見出し画像

同じ戦術練習をやってるのに差が生じる理由

チーム内に必ずいるであろう、”戦術実行レベルが低い”選手。
チームとして同じ練習をしてきているのに、なぜ彼らは他の選手よりも戦術が十分に実行できないのだろうか。

戦術を理解できていない?
状況把握ができていない?
判断が遅い?
そもそも技術が不足?

決してそれだけではないはずである。

そもそも、戦術を実行するために必要な『動き』ができるかどうかが分からなければ判断のしようがない。
急減速ができない選手に、急減速が必要な戦術は実行できない。

戦術が実行できるか否に影響を与える要因は少なくとも大きく分けて『8つ』ある。
チームとしてその全ての要素と戦術実行レベルの関係を把握していなければ、”敗因分析”はいつまで経っても精度が上がらない。


画像3

そもそも『その動き』ができるのかどうかの判別

8つのうち一つは身体操作である。
頭で分かっていても、身体が動かなければ実行レベルは確実に下がる。
”そのタイミング”で切り返せないし、”その場所”で急減速してボールを受けられない。
頭で分かっていても身体が動かないような場面は誰しも経験があるはずだ。
戦術に必要な動きができないことも、その機能を持ち合わせていないことも、戦術が実行できない十分な理由である。

そういうことを踏まえると、フィジカルの目的は強化よりも戦術実行に必要な『動作の獲得とその強化』に重点を置くべきだと考える。

競技パフォーマンスを向上させるためのトレーニングは、筋肉ではなく常に動作に基点を置く必要がある。
これを押さえないと、筋力は上がったが動作は変わらない(もしくは低下)という結果を招きやすくなる。

チームの活動の大半が、戦術を実行するレベルを上げることに高い優先順位が割かれる以上、フィジカルもそこへの貢献度を上げていかなければならないし、強化もそのベクトル上において”必要”と判断された上で行う必要がある。

「当たりに負けないようにして」や「体幹がブレないようにして」などの抽象的なものではなく、この動きを実行する上でこの方向への強さが必要だ、という展開である。(前者はフィジカルブラックボックスを発生させる)



100mや50mをどれだけ速く走れても、10m以内で爆発的な加速ができなければサッカーの試合では使えないし、急減速ができなければもっと使えない。
もちろん急減速も、急に止まることができればOK、ではなく、「再び急に加速&方向転換&ボールタッチ&コンタクトができる状態で」の減速がサッカーでの条件である。



戦術実行における身体操作については、現状ではほとんど数値化ができない。(今後できる範囲は増えてくるだろうけれど)
例えば急減速動作であれば、何m以内に何km/h減速できたという数値化ができても、「どのような状態で」という部分は不可能である。と同時にサッカーで使えるかどうかの最も重要な指標がその部分でもある。

他の身体操作についてもほぼ同様である。
ゆえに頼るべきは『目』だ。
『目』とは構造を見抜く視点を指す。
構造を見抜く視点は、『見抜こうとしなければ』身につかない。
サッカーにおけるスピードの構造を理解した上で、目の前の”速い選手”を見たときにその理由がわかるようになる必要がある。


戦術動作インスタ/note用2.011

同じ数値なのに”違う”

「サッカーにおけるスピード」が、一般的な、単なるスピードではないことは明確だ。

数値化を高めていく取り組みは重要だが、最も重要なことは、「数値化できている部分とできていない部分」をはっきり把握しておくことである。
往々にしてサッカーでの重要度が高いのは数値化できていないものの方だ。(心拍数など数値化が非常に有効なものもたくさんあることは、もちろん言うまでもない)

指導者も含めて我々がやるべきことは、数値を解釈すること以上に、例えば同じ数値なのに「サッカーに使える減速」と「サッカーでは使えない減速」の存在を把握し使える減速動作の構造を理解して見極めることができる『目』を鍛えることだ。
そういう『目』が身につけば、フィジカル系のトレーニングが”本当に”そこに合致しているかどうかは見抜けるようになる。



データの活用の重要性が当たり前になってきたからこそ、同時に『目』の重要性も上がっている。



チームとして実現すべき戦術を実行するための動作構造を『戦術動作』と名づけ、戦術動作の理解を通して戦術実行レベルの向上につなげるための学習プログラムをスタートしました。
『目』を鍛えるために、本当に有効に活用していただけると思います。
(戦術実行を決定づける8要因は#1にて解説)

指導者は、選手を守るために、選手の努力を守るために、”専門家”以上にあなたの戦術における身体の動きの構造に詳しくなる決意をしなければならない。


次回はフィジカル領域は対象範囲が広すぎるが故に起こる問題について




スクリーンショット 2019-10-12 12.18.53

全てはパフォーマンスアップのために。



中野 崇 
YouTube :Training Lounge|”上手くなる能力”を向上
Instagram:https://www.instagram.com/tak.nakano/
Twitter:https://twitter.com/nakanobodysync

画像4

1980年生
戦術動作コーチ/フィジカルコーチ/スポーツトレーナー/理学療法士
JARTA 代表
プロアスリートを中心に多種目のトレーニング指導を担う
イタリアAPFトレーナー協会講師
ブラインドサッカー日本代表戦術動作コーチ|2022-
ブラインドサッカー日本代表フィジカルコーチ|2017-2021
鈴鹿ポイントゲッターズ 戦術動作コーチ|2022-
鎌倉インターナショナルFC 戦術動作アドバイザー|2022-
株式会社JARTA international 代表取締役

JARTA
Home Page
トレーナーカレッジ|トレーナーのためのハイレベルオンライン学習
ホームGym|自宅で動画を見ながらできるトレーニングプログラム
トレーニングオファー
あなたの状態と目標のギャップを埋めるための身体操作トレーニングを指導します

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?