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塗装歴25年の職人に聞いた、仕事の話

「日本ベネックスの製造事業の強みは?」

そう聞かれると、多くの社員が「高品質な塗装」と答えます。その高品質な塗装を支えているのが、製造部 塗装グループのリーダー、松本さん。今回は松本さんに「塗装の仕事」をテーマに話を聞き,塗装の基本的な仕事の話から、職人の育成について、いろいろと語ってもらいました。まずはこんなお話から。

(取材・編集:社長室)

1.人に喜ばれる仕事なんだ

製造部 塗装グループのグループリーダー松本さん

――:
塗装の仕事内容を教えてください。

松本:
色を塗るだけではなく、色を塗る前に行う素地の調整作業から塗装後の膜厚検査、ツヤ検査も行います。塗装の種類は、粉体塗装、溶剤塗装があって、わたしたちが塗装している主な製品は、空調機器、大型映像装置、情報制御盤、半導体関連の製品です。特に社会インフラにまつわる製品は、非常に高い品質を求められます。

――:
素地の調整作業とはどのようなものですか。

松本:
塗装する素材の目荒らし、脱脂作業などの工程です。目荒らしというのは金属の素材表面に細かな傷をつけることで、塗料の密着性を高めます。脱脂は素材に付着している油やゴミを取る作業になります。素地調整が一つひとつ適切にできていなければ、いくら見た目が綺麗な塗装でも、剥がれやひび割れといった塗装不良が起きます。

――:
素地調整の部分を含めて塗装なのですね。そもそも松本さんはなぜ、塗装職人になろうと思ったのですか?

松本:
もともと高校では溶接を勉強していて、ベネックスにも溶接志望で入社したんですが、入社後すぐに塗装に配属されました(笑)。

――:
そんな(笑)。

松本:
溶接に対して強いこだわりがなかったから「塗装でもいいや」って感じで受け入れました。

――:
当時は塗装未経験ですが、配属されてすぐに塗り手として活躍していたんですか。

松本:
入社後、2年間は素地調整を専門に作業をしていました。塗り手になったのは3年目くらいからですね。当時、たまたま塗り手の方が体調を崩してしまい、人が足りなくなったので、急遽「やってくれ」と(笑)。

――:
おお(笑)。

松本:
今はそんなことないけど、20年前は昔ながらの職人気質の人ばかりだったから、きちんと塗り方を教えてもらえず「俺の背中を見ろ」的な感じでした。自分で「この角度で、これくらいの量を塗ると‥」と常に考えながら塗り、身体が覚えるくらい練習しましたね。

――:
そこで塗装のおもしろさに気づいたんですか。

松本:
うーん‥。おもしろさを感じるようになったのは、もっと後の方です。まずは「どうすれば質の高い塗装ができるんだろう」としか考えていなかったですね。「できない」というのが嫌なんですよ。

塗れる製品がだんだん増えてくるにつれて、品質も一段とこだわるようになりました。いまでも忘れないのは、自分が塗った製品の立ち合い検査時に、お客さんから「塗装の質が高いですね~」と喜ばれたことです。「人に喜ばれる仕事なんだ」と実感がわきました。



2.一人前の職人を育てるために


――:
塗装は奥深いですよね。わたしも松本さんとプロジェクトを通じて一緒に仕事をしていく中で、随分と勉強させてもらいました。例えば、白く塗られた製品を松本さんが見て「ここが青っぽくなってる」って言ったときに最初はわかりませんでした。だってパッと見は「白」なんです。

松本:
慣れでしょうね。色の付き方が少しでも変だとすぐにわかります。白はしっかり塗り込まないと青っぽく見えるし、黄色は緑っぽく見える。

プロジェクトで製作した板金製のスツール、テーブルの塗装は松本さんが手掛ける
しっかりと塗り込まれた白
寄りで見ると塗装肌のきめ細やかさが伝わる


――:

一人前の塗装職人になるには、けっこう時間がかかるんですか。

松本:
人によりますね。20年前はひとりの塗り手に、ひとりの素地調整だけをする担当がついて、素地調整をしながら塗り手の技術を見て学ぶスタイルでした。塗る技術を習得するのに時間もかかるし、技術力の個人差が大きかったんです。

