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待望の一冊『心療内科・精神科の薬、やめ方・使い方』(精神神経科医・石川憲彦著)2021年3月6日刊行。予約受付中

誰にとって、待望なのか?

2012年6月にNHK「クローズアップ現代」で放映された「“薬漬け”になりたくない ~向精神薬をのむ子ども~」は、当時放送前から大きな反響を呼んでいた。

「上半身が揺れ続け、止まらなくなった12歳の子ども。足の先がけいれんし、小刻みに震え続ける高校生」衝撃的なシーンも映し出される。「多くの子どもが向精神薬の副作用に苦しんでいる」とする番組に、賛否の声は広がった。

当時、国立精神・神経医療研究センターの調査で、発達障がいの対処療法として向精神薬を小学校低学年にも処方している専門医が7割にのぼっていた。

その番組のメインゲストの席に、石川憲彦さんは座っていた。

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子どもの脳に及ぼす影響は未解明。ここに、反論できる人はいない。大人にとっても、長期服用については未解明なものが多い。

「限りなく限定的に投薬」をめぐって

石川憲彦さんは、限りなく限定的に投薬をする医師ではあったものの、その慎重さが他の医師と比べ際立っているのかもしれない。「薬を使わない医師」として異端であり、誤解も受けることが多い人だ。

いま、新型コロナや子宮頸がんのワクチン問題でも、ネットの世界では「慎重に考える」という人にも「反ワクチン」や「非科学的」という眼差しになりがちだ。そのため、副作用が出たことにも「ないことにしてしまう」風潮がある。

子どもへの投薬は、多くの場合が、教室で多動が目立つ、授業が中断する、周囲の大人たちが支えきれない……。致し方のない選択として薬を使う。

え!? 薬があるのに、どうして使わないの?? 薬を使って勉強ができて、お友だちと過ごすことができるなら、多少の心配があっても服薬すべきではないか、という人もいる。

子どもや若者が向精神薬を服用することは、珍しくないことになっていった。

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8年後、精神科の医療や投薬、なにが変わっただろうか?

賛はともかく、否定的な方と石川さんは議論をしたくて、YouTubeにご自身の診療を全公開中だが、まだ精神科医療に関わる方からの反論や疑問はいただけていない。

そのかわり、長期に向精神薬を服用し悩んでいる、薬を使ったけれどよくならない、合わない、投薬や治療について説明がない、などといった患者さんの困りごとが寄せられる。

クローズアップ現代の放映から8年も経ったけれど、精神科医療をめぐる問題、とくに発達障がいの対処療法の薬については、賛否を問うことも、「慎重さ」について精査する声も、あまり耳にすることがない。

処方を受けている子どもへの差別を助長する、当事者が傷つくといったことで疑念を挟むことも厳しいことになっているようだ。

でも、本当に、当たり前になっていいのだろうか。

もう一度、再考する必要が、とくに子どもへの投薬を考える前に必要だ。また、就労や日常の暮らしには必要不可欠と服用を続けてきたけれど、体調の改善がみられない、悪化しているように思う人も、一読をおすすめします。

この小さな本が、一人でも多くの親御さんや若い世代の手に渡ることを願います。

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石川さんの「はじめに」を転載します。

はじめに

「何年もずっと同じ薬を飲んでいるけれど、大丈夫だろうか?」

「この薬、ほんとうに必要なのかな? なんのために飲んでるか、よくわからないし……」

「薬の副作用がこわい。できればやめたい」

「薬をやめようとしたが、うまくいかない。どうしたらやめられるの?」

「薬をやめたいと医者に相談したけど、一言ダメだといわれてしまった」

ネット上で開いている私の相談室には、こんな相談がよくきます。同じような疑問を抱えている方のために、この本を書きました。

そのため、この本のサブタイトルはふつうの考え方とは逆になっています。一般的には「薬の正しい飲み方・上手なやめ方」となるでしょう。けれど、薬を使う目的をよく考えてみると、この「上手なやめ方・使い方」のほうが自然なのです。

もともと薬というのは、薬をやめたあと、元のように元気に生きるために使うものです。たとえば、かぜで医者に行った場合、ふつうなら「3日間薬を飲んでください。それでもよくならないようなら、また受診してください」というふうに薬を処方します。

つまり、やめることを前提に薬が出ます。

ところが精神科では、ほとんどの場合、薬をいつやめるかという話がないまま処方箋が切られます。そしてずるずると投薬が続き、いつのまにか何年も過ぎてしまうことが少なくありません。

そのため、不必要な薬を飲みつづけている人はけっこう多くいます。いや不必要ですめば、まだいいほうかもしれません。なかには、状態を悪化させるような薬を飲みつづけていることも見受けられます。

すると、やめたほうがいいのではないかと考えたり、自分の判断で服薬を中止する人が多くなるのも当然なのですが……じつは精神科領域の薬の多くは、突然やめると思わぬ状態の悪化を招くことがあります。もちろん、効いている薬を勝手にやめた場合には、それはあたりまえのことです。

しかし、ほんらいなら中止したほうがいい薬でも、そのやめ方をまちがえるとやられなくなることが少なくないのです。時にはやめようとしたために、ほんらいなら不必要なはずの薬を、やめる前より増やして再開せざるをえなくなることも起こります。

そんなわけで、「薬のやめ方」を本書の中心テーマにしました。ただし、薬をやめる・やめないを判断するためにも、失敗しないようにやめていただくためにも、薬に対する最低限の知識をしっかりもつようにしてください。

そのときに、やめるための知識だけでなく、その薬はどんな薬か、いままでなんのために使ってきたのか、という知識がないと失敗します。

そこで本文では、本のサブタイトルとは逆に、薬の種類・副作用・使用上の原則などを、やめ方より先に書きました。

ほんとうなら薬に対する正しい知識は、やめるときではなく、薬を始める前にもつべきものです。

その意味では、すべての患者さんや家族の方にぜひ読んでいただくといいなと思います。

なお、この本はYouTubeジャパンマシニスト社チャンネル「ちえぶくろ相談室」で配信した内容を文章に起こしたものです。必要なエッセンスだけを抜き出したもので、荒削りな内容になっています。それをどう補っていただくかは、巻末の「おわりに」に書いてあるので参考にしてください。

(精神科医・石川憲彦)


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