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着物知識その11 「着物の保管」

第11回目は着物の保管について書いていきます。

こちらも、結構多い案件で、保管が難しいという話を聞きます。

また、保管中に胴裏が黄変した!などのトラブルもありますので、今回は少し保管方法や、なぜそうなるのかについて説明していきます。

1 そもそも保管の仕方がわからない。

そもそも保管の仕方がわからないという方が結構多いです。

なにに注意すればいいのかなどもよくわからないという人が多いので説明していきます。

とにかく、着物の一番の敵は極端な乾燥と湿気と酸化です。

まず、乾燥しすぎると、絹糸はもろくなります。畳んで保管してあるので、その時はなんともありませんが、いざ着てお出かけしたら破れた!なんてことは多々あります。

また、今度は極端な湿気になると、カビが繁殖します。こちらも畳んでる分には気が付きませんが、いざ広げてみると、中にはカビが大量発生!なんてことにもなりかねません。

つづいて怖いのが酸化です。

たとえば着物を洗い張りした際に使用するノリなどが酸化すると黄変してシミみたいになりますし、カビが酸化すると黄色くなって、着物の色素を奪います。胴裏や八掛の酸化に関しては、仕立て直せば済む話ですが、着物の生地本体がそうなるともうどうしようもありません。またカビが酸化する前であっても、あまりにカビが多いと、カビとりに出した際にかなりの金額が必要になります。

そんなこんなで、この三つが着物の保管におけるポイントになります。

桐のタンスなどを用意するのは、桐が程よい湿度を保ってくれるのと、カビが生えにくいからです。

しかしながら、桐のタンスであっても、湿気の多いところに置けば、湿気がひどくなりますし、カビも生えてしまいます。

正直、着物を管理するのに楽な方法というのはありません。

以下、保管方法を書きますので参考にしてください。

・湿気が少ない場所を探し、桐のタンスなど、湿気を調整してくれる素材のタンスに保管する。

・着物をそのまま入れず、必ずたとう紙に入れる(裸で入れたり、新聞紙で包んで・・というのは、いらない着物にだけしてください)。

・防虫剤はできるだけカビにも効果があり、無香料のものを入れる。また最近ではシートタイプの湿気とりが売ってあるので、そちらを入れておく(過分に入れる必要はありませんが、天日干しすると何回も使える湿気とりシートがありますのでそちらが使いやすいです)。

・比較的安いというか最悪、どうなってもいいものをタンスの下に入れていき、上のほうに良い着物を入れる(上のほうが通気性がいい場合が多いし、湿気からも守りやすい)。

・染め紋がついたり、変色したり、山がつぶれたりしないようによくティッシュを挟んだりするが、それはNG!できるだけ漂白剤が使用されてない和紙などを用意する(通常の白いティッシュは漂白剤を使用し、白くしてありますので、そういった紙を入れると、その漂白剤で着物の色素が抜けたりします。

・できるだけ1週間に一回は陰干しする。できない場合はタンスから出して、畳み直す(畳み直す場合は畳んでる方向と違う方向に畳みなおして保管してください。そうすることで、生地の一定の場所のヤケや変色がだいぶ防げます)。

・タンスに入れる際にはぎゅうぎゅう詰めにしない。適度な量を入れる(ぎゅうぎゅう詰めにすると、湿気が逃げないので、除湿剤を入れていても効果が薄い)。

・ウールの着物はウールの棚、絹の着物は絹の棚と使い分ける(特に裸でウールと絹を重ねておいておくと、ウールを虫が食う際についでに絹まで食べてしまいます。できるだけ、ウール、綿、絹と分けてください。化繊は絹と同じ場所でもかまいません)。

・できるだけ、定期的にタンスをからにして乾かす(タンスをからにして乾かすことも重要ですし、着物の状態チェックにもなります。ついでに防虫剤なども入れ直す)。

軽く書いてもこのぐらいは注意してほしいです。

なお、プラスチックの衣装ケースに入れて保管はできるだけやめてください。また防虫剤は匂いがきついものは、いざ着るときに陰干ししても匂いが取れなくなります。今は良い防虫剤などがたくさんありますので、ケチらずに良いものを買ってください。