――:
いまはどうしているんですか。

松本:
2人1組ではなく、塗り手チームと素地調整チーム2つにわかれて、チームで流動的に動いています。

――:
例えば塗装未経験で入社した場合、まずは素地調整チームに入るんですか。

松本:
そうですね。やっぱり素地調整なくして質の高い塗装はできないので。素地調整を理解していないと、不具合が起きても「なぜこうなるんだろう」と因果関係がわからないわけです。

だから、入社後数ヶ月は素地調整を覚えてもらい、そのあと塗り手の研修もします。塗ることと素地調整、どちらも理解しないと、一人前にはなれません。

――:
寿司職人みたいに、何年も素地調整の仕事をしてようやくスプレーガンを持てるのかと思っていました。

松本:
そんなのもう流行らないよ(笑)。わたしの経験だと、どちらの仕事も体感することが大事だと思っているので、実践を通して習得してもらいます。一通りできるようになったら、素地調整チームになるか、塗り手チームになるか、個人の特性と考えを尊重して決めています。

ただ、わたしの理想では、自分で調整した素材を自分で塗るというように、一貫して一人で全部やれたらいいなと思っています。その方が早く成長すると思うんです。今は仕事の量に対し、人が不足しているから、2つのチームに分かれて、効率よく仕事をこなしていかないといけません。


3.高品質な製品は、頭と身体でつくる

――:
松本さんが塗っている姿を何度か見たことありますが、一切無駄のない動きとリズミカルなテンポでスプレーガンを動かす姿は、見ていて気持ちがいいです。

松本:
育成の難しいところでもあるんですが、身体の使い方って教えてすぐにできるようになるものじゃないんです。

この製品を塗るためには、どういう手首の角度、動かし方で、どれくらいのスピードで塗ればいいのか、これはやり込まないとわかりません。もちろんアドバイスはしますけど、やっぱり自分の身体で覚えないと。

――:
なるほど。

松本:
身体の使い方も大事ですが、塗料や塗る素材の特性もしっかりと理解しないといけません。アクリル、メラミン、ウレタンなど、顔料や樹脂の違いで塗り方や焼き付ける温度も違うわけです。もっというとその日の気温、湿度でツヤの出方も変わってきます。

――:
「頭で理解する部分」と「身体で覚える部分」両方必要なんですね。

松本:
野球で例えると、いくらバッティングの知識や球種を勉強しても、ヒットやホームランが打てるかは別の問題じゃないですか。何度も打席に立ち、実際にピッチャーが投げる球を振ってみることで、打てるようになるのと同じだと思います。これは塗装に限らず、どの工程の作業にも当てはまる気がしますよ。

――:
たしかに。ちなみに当社の塗装は「品質が高い」と聞きます。塗装において、品質が高いとは具体的にどういうことなんですか。

松本:
お客さんの求める品質に120%で応える、ということなのかな。ゴミが付いていない、塗装肌のきめ細やかさ、塗膜が崩れない、とかいろいろと要求はありますけど、すべてに応えることだと思います。

――:
なるほど。

松本:
例えば、こういうことがあるんです。あるお客さんは、Bグレード(等級)の品質を求めていたんですが、当社はAグレードの品質で納品していました。すると、当社以外の外注先が納品した製品が、そのお客さんの検査に通らなくなったみたいです。今までは通っていたんですよ。

――:
つまり、お客さんが求める品質の基準値がグッと上がったという。

松本:
そうです。よく言えば高品質、悪く言うと過剰品質とも言えます。ただ、グレードBを要求されても、予定工数時間内に終わるのであれば、わざわざ品質を妥協する必要はないですよね。

――:
ああ。品質を高めたいから「時間とお金が予定よりもかかります」では、お客さんの要求に応えることにはならないですもんね。予定工数内で、高品質なものをつくる。

松本:
そういうことです。

――:
塗装グループのリーダーとして、今後の展望を教えてください。

松本:
全員が全製品を塗装できるようにしたいです。今は人がたくさんいるわけではないから、属人化している仕事も結構あります。人が増えることで、塗ったことがない製品にも挑戦できその結果、技術力も向上していくと思います。そして、九州圏内で「塗装といえば日本ベネックス」と言われるようにしていきたいですね。

(お読みいただきありがとうございました!)


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