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銀行員が持ちがちなデザイナーに対する誤解

こんにちは、Japan Digital Designの嘉宮です。

私は、2024年4月に地方銀行からJDDに出向し、現在、Experience Design Div.(以下XDD)でトレーニーとしてUX設計やUIデザインに関わらせてもらっています。

この記事では、〈地方銀行員から見たデザイナー〉シリーズの第2弾として、銀行員の私がJDDのデザイナー4名へのインタビューを通じて気づいた、デザイナーに対して抱いていた誤解と、デザイナーと仕事をするうえで心掛けたいと感じたことをお伝えします。

〈地方銀行員から見たデザイナー〉シリーズ第1弾のnote記事もぜひご覧ください。


はじめに

早速ですが、皆さんは「デザイナー」という職業を聞いて、どんなことを思い浮かべますか?なんとなくオシャレ、かっこいい、個性的…?丸メガネが多そう…?(実際、丸メガネは多い)

デザイナーといっても色んなジャンルがありますし、一概にはくくれないとは思いますが、私はどこか自分とは遠くかけ離れた人たち、という印象を持っていました。これはデザイナーに対して、絵を描くのが上手だったり、美的センスが感じられたり、自分が持ち合わせていない感性や感覚的なものでデザインを行っている、そんなイメージが先行していたからでしょうか。

正直なところ、JDDに着任した当時、自分にデザインのこと理解できるのかな、その良し悪しや違いがわかるのかな…と不安に感じていました。とはいえJDDに来て、銀行ではなかなか接することのないデザイナーの方々と働く機会をいただけたからには、限られた時間でひとつでも多くのことを学ばせてもらわないといけません。

そのためには、まずはデザイナー自身がデザインをどのように捉え、どんなことを考えながらデザインと向き合っているのか、デザイナーについて知ることから始めようと思い立ち、ユーザーインタビューの練習も兼ねて、4名のデザイナーに話を聞かせてもらいました。

インタビューを行う上で気を付けたこと

今回はデザイナー1名に対して、私がインタビュアー、私と同じく、地方銀行からの出向者2名がオブザーバーとして入り、オンライン形式でインタビューを実施しました。

設問の内容としては、デザイナーを志したきっかけや、印象に残っている案件など、デザイナーの仕事に関するものから、趣味やこだわりといったプライベートの過ごし方まで、全部で8問を用意しました。ユーザーリサーチを得意としているデザイナーの方にアドバイスを受けながら、インタビューを実施するうえで、以下のことに気を付けました。

  • 過去の経験などを振り返ることで答えやすい質問を用意する

  • まずは具体的な事柄で答えられる質問を投げかけ、その答えを会話の中で抽象化していく。

  • インタビュー序盤は答えやすい質問でアイスブレイク。

実際にインタビューを行ってみて、1対1の形式だと、インタビューを進行しながら受け答えする必要があるので、思っていたより時間配分が難しく感じました。1つの回答に対してどこまで深堀りしていいかの「さじ加減」がわからず、用意した設問を一通り投げかけ、余った時間で追加で掘り下げる形になり、全体通したインタビューの流れが悪くなってしまいました。また、インタビュー後の振り返りのなかで追加で聞きたい事項なども生じたため、オブザーバー参加のメンバーにもインタビューの主旨をしっかり共有し、インタビュー進行中にも聞き漏れがないように確認してもらうなどの対策を行う必要があると思いました。

銀行員目線でのUXリサーチについて書かれたnote記事もあるので、ぜひ参考にしてみてください。

インタビューからわかったこと

インタビューでデザイナーにさまざまな角度から質問を投げかけ、それぞれのデザインに対する考えや想い、普段の業務で感じていることなどを聞かせてもらったなかで、当初、デザイナーに対して持っていたイメージとギャップに感じたことや印象に残ったことを3つご紹介します。

1. 感覚ではなく、ロジカルにデザインしている

デザイナーがデザインを行う際、感覚や感性的なものとロジカルに作りこむ部分の割合を聞いてみたところ、以下の答えをいただきました。

(実際の発言内容)
・4対6かな?感性とか感覚的なものも、結局はこれまでの経験に裏付いていたりすると思うので、裏にはロジカルなものがあるはず。

・5対5。ユーザーインタビューの結果を分析して、自分たちが作りたい製品に向けてもモデル化する仕事は定性ベースにロジカルだと思っている。

・感覚的なものが3割、7割ロジカル。デザインとアートっていう考え方で言うと、デザインの領域ってロジカルで進められる部分が大半なのかな。

・9割がロジカル。アイデア出しのフェーズが1割。アイデアが有効かどうか、ユーザーにとって価値があることなのかはロジカルに考えて持っていくのが大事。

このように割合は違えど、4人とも共通してロジカルに比重を大きく置いていました。アイデア出しの場面や最後の仕上げ部分で品質をもう一段階上げたい場面では、ある程度感覚的なものが求められる一方で、それ以外のデザインの大部分はユーザー調査などの結果やさまざまな理論、バランス、アクセシビリティーに基づいてロジカルに組み立てられているようでした。

また、デザイナーの提案には根拠があるからこそ、「ユーザーから挙げられた声やユーザー調査の結果に基づいて、こういうシステムにしたい、という感じで順を追っておきたい。」という考えも聞かせてもらいました。