2 着物のヤケや変色

1でも少し触れましたが、着物のヤケや変色についてです。

なぜ胴裏が変色するのか?などもありますので、その要因なども書いていきます。

・衿

だいたいは化粧がついたり、首の油がついたりして、それを触媒にカビが生えて最後は酸化する。変色した場合はシミ抜きにだしても、実際はその部分をわからなく染め直すので、料金もかかる。なお、めちゃくちゃひどい衿よごれは職人でも落とすことはできませんので、もう着物全体を茶色系の色に染め直して目立たなくするか、共衿だけ昔の町娘みたいに違う色にするかしかありません。

・胴裏

着物を仕立てる際に使用しているノリが長い年月によって黄変するケースが多い。また、仕立てた方や、自分で着た際などに手に油が多いと、生地について酸化しやすくなるケースもある。酸化して黄変するとどうしようもないので、新しい胴裏に付け替えるしかない。

・八掛

かなり昔のタイプの八掛はけっこう変色しますが、近年のものはそこまで変色しているものをあまり見かけません。しかし、少なからず変色しているものもあります。変色がひどいものはやっぱりどうしようもないので、新しい八掛を使って仕立て直すしかないです。

染め直してもいいですが、八掛を新品で買うのとあまり変わらない値段になると思います。

・模様(がら)の部分

染める際のおしろいや染色剤、金彩などが酸化したりしますが、これもどうしようもありません。

よほど良いもの以外は買い直したほうが安上がりです。

※2019/11/15追記:一部のものですが、炭と米でできた糊を合わせた染色剤などを使用している場合は、その塗られた部分の生地がごっそり落ちて、もしくはボロボロになるというケースがあるようです。これが今のところ完全な原因はわかりませんが、がらにそって生地がごっそり無くなっているという現象はこの米糊によるなんらかの作用ではないかという話が出てきました。詳細が分かり次第、また追記していきたいと思いますが、とりあえずそういったものは生地を裏打ちしてしまうしかないです。


3 帯の汚れや酸化について

帯も着物同様ですが、帯の場合は特にヨゴレなどは落ちにくいものが多いです。また、稀に帯の色が移ったり、逆に着物の色が帯に移ったりしますが、そういった場合、着物はまだシミ抜きでなんとかなるケースもありますが、帯はまず落ちません。

正確には「落としにくい」のです。

塩瀬系ぐらいは解いてシミ抜きすると比較的落ちますが、基本的に帯のシミヨゴレは落ちないものと考えてください。

よほど高いもの以外は、もうUSEDの帯を探されたほうが安上がりです。



細かく言うと、もっとたくさんの事柄がありますが、だいたいこのぐらいが着物の保管において必要な基礎知識だと思います。

まとめ

・とにかくカビが大敵!湿気を取ることが一番です。でもあまりに乾燥しすぎると逆に絹糸が弱ります。

・ウール類は虫が食べます。絹などを隣接して置いておくと、ウールと間違ってついでに食べてしまいます。必ずウールの着物は別に置いておく。

・定期的に畳み直すだけでもだいぶ違う。

・ヤケや変色はどうにもならないので染め直しか買い替えするしかない。

・ケチらずにたとう紙は1枚ごとに用意しましょう。※補足ですが、たとう紙も定期的に新しいものにするか、乾かしてください。白くて目に見えませんが、カビが発生する場合もあります。


さらに補足ですが、草履などは数年経つと、縫い糸が弱って、手で引っ張った時にはあまりどうということはありませんが、履いて出かけると壊れることが多々あります。

たとえ新品で使ってなかったとしても、保管状態にもよりますが、だいたい5~8年以上経つと壊れることが多々ありますので注意してください。



着物の基礎知識を裏の話も含めて記事にしています。初歩の初歩から裏話まで。飾り内容無しの本音で書いています。よろしくお願いします。