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07:働き方を主体的に描けるデンマークの労働事情

文責:今村真梨香 編集:安岡 美佳
2018年12月3日

はじめに

デンマークは、世界の中でもワークライフバランスが整っている国の一つと言われる。労働時間は短く、家族や子供との時間が十分に取れる、趣味に時間を費やせるなど、余暇も満喫している姿がデンマークの人たちの姿として描かれることが多い。OECDの指標においてもデンマークの働く世代の満足度の高さは際立っている。デンマークにおける充実した労働環境や生活環境はどのような仕組みによって成り立っているか分析していく。

1.デンマークの労働市場 ―法律よりも労働協約―

デンマークの労働市場の特徴としてまず一番に挙げられるのは、政府の介入が少なく、多くの仕事に関わる約束事が労働組合と雇用者組合の労働協約(Collective Agreement)により定められているという点だ。本章では労働法と労働協約について述べる。

1-1. 労働法 労働関連法+EU法
政府による介入は少なければ少ないほど良いとみなされ、労働環境を規定する法律は、最低賃金の取り決めや労働環境の規定に関するものなど基本的な枠組みを定める法律に限られている。日本と比較しても法による規制は最低限に留まっており、例えば最低賃金は法律ではなく労働協議により定められる。同時に、デンマークはEUの加盟国としてEU法やEU指令に準拠する必要があり、EUにより定められている基本規制も存在する。

■差別の禁止(Prohibition against discrimination)
デンマーク法では差別の禁止が規定されている。禁止されている差別は次の条項があげられる。

● 人種、民族、肌の色
● 宗教や信条
● 性別や性別に関わる事項
● 国籍や社会的出自
● 政治的志向
● 年齢
● 障がい

雇用プロセス、雇用期間、解雇などの段階においても差別は禁止されており、雇用者の差別行為が懸念される場合には、平等取扱委員会(The Board of Equal Treatment)に不服申し立てをすることができる。

■平等待遇法(The Danish Act on Equal Treatment)
デンマーク法では、労働環境における男女の差別の禁止を定めており、例えば職場において、ポジションが空いた場合に、特定の性の候補者が優先されることが禁じられている。
これは、妊娠、出産、また類似の事項を理由に差別することが禁止されているということでもある。

■同一労働同一賃金
同一労働同一賃金が、デンマーク法で定められており、デンマークで事業を行う企業は全て準拠しなくてはならない。つまり同じ仕事を施行するものは、性別に関わらず同じ給与を得ることが規定されている。

1-2. 労働協約
先に述べたようにデンマークでは労働組合が大きな力を持っており、基本的に労使間の対立が少なく、お互いがコンセンサスをとることが特徴である。デンマークでは、約80%の労働者(公務員の100%・民間の70%、2010年)が労働組合に加盟しており、労働組合の労働協議に基づいた取り決めを行なっている。労働協議はセクターレベルや企業ごとにも行われるが、基本的なルールについてはデンマークで1番大きな労働組合であるLO (Danish Confederation of Trade Unions,注:2018年にFTFと合併し、FH- Danish Trade Union Confederationとなった) と雇用者組織のDA (Confederation of Danish Employers)間の労働協議によって決められる。その他の労働組合は決定事項に倣うことが慣例となっている。

今まで労働協議によって定められてきたのは、給与、労働時間、研修、子育て休暇、学習休暇、病欠、子供が病気になった際の2日間の休暇などであるが、近年は、ストレス、暴力、ハラスメント等が重要な協議課題となって浮上してきている。以下主要なルールについて例を挙げる。

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