銀行員は「デザイン」の意味を狭義に捉えてしまいがちですが、表層の部分だけでなく初期段階からデザイナーにもチームに入ってもらうことが、認識の齟齬を防ぐだけでなく、デザイナーとよい関係を築くうえでも大切だと感じました。

2. モノづくりへの想いが強い

イメージしていた通り、幼少期から絵を描くことやモノづくりが好きだったり、特定のプロダクトに強く影響を受けたり、造形の美しさに魅了されたりと、デザイナー職を志したきっかけを聞かせてもらいました。XDD内にも、普段からカメラや3Dプリンターなどを趣味にしている方も多いこと、「モノをつくっている過程が好き」「写真を撮ることよりカメラそのもの、音を鳴らすことより楽器そのものが好き」という話からも、自分の手で0からモノを作り出すことが好きで、よりよいモノを作り上げたいという熱意を持った方が多いんだと思いました。

こういった熱意は、普段からデザイナーの方々がFigma(コラボレーションインターフェースデザインツール)上で、「これがいい」「やっぱりあれがいい」「いっその事こんなのもいいじゃないか」などとそれぞれが培ってきた知見や経験をフルに出し合って、楽しそうに意見を交わしている姿を見て感じていましたが、改めてバックグランドにあるエピソードを聞けて良かったです。

また、よりよいモノを作るためにも、「デザイナー同士で話していると、デザイナーの意見になってしまって無意識にバイアスがかかってしまう。(銀行員にも)遠慮せずに発言してほしい。」や「(銀行員にも)デザインとか体験設計の領域に対して、興味や関心を持ってもらえるとよりプロジェクトがうまく回るんだろうなと感じている。」などの想いも聞かせてもらいました。

デザイナーの提案に対して、どうしても「素人が的外れなことを言ってしまうのはな…」などと意見することを躊躇ってしまいますが、デザイナーは異なる立場からの意見も求めています。一緒によいものを作りたいという気持ちでいること、デザインや体験設計に興味を持ち、どんな些細なことでも疑問があれば積極的に投げかけ、密にコミュニケーションを取ることでおのずと信頼関係が築けていい結果につながるのかもしれません。

3. 身の回りのものをよく観察している

インタビューでは、プライベートでの趣味や好きなことのほか、自身をデザイナーだと感じるエピソードなども聞かせてもらいました。

例えば、自分自身にカラーパレットを課して、身につける服や持ち物の色を限られた色に統一していたり、引っ越し時に部屋の間取りを3DCADで3Dモデル化し、さらにそれを3Dプリンターで10分の1サイズで出力して家具の配置を考えたり、など非常にデザイナーらしいこだわりも挙がりました。一方で、よく読む本はというと…、「最近は、もっぱら資産形成の本を読んでます。」といったデザイン以外にも目を向けている方もいて人それぞれでした。

ただ、共通して普段から身の回りのものをよく観察している印象を受けました。「身の回りのいろんなものにアートワークが入っているので、意識せずに色使いなどを見てしまう。」「スマートフォンのアプリを色ごとに分けると、アイコンの色味の変化に気付きやすい。」「子どものおもちゃを触っていても、パーティングライン(金型の合わせ目)などを見てどうやって作られているか考えてしまう。」など、身の回りにあるデザインからも、刺激を受けながら常に学び続ける姿勢でいることを知れました。

銀行員がデザイナーと仕事する際に心掛けたいこと

インタビューを終えて、冒頭で触れた「デザイナーは感覚的にデザインしている」といったイメージは誤解であったことがわかりました。もちろん、インタビュー内容が必ずしも実態に即したものであるとは限りませんし、ユーザーインタビューでは回答になんらかのバイアスがかかっている可能性もあります。しかし、実態がどうであれデザイナーは「感覚ではなくロジカルにデザインする」という意識を強く持っていることは確かです。

デザイナーを遠い存在に感じる必要はなく、私たち銀行員もデザインに興味を持ち、分からないことや知らないことはデザイナーに聞くなど積極的にコミュニケーションをとることが、結果的にデザインの理解につながると思いました。

そして、私たち銀行員が気を付けるべきことは、「デザイナーにすべてを丸投げしないこと」だと思います。

私自身も振り返れば、出向元の銀行でとあるランディングページ(LP)の制作をデザイナーの方にお願いした際、「LPを見たユーザーが”ワクワク”するようなページを」などと、なんとも抽象的でほぼ丸投げに近い依頼をしていました。今思えば「ワクワク」をもっと掘り下げ、整理し言語化したうえで伝える必要があったと思います。

また、可能であれば、UIデザインのフェーズだけでなくサービス設計の上流からデザイナーに入ってもらい、検討に至った背景や経緯なども共有できると、早い時期に信頼関係も築け、円滑にプロジェクトを進められるように感じました。

繰り返しになりますが、「デザインのことはわからないから」「そういうセンスないから」ではなく、デザインや体験設計に興味を持ち、UIデザインで解決したい課題や達成したい目的とあわせて、私たち銀行員が持っている知見を共有すること、デザイナーと一緒に考える姿勢でいることが大事なのかもしれません。

デザイナーは常によりよいモノを作りたい!といった熱意で溢れています。

デザイナーと銀行員、よりよいモノを生み出すには、お互いが臆することなく意見を言いあえる関係を築くことが大切だと思いました。

最後までご覧いただきありがとうございました。

過去のJDD出向者の銀行員のnote記事も公開しているので、ぜひ参考にしてみてください。


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