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地場野菜を給食に!(生産者編)

JAにしたまnote編集部員のSです。

今回の産地リポートのテーマは「地場野菜を給食に!」
JAにしたまの事業エリアである東京都羽村市、福生市、瑞穂町には、地元の子どもたちに地元で採れた安全・安心な野菜を食べて大きくなってほしい!と奮闘する生産者がたくさんいます。

この記事では、実際に学校給食に地場野菜を納品している、がんばる生産者たちにインタビュー。
どのような経緯で取引が始まったのかや、その取り組みなど、栽培現場の生の声を聞きました。


生産者、JA、給食センターの取り組み編はこちら↓




羽村市

羽村市農業後継者クラブ学校給食食材生産部

(納品先:羽村・瑞穂地区学校給食センター、福生市学校給食センター)

左から 宮川さん、田村さん、宮川さん、石田さん、臼井さん


―学校給食への出荷はどのような経緯で始まりましたか?

羽村に直売所ができる前に、当時の羽村市農業後継者クラブの先輩方が、給食センターにきゅうりを出荷したのが一番初めでした。当時クラブの会長の親戚が給食センターに勤めていて、生産者と給食センターの間に入ってもらい「地場産を給食に使ってみよう」と。
そこから当時の先輩方が細く長く出荷を続けてくれて、次第に出荷量が増えていきました。平成8年に給食への出荷を本腰入れてはじめようと、学校給食食材生産部ができました。


―当時はきゅうりの他にどんな野菜を?

きゅうりの他には大根と白菜を出荷していて、その後長ネギや人参の出荷も始まっていきました。当時は今より子供の数も多かったから食数も多くて、人参なんかは出すのが大変で。少しずつ出荷する生産者が増えていきましたね。


―2021年度には、羽村・瑞穂地区学校給食センターでは野菜の全使用量のうち地場産野菜の使用量が45.29%に達したと聞きました。

国が進める第3次食育推進計画(平成28年~令和2年)の中で「学校給食に使用する地場産野菜の使用率30%を目指す」と掲げられていました。この数字は目標にあって、部員のみんなで協力しながら出荷量を少しずつ増やしてきて。特にタマネギの契約栽培が始まるタイミングで、部員が今の5人に増えて、使用量を大幅に伸ばせたんだと思います。


―タマネギの使用量を大きく増やせた要因は何だっだのでしょうか。

JAにしたまがタマネギの定植機と収穫機を整備してくれたのが大きかったです。機械があるおかげで少ない人数でも作付けを増やせたし、効率的に作業できるようになりました。さらにJAが協力してくれて、国内のタマネギ産地に意見を聞いて、学校給食に適した品種や保管方法を研究したことも、安定出荷に繋がっています。


―契約栽培の話が出ましたが、特徴的な取り組みとして、羽村・瑞穂地区学校給食センターとの間で特定の品目について栽培契約を結んでいますよね。

契約栽培は、給食センターと生産者との間で1年単位で規格や納入期間、予定数量、価格の取り決めを交わし、納品を約束する仕組みです。今、羽村地区ではチンゲンサイ、タマネギ、ニンジン、長ネギ、ハクサイ、ダイコンの6品目で契約を結んでいます。
契約を結ぶことで生産者側もプレッシャーがありますが、事前に契約した価格で買い取ってもらえるのはