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フィジカルトレーニングを信用してはいけない理由

信じられないかもしれないが、トレーニングは指導する側が自由にタイトルや目的をつけることができる。

”サッカー選手が絶対やるべきトレーニング”
”身体がブレない体幹を作るためのトレーニング”
”正しい走り方”
”怪我を防ぐためのトレーニング”


これらはトレーニング提供側がつけた「タイトル」である。
タイトルと効果の関係は保証されることなく、フィジカル担当者がその責任を問われることもほぼない。



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タイトルの鵜呑みはリスペクトではない

本来これはフィジカル分野の問題であり、”フィジカルブラックボックス”を生み出さないように全体とパーツの関係を維持しつつ数字だけに依存しない論理立てたプロセスを確立していくことができていないことが原因である。

一方で、指導を依頼する側(監督)や指導をされる側(選手)にも”鵜呑み”による責任は存在する。
相手の言うことを鵜呑みするのはリスペクト行為には含まれない。
フィジカル指導者の言っている内容に納得できない場面(なぜそれが”このチームのサッカー”に役立つのか)では、納得できるまで聞くことこそが「専門家」の扱い方である。

専門分野においては問い詰められても論理的に答えが提示できるのが専門家だからだ。専門家へのWhy質問は全く失礼ではない。

何より、不明確なまま大切な選手たちの努力と時間を消費させるべきではない。
トレーニングを真剣にやればやるほど身体と動きは変わる。変わってしまったものは、簡単には”元のようには”戻らない。時間と労力がかかる。トレーニングの方向を誤れば怪我にだって繋がる。



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簡単に計測できる数値とパフォーマンスは繋がっていないケースは多い

提供する側は”わかりやすい”耳ざわりのよいタイトルを提示。
実践する側はそれを簡単に信じる。
この関係は、思考の短絡化状態である(そもそも思考ではないが)。
何でもかんでも「これをやればこうなる」という単純構図で理解したがる双方の傾向が根本原因である。

だから実際に行うトレーニングと「効果」の関係がブラックボックスになりやすい。
どんなトレーニングであっても一定期間十分な量を行えば身体は変わる。だからフィジカルテストの数値は上がる。
しかし、それがサッカーに役立っている裏付けには全くならない。

サッカーで要求されるフィジカルパフォーマンスの指標は要素が複雑すぎて数値化できないものが多い。
だから簡単に計測できる数値とパフォーマンスは繋がっていないケースは多い。
「強化」には方向が必要だ。必ずサッカーという全体におけるチームの戦術というベクトル上に沿っていなければならない。

そういう意味でフィジカルやストレングスといった抽象的な言葉は非常に危険である。『方向』を持たない言葉だからだ。なんとなく追い込めていれば”満足度”は上がってしまう。
私が戦術動作という方向を内包した言葉を作ったのにはそういう理由もある。

フィジカル担当者は自分のトレーニングでそれを実現できることを提示できなければならない。
指揮官はフィジカル担当者にそれを提示することを要求できなければならない。



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”フィジカル”の曖昧さを見抜け

フィジカル側からの提案の有効性を見抜く視点は色々あると思うが、ポイント例を一つだけ。
力の方向の提示だ。
パフォーマンスは運動であり運動には力の方向が必要だ。
だからパフォーマンスを上げるにはその動きによって発揮する力の方向を明確にしておく必要があるし、その方向に同調する「下部構造」のメカニズムをどれだけ多く保持できるかという視点が要求される。
「重心コントロール」「キレ」「ブレない」「爆発力」「ボディバランス」などの耳ざわりの良い言葉を使っているのに、力の方向がいつまで経っても提示されないケースは、おそらく”繋がっていない”。

「サッカーに必要なこのパフォーマンスには、この方向に力を発揮する必要があって、それにはこういう動き(の組み合わせ)が必要で、そのためには身体のこういう機能が必要です。」

私は2013年ごろからJARTAを通じてトレーナー・フィジカルコーチなどに向けて身体操作という切り口でこの構図の重要性を伝えてきたが、問題の構図から考えてやはり指導者側にも理解してもらわなければこの構図は深刻化するばかりだと考えるようになった。
実際、”タイトル”は簡易化の一途だ。



選手も、チームも、使える時間は限られている。
時間はない。時間がない。
監督でいられる時間、選手でいられる時間、このチームで勝利を目指せる時間は限られている。
限られた時間の中で、”勝利につながる度合いの低い”トレーニングをやっている余裕はないはずだ。何となく”強化”している時間はないはずだ。
勝利に繋がる度合いを上げる、自分達の戦術の実行レベルを上げるためのフィジカルすなわち『戦術動作』を軸にしたトレーニングを選択する理由はここにあると考える。

フィジカルの立場から指導者の方々にお願いしたい。
フィジカル担当者には、必ず常に尋ねてほしい。納得できるまで問うてほしい。
「そのトレーニングでこのチームの戦術を実現できるのか?それはなぜだ?」と。



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サッカー戦術動作アプローチ

こちらから。
https://jarta.jp/soccer-approach/https://jarta.jp/soccer-approach/
チームとして実現すべき戦術を実行するための動作構造を『戦術動作』と名づけ、戦術動作の理解を通して戦術実行レベルの向上につなげるための学習プログラム。
トレーニングの方法はほぼ出てこない。
指導者は、選手を守るために、選手の努力を守るために、”専門家”以上にあなたの戦術における身体の動きの構造に詳しくなる決意をしなければならない。
これはサッカー指導者のための『フィジカル取り扱いマップ』である。


次回はスポーツの社会的重要度を上げる方法





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全てはパフォーマンスアップのために。



中野 崇 
YouTube :Training Lounge|”上手くなる能力”を向上
Instagram:https://www.instagram.com/tak.nakano/
Twitter:@nakanobodysync

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1980年生
戦術動作コーチ/フィジカルコーチ/スポーツトレーナー/理学療法士
JARTA 代表
プロアスリートを中心に多種目のトレーニング指導を担う
イタリアAPFトレーナー協会講師
ブラインドサッカー日本代表戦術動作コーチ|2022-
ブラインドサッカー日本代表フィジカルコーチ|2017-2021
株式会社JARTA international 代表取締役

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