見出し画像

こころ (1955) 日活

市川崑監督   
 
夏目漱石の名作ですね。 
 
新潮文庫だけでも 発行部数700万部越え
同文庫の中で 一番売れている作品。

日本で最も読まれた 小説だそうですが
今はどうなのでしょうか。
読まないなんて あまりに勿体ない。
 
私も大昔、高校三年ではじめて読みましたが
そのときは もの凄く感動しました。
しばらく頭が ぼうっとなるくらいでした。
普段も ぼぅっとしてますけどね。

で、お友達と
雑司が谷の漱石さんのお墓に お参りに行きました。
こんなことをしたのは はじめてでした。

この作品は何かの事情で 撮影入りが大幅に遅れていた
『ビルマの竪琴』の 代替え作品として
市川監督が 急きょ撮った映画だそうですが
当時の名だたる映画評論家たちからは 絶賛されたそうです。

先生・ 森雅之
奥さん・新珠三千代
梶・三橋達也


大学生の 日置(安井昌二)が
はじめて 先生(森雅之)と出逢ったのは
鎌倉の海岸だった。
 
このときから日置は 先生に強く惹かれ
東京に戻ってからも たびたび先生の家を訪ねる。

「君は、なんで私のような者のところへ
 たびたび来てくれるのですか。
 私は淋しい人間ですよ」
 
先生は 奥さん(新珠三千代)との 二人きりの暮らしの中で
仕事もせず 毎日家におり
日置以外の他人を 決して寄せつけなかった。

先生と 奥さんにとって
日置はたったひとりの 世間とを繋ぐ人間だった。

奥さんは言う。
「前はあんな人では なかったんです」
 
日置が尋ねる。
「ではいつから先生は 変わられたのですか」

「昔、先生の親友が 突然、亡くなったのです」
奥さんはそのことが  
先生を変えたと 思っているようだった。
 
やがて 日置は大学を卒業。
父親が危篤となった為、故郷に帰るが
そのあいだに先生は 日置に遺書を残して自殺してしまう。
 
後半は 先生の遺書に基づいて 話が過去に遡る。
 
大学時代 
先生は親友の梶(三橋達也)と 同じ家に下宿していた。
 
そこは
未亡人の母親(田村秋子)と お嬢さんとの二人暮らしの家で
先生はこのお嬢さんに 秘かに恋をしていた。
 
一方、仏教を研究している 親友の梶は
陰気で厭世的な性格で 
女には目もくれぬというふうだったが
 
あるとき、その梶が
お嬢さんへの恋心を 先生に打ち明けた。
 
「俺はお嬢さんを 忘れることが出来ない」
 
思いも寄らなかった 梶の告白に
先生は動揺し、悩み、焦り・・・
 
遂に数日後、
自分は病気を装い 梶だけを学校に行かせ
その間に お嬢さんの母親に直訴してしまう。
 
「お嬢さんを、僕の妻にください」
 
もともと 先生に 
いい印象を持っていた母親は快諾し
先生は梶を出し抜いた罪悪感で 
いたたまれずに 外に出た。
 
その後、帰って来た梶は
何も知らぬ母親から 残酷な報告を受ける。
 
「あなたも二人の為に 喜んでやってくださいね」
 
このお嬢さんこそが 今の先生の奥さんだった。
 
その夜、梶は小刀で頸動脈を斬って死んだ。

発見した先生は がたがたと震えながらも
何より先に 自分宛ての遺書を開いた。
自分にとって どんなに辛いことが書いてあるのか。

遺書には 望みの無い行き先への悲観と
先生への感謝の言葉、
そして
「もっと早く死ぬべきであったのに
 何故、今まで生きていたのだろう」

その後、先生はお嬢さんと結婚した。

しかし・・・
「自分は策略で勝っても、人間として負けたのだ」

それから十三年。
先生が自殺したのは 明治天皇崩御により
元号が明治から大正に変わった その日だった。


 
 
        

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?