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13:デンマークの人たちはなぜ自転車に乗るのか?

小林萌:著
安岡美佳:編集
2019年3月発行、2019年12月編集

序論

デンマークは、オランダやドイツと同様、世界的な自転車大国として近年注目されている。コペンハーゲン市内では通勤通学の交通手段として43%が自転車を利用しており(2017年)、2020年まで50%まで引き上げる目標が市によって掲げられている[1]。デンマークの自転車利用は、日本からも注目されており、例えば、坪原[2]、本田ら[3]がBicycle Strategy 2011-2025を元にデンマークの自転車政策を分析している。これら日本のデンマークの自転車利用分析の着眼点は、都市開発や自転車交通を支えるインフラ整備、そして関連政策についてが中心だ。確かにデンマークの自転車に関するインフラ整備は世界でも群を抜いているが、理由はそれだけなのだろうか。デンマークは、風力発電所が多くみられることからもわかるように全土において風が強く、降水頻度も高い。自転車利用を阻害する要素は決して少なくはなく、インフラ整備を整えただけでは自転車文化はここまで広がらないのではないだろうか。

本研究は、デンマークで自転車文化が広まったインフラ以外の要素を考察することを目的とする。

構成は次のようになっている。まず、第1章で背景となるインフラ状況について簡単に述べ、2章でインフラ以外の要素として重要ななぜ自転車を利用するのか、また自転車の利用を阻む要素を分析、考察し、さらに筆者が重要だと考える自転車利用に対するマインドセットについてのべる。3章で考察と結論でまとめとする。

第1章:背景

背景:自転車交通整備施策

デンマークでは、自転車の利用者数を増やすために様々な施策がとられている。主なものとして、The Municipal Plan 2015(*1) 、 CPH 2025 Climate Plan(*2) 、KBH Bicycle Strategy 2011-2025(*3) がある。現在のこれらの政策を元に、コペンハーゲン市(CPH市)は、以下の二つの目標値をあげている。
 CPH市内の車の移動の割合を2025年までに25%まで減らす
 CPH市内で通勤通学に使う自転車の割合2025年までに50%にする
現状として、前者の車移動の割合は31%、後者の自転車通学・通勤の割合は43%となっている[1]。市は、過去10年間を通じ、自転車利用者数は増加傾向にあると報告している。

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