ刷新プロジェクトが開始されたのでした。

このホームページ刷新プロジェクトには大きな柱が三つありました。

一つ目は、ホームページの作成・運用の内製化実現です。「内製化」は、DX時代の重要なキーワードです。つまり、それまで外部の業者に委託していたページデザインの作成、コンテンツ更新をすべて当協会の中で行うようにしたのです。外部委託の場合、こちらの要望を的確かつタイムリーに伝えることができればリソースの節約になり大変効果的ではありますが、要望の内容や伝えるタイミングが少しでもずれるとコレジャナイページがひと足遅い時期にアップロードされてしまいます。また、ちょっとした変更にもお金がかかりますので、大幅刷新となると相当な費用が掛かってしまうことも内製化に舵を切った要因でした。

内製化の道のりは楽なものではなく、そもそも協会内にホームページ作成経験者がほぼいないという状況だったため、まずはツール探しからのスタートでした。大変に幸運だったのは、15年前と比べてホームページ作成の方法が飛躍的に進化していたという点でしょうか。HTMLを手打ちすることもサーバーを立ててWebサーバーをインストールすることも不要なコンテンツ管理システムが普及し、比較的安価に利用できたおかげで、最初の柱である内製化を実現できました。

二つ目は、モダンで閲覧しやすいデザインの実現です。いくら情報がたくさんあっても、それが探しにくければ宝の持ち腐れ。訪問してくださったお客様が求める情報に迷わずたどり着ける構成を試行錯誤しました。まずは「JASTPROコード」「国連CEFACT」「調査研究」「刊行物・書式販売」といった主要なカテゴリを整理し、マウスオーバーでの詳細メニュー表示を採用したことですっきり見やすくなったのではないかと自負しております。

特にJASTPROコードの申請・更新・お問い合わせ方法については、このデザイン刷新に併せて大きく改良いたしました。旧ホームページでは導線や説明が分かりづらかったため電話でお問合せいただくことになり、結果的にお客様のお手間を取らせておりました。この反省から、各種申請の関する説明や申請フォームへの導線を大きく見直し、新デザインで最も目立つ個所にリンクを設置するとともに、手続きの流れごとのボタンを設置して素早いアクセスを実現いたしました。よくあるご質問(FAQ)も用意し、日々いただくお問合せ内容を順次反映させていくという取組みも開始しております。

三つめは、モバイル時代に対応したページデザインの採用です。パソコンの画面からだけでなく、スマートフォンやタブレット、その他のウェブ閲覧ツールからもアクセスくださったお客様にも見やすくするため、レスポンシブデザインに対応したコンテンツ管理システムを選定しました。これにより、機器を問わずホームページをご利用いただく環境が整うこととなりました。当協会のコンテンツには読み応えのある調査研究資料も多く用意しておりますので、パソコンだけでなくタブレットや大きめの画面を持ったスマートフォンでアクセスし、健康に良いリラックスした姿勢でご覧いただけるのではないかと思っております。

以上のようなポイントを踏まえ、2021年4月に新しいホームページをオープンすることができました。刷新自体はこれで完了となりますが、内製化のメリットを生かして継続的な改善を(かつてのような無計画な拡張に気をつけて)取組んでまいりたいと思います。

さて、このホームページ刷新プロジェクトを振り返ってみますと、DXの要素を強く持った取組みであったことに気づきます。コンテンツ管理システムを活用して内製化が実現し、自分たちで継続的な改善が出来るようになった結果、各担当職員は各自の創意工夫でホームページとはどうあるべきなのか、どうしたら伝えやすい形で情報を載せられるかを意識するようになりました。自分たちで納得いくまで作りこみ、それまでの「ホームページですか? 一応用意してあります」といったレベルではなく、職員自身が自信をもって紹介できるホームページ。良いものが出来上がると、それをさらに良いものにしていこうという機運も高まります。アクセス解析も活用してPDCAサイクルを回し、良いホームページには良い記事を、という好循環が生まれ始めたのです。

この好循環は、ホームページだけでなく事業そのもの、さらには組織を良くしていこうという機運にもつながりました。外部委託では避けられないコスト面の懸念も(オーバーワークには気を付けなくてはいけませんが)自分たちの創意工夫によって、どのようにも改善し続けることができるという環境、これはモチベーションが上がります。結果、このホームページ刷新はお客様への情報提供やオンラインサービスの向上だけでなく、当協会の体質改善にも大きく寄与することとなりました。DXへの取組みは、組織の価値向上だけでなく、そこで働く人達が学び続け、その人材価値を向上することにもつながっていくのかも知れません。

そのように考えると、DXというのは実にわくわくする取組みです。そこで、これから迎える2022年度には何ができるのか、私なりにまとめてみた案をご紹介します。

まず、事務局内部においては、徹底した電子化を推し進めていきます。これまで紙とハンコを使ってきた事務局内の意思決定プロセスを、この1月からクラウドベースのワークフローシステムに移行し始めています。2022年度にはすべての手続きを網羅する予定です。それ以外に、現在紙やファイルで運用している台帳類の管理や書面発行プロセスも、すべて電子化します。

私ども庶務室は当協会のバックオフィス機能を担う部署ではありますが、DXは組織全体で行っていくものという観点から、各部署を巻き込みつつ以下のようなアイデアも考えています。

例えば広報・調査事業においては、事業に役立つ職員向けデータベースやFAQなどのリファレンス、また事業関係者とのコミュニケーションを効率化するツールを構築し、知識共有と業務効率を強化したいところです。コード事業においては、コード管理システムが持つ各種データを取り込んで集計・分析できるツールを用意し、これまで手薄だったデータ活用も始めていくことで、貿易簡易化に役立つ調査・研究に役立つだけでなく、コードの価値向上に向けた取組みを開始できたらと考えております。

そして、こういった取組みにおいては可能な限り共通の、または連携が可能なシステム開発プラットフォームを採用します。ホームページ刷新での成功事例もベースにして、当初から内製を主体として変化に強いシステムとして構築していきたいと思います。

以上、今回はホームページ刷新を通じて私なりに感じたDXの本質と、この流れを2022年度も継続するためのアイデアをまとめてみました。当協会が歩むDXへの道はまだまだ続きます。この連載を通じてその様子を皆様にご紹介してまいりますので、引き続きお楽しみください。


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