白猫のタンゴ

~メンタル・ユリのラストメッセージ~

まえがき
お盆もいよいよ最終日ですね。私事ですが奇しくも私の父の命日に、応援しているガル君の、支援活動クラウドファンディングが終了する偶然となりました。バカがつくほど猫好きだった父。「天国からガル君へ最後の後押しをしてね!! 」
みなさんのご支援、また支援活動を協力してくださった方々のお力があってこそのゴールインですね。最後にこの物語を贈ります。
ガル君、今後の治療もがんばってね。ゴールまで走り抜けたご家族にもエールを送ります。     筆者

不思議な夢だった。

かあさんが逝っちまって俺だけ取り残されたのは、残暑の厳しい頃だった。俺はなーんにもする気になれず、昼間は暑さを避けて布団でただごろ寝して夕方になると空腹にぐいっと一杯。ビールをかっ食らう日々を過ごしていた。コンビニに通って酒のあてだけ食べていた。

「かあさん、なんで先に逝っちまったんだい?」かあさんの飲めなかった酒を仏壇に供えてただただ、毎日が過ぎて行った。居間は散らかり放題。台所は料理ひとつしないので、かあさんが最後に片づけたままの姿だった。それが妙に侘びしくて俺はますます台所へ行くのが嫌だった。

とある晩、縁側のある我が家の戸を開け放して涼みながら、ビールを飲んでしまったので日本酒を持ち出して冷やのまま飲んでいたときだった。庭の隅に白い猫が座り込んでいた。じっとこっちをみているがずいぶん綺麗な猫だった。どこかの飼い猫が紛れ込んだのだろう。

次の朝、蒸し暑いのでしぶしぶ布団から起きて戸を開けると白い猫はまだそこに座っていた。「おい、お前一晩中そこにいたのかい?お腹がすいただろう。よし、コンビニで何か買ってきてやるからな。」俺はTシャツを着替えてコンビニに向かった。

(猫が食べそうなものはなんだろう?スルメかな?)俺は店内をうろうろしたあげく、ちくわとウィンナーを選んだ。と、そこへかにかまも見つけたのでそれもカゴに放り入れあと牛乳も買った。帰り道はできる限りの速足で帰った。なんだか急に猫がいなくなってることが不安になったのだ。

急いで家に戻ってみると、白い猫はまだちゃんとそこにいた。そーっと近寄り触ってみた。逃げるようすはない。おずおずと抱きかかえてうちの中に入れ、買ってきたごちそうを皿にのせてふるまった。猫はお上品にかにかまを食べ牛乳を飲んだ。(心が和んだのはかあさんが逝ってから初めてだ。)

白い猫が自分のやったえさを食べてくれたので、俺は急に有頂天になってペットショップへ出かけることにした。シャワーを浴びてだらしない半ズボンじゃなく、ちゃんとしたズボンに履き替え髪を鏡で確認して街へ繰り出した。俺は大きなペットショップを目指した。

店員さんに声をかけた。「あ、あのぉ、猫!猫がうちに来たんです!必要なものを揃えたいのですが...。」自分でも思いがけず声がうわずっていて恥ずかしい思いをした。店員さんはにっこり笑って「お手伝いしますよ。こちらへどうぞ。」といろいろなものを教えてくれた。

えさ、えさ入れ、トイレ、猫砂、首輪にお名前タグまで注文した。(迷子になっては戻ってこないからな...。)店員が言う。「あと、おもちゃはどうなさいますか?」(おもちゃ?おもちゃまで要るのか。)うーむと唸りながらネズミのおもちゃときれいな羽飾りのついた猫じゃらしを選んだ。

うちに着き、えさ入れと水を用意しトイレもセットした。俺はネズミと猫じゃらしを取り出して試してみた。さすがにどこかの飼い猫、ネズミは見向きもしなかったが猫じゃらしにはよく反応した。ピタッと止まってはさっと身をひるがえす。ピタっと止まってはさっと手を繰り出す。まるでタンゴだ。

俺はこの白い猫が来て以来、食事をきちんと作り風呂にも入り、近所を散歩して通りがかりの人と「おはようございます。」とあいさつを交わしどんどん元気を取り戻していった。かあさんが死んでから、飲んだくれていた日々とはウソのように一変した。

それはかあさんの49日の日のことだった。俺はかあさんの好きだったものを揃えて供えた。ろうそくの火が静かに揺れ、白い猫と隣り合わせて仏壇に向かって座っていた。ふいに耳元にかあさんの声がした。(とうさんは、もうだいじょうぶ。)「おい、しろ!聞こえたか?...しろ、しろ???」

煙に巻かれたように白い猫の姿はこつ然と消えていた。「しろ!しろー?」俺は必死でうちじゅうを探したがどこにもいなかった。愕然とした俺はテーブルに突っ伏して、いつのまにか眠ってしまったようだ。が、朝になっても白い猫の姿はどこにもなかった。

「かあさんが来てくれたのかな...。」俺はつぶやいた。今年最後の蝉が朝からうるさく鳴いていた。

ユリ Twitter : yuritugu_me

応援している難病 FIP(猫伝染性腹膜炎)のガル君のクラウドファンディングが本日をもって終了いたします。
ご支援いただける方は飼い主さまにコンタクトよろしくお願いいたします。
どうかガル君が安心して最後まで治療を受けられるようにあなたの愛を分けてください。一口500円からとなっております。今日でクラウドファンディングは終了となりますので、ご支援いただける方は早急のコンタクトをかさねがさねよろしくお願いしたします。

ガル君(ベンガル種)
飼い主さま GAL FIP 闘病中さん
Twitter : @FipGal Instagram : galcat308
クラウドファンディング期限 8/15(金)23:59 まで

ユリ Twitter : yuritugu_me

※長いあいだ、ご支援・応援・拡散ご協力ありがとうございました。

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