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その10番は稲妻のように… ダヴィド・モーベルグの移籍に寄せて

 noteに投稿を始め、いつか地元の愛するクラブ浦和レッズについて書こうと思いつつはや6か月目。こんな記事が最初になるとは思わなかった。

 しかしながら我らが浦和の10番を背負った選手のシーズン中の移籍はそれなりのショックだった。在籍は1年と3か月あまりと短かったが、十分なインパクトを残してくれた。
 公式の発表によればレンタル移籍だが、先日加入した中島翔哉が10番を背負うことが決まった以上、片道切符であることが濃厚に思われる。彼の思い出をしみじみと振り返りたい。

 浦和サポーターにとっては説明不要だが、モーベルグはチェコの名門スパルタ・プラハから昨年の3月に加入した。
 スウェーデン出身、登録名はダヴィド・モーベルグ。現地の発音だと「モーベリ」が正しいらしく、チャントの歌詞もモーベリだった。チームメイトやスタッフは動画など見る限り「デイヴィッド」「デヴィ」と呼んでいたようで、サポーターには私も含め「モーやん」や「DMK」と呼ぶ人もいた。


 モーやんの残したインパクトは在籍期間に比してとても大きい。出場わずか3分であっさりと点を決めた鮮烈なデビュー戦、わずか3分ほどで両側のゴールにシュート(?)を突き刺してみせたACLのデビュー戦、そして神戸を一撃で沈めてみせた直接フリーキック……。
 戦術など関係なく独力で試合を決めてしまう圧倒的な個が来た、と浦和サポはみなその左脚とドリブルに酔いしれたはずだ。

 ただご存じのとおり、そんなモーやんの輝きは長くは続かなかった。その原因は本人と、クラブの人にしかわかり得ない。今年就任したスコルジャ監督のもと、当初はスタメン起用が続いた彼も、チームの調子が上向くにつれて出番が限られていったし、序列を覆しうる活躍を見せられなかったのは事実。個人的には昨年抜群の関係性を見せた酒井のたびたびの離脱や、馬渡のプレー時間が限られたことも原因のように思われる。

 強度の高さと献身的な守備を求める新指揮官の好みに合わなかったことと、昨年の夏に見せたトップフォームを最後まで取り戻せなかったことが大きい。コンディション不良の原因は新型コロナ感染症によるもの、というのがサポーターの大方の見方だろう。
 素人目だが、彼は監督の戦術に都度自分をアジャストさせるよりは、戦術の中でも自分の強みをいかに発揮するか、というタイプに見える。いい意味でエゴを出せる選手だし、スコルジャ監督もそこに期待していたはずだ。ただそういう選手は、目に見える結果を出せない場合は当然立場が苦しくなるのも早い。

 外国籍枠の関係でメンバー外となったACL決勝の試合後、私は現地でふとモーやんが気になった。満面の笑みでチームメイトと喜びを分かち合い、トロフィーを抱いていたのを見て、ああ彼は大丈夫、これからきっとやってくれると思ったのだ。しかし結果は先述したとおり。最後はリーグ以外でもベンチ外が続き、移籍が決まった。

 冒頭にも書いたとおり、モーやんのゴールは強烈なインパクトを残すものが多かった。Twitterの反応などを見ていても、やはりデビュー戦の一撃やヴィッセル戦のフリーキックを挙げる人が多い。

 個人的に思い入れがあるのは、ACLラウンド16のジョホール戦のフリーキック。(ショルツが「どうせ決めるんだろ?」みたいな感じで見送っていたやつ。)あのときは現地で「決めそうだな…」という予感がしていた。なかなかないことである。(動画 2:06~)

 そしてもうひとつ、京都戦のゴール。フェイントからの振り抜きの速さ。実況が興奮気味に口にした、「まさに左脚、まさにモーベルグ!」も印象的だ。このキレが今年ついに見られなかったのが悲しい。(動画1:27~)

 彼の鮮烈な活躍も、いなくなるまでの早さも稲妻のようだった。ありがとう、ダヴィド・モーベルグ。移籍が決まってしまった以上はアリス・テッサロニキでの活躍を祈るしかない。いずれまた赤いユニフォームに再び袖を通してくれることを少しだけ期待して。

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