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宝塚を好きになった話

今のわたしの趣味は観劇である。
それも主に宝塚歌劇を見ている。

きっかけは些細なことだった。
インド映画RRRが世間の話題となっていた頃、たまたま一度映画館に見に行った。
そして、世間の皆さまとおそらく同じように、画面から発されるとてつもない熱量にやられた。
結局その時は一度しか映画館で見なかったけど、ずっとずっと心のなかでマグマのように熱くうねるようなインドのエネルギーが渦巻く数ヶ月を過ごした頃、ネットを徘徊しているときにそのニュースを見た。
RRRをあの宝塚歌劇がミュージカル化する!?!?
なにそれ見たい!!ナートゥもやるの?ぜひとも見たい!!!!
宝塚のチケットの取り方も知らないドのつく素人のわたしは思った。そうだ、この公演見てみよう!

宝塚歌劇にちょっとでも詳しい方はおわかりだろうが、宝塚のチケット取りというのは甘くない。
というか、非常に難解である。
一般発売に回る枚数なんてたかが知れているし、そもそも発売日にサーバーに繋がらない。
では、公式ファンクラブである宝塚友の会に入ればいいのかと言うと、これも抽選。
しかも全ての公演がこの販売ででてくるわけではない。
カード会社や各種プレイガイド、いろんな企業などの貸切公演が入り、これらは公演の数ヶ月前から受付が開始される。
その情報を公式に取りまとめる機関は存在しない。
応募に関する条件が各々あり、しかも締切までが短いことが多い。
とてもじゃないが、素人が見たいと思って気軽に見に行けるものではなかった。

だが、わたしにはありがたいご縁があった。
とある趣味で親しくなった友人が、宝塚に詳しかったのだ!
わたしは彼女に教えを請うた。
 ねえねえ、宝塚に興味あるんだけど、どうしたらいい?
親切な友人は、宝塚に関して右も左もわからないぴよぴよの雛鳥であるわたしを導いてくれた。
星組公演1789東京千秋楽のライブ配信を一緒に見せてくれ、色々な公演や映像を見せてくれ、様々な知識を植え付け…。
チケットに関しても、かなりの面倒を見てくれた。というか、融通してくれた。
そして、念願の星組公演をRRRを兵庫県にある宝塚大劇場で観劇することがかなったのだ!
そう、初観劇にして、初遠征である。

わたしは南関東に住んでいる。
もともと出不精でけちんぼのわたしはなかなか旅行というものをしない。
電車で日帰りできる距離ならほいほいと出かけるが、宿泊を伴うような距離の移動はなんとなく罪悪感を伴うのである。
しかし、友人は言った。
 ムラ(宝塚のファンは兵庫県宝塚市にある宝塚大劇場をそう呼ぶ)のチケットペアであるんだけど、行く?
そしてわたしは、東京公演まで我慢ができなかったのだ。

宝塚のミュージカルというのは、公演全体が3時間、幕間休憩30分含むというのがオーソドックスなパッケージらしい。
1幕2幕と続き物の大作をやることもあるが、おおよそ1幕がお芝居1時間半、2幕がショーレビュー1時間と二本立てで公演されていることが多い。
今回の星組公演RRRも二本立てだった。
RRRの後にVIOLETOPIAというショーがついていた。
指田珠子先生(宝塚では演出家や振付師など公演に関わるスタッフを先生と呼ぶことがある)の大劇場デビュー作!
さて、指田先生とはどなた?
RRRの演出家、谷貴矢先生はわかる。友人に見せてもらってドはまりした星組公演赤と黒の演出をした人だ。
で、指田先生は何作った人?
そしてわたしは友人と龍の宮物語を見た。衝撃を受けた。
なんてきれいなお話なのだろう、なんと風情のある演出なのだろう。
まあ、宝塚の小劇場(宝塚では宝塚市と東京日比谷の専用劇場以外の劇場をそう呼ぶ)作品の作法を知らなかったわたしはしんみりした気分でお芝居を見終わったとたんに始まった爆イケショーに度肝を抜かれたわけだけれども。
龍の宮物語で指田先生に魂を抜かれたわたしは、指田先生の二作目である冬霞の巴里も見た。
これもたいへんに衝撃的だった。
メイクや雰囲気もそうだがなにより終盤の晩餐会のシーンでの無音の中でぶつかり合う出演者の演技が凄まじかった。
あまりにも好きすぎて一時ひたすらブルーレイをリピートしていた。何周見たのかわからないくらい。
この勢いで海辺のストルーエンセも見たが、これは今ひとつ刺さらなかった。指田先生の癖があまり出ていなかった気がする。
が、まあしかし、指田先生が大変気になる存在であることに違いはない。
VIOLETOPIAも楽しみすぎる!!

じりじりと1月5日の初日を待ちわびていたところに、その報は入ってきた。
VIOLETOPIAに平沢進のパレードが使われている!?!?
10代に平沢進にはまった人間には嘘のようなニュースだった。
もしや、指田先生ってわたしと同じ創作物を食べて生きてきた同世代…?
そんな予感に打ち震えながら、ネタバレばっちこい派のわたしは初日のレポをツイッター(Xとは呼びたくない)で漁りまくった。
 絶対にこんなの好きなやつじゃん!!!!
 なんでわたし初日のチケット持ってないの??
 
狂った。盛大にとち狂った。
毎日ツイッターの感想を見ては友人に訴え続けた。
 ねえねえ、なんでわたしチケットないの?
友人もさぞや迷惑だったことだろう。
そして、提案してくれたのだ。
 ムラのチケットペアであるんだけど、行く?
出不精?交通費がもったいない?夜行バスが不安?
どうでもよかった。
まして、物慣れた友人が一緒に行ってくれるならこれほど心強いことはない。
 行く。わたしムラで宝塚見る。

夜行バスで往復し、間に一泊した関西宝塚観劇旅行編はここでは書かない。
RRRもVIOLETOPIAも素晴らしく、すっかり魅了されたわたしはそれまでのある程度節制した生活ぶりが嘘のようにチケットにお金をじゃぶじゃぶ払うようになり、立派な演目オタクとなった。
東京公演一枚しか自力チケットを持っていなかったのに、友人から融通してもらったチケットと、努力と根性と様々なご縁により掴み取ったチケット(高額転売サイトには一切手を出していない)で、ムラ東宝(日比谷にある東京宝塚劇場のこと)通して悔いなく余すことなくRRRとVIOLETOPIAの世界を堪能した。

その後、全組(宝塚には5つの組があり、分かれて公演している)観劇してみないと何が好きかわからないからと、チケットを取ってはせっせと劇場に通うようになった。

そしてある日、この世で一番素敵なジェンヌ(宝塚の出演者)さんを見つけてしまった。
ご迷惑になってはいけないので、どなたかは秘すが、人の見分けがつかなくて、個人に偏った思い入れができないわたしが大好きになった人!
彼女を応援するためますます観劇に熱が入るのである。

以上が、宝塚にわたしが熱中するまで、である。
こつこつと劇場での観劇経験を積んだり、スカステ(CS放送には宝塚歌劇の専用チャンネルがある)を見て過去作の勉強をしているが、まだまだ拙い初心者である。
どうぞ、諸先輩方は温かく見守ってくださると嬉しいです。


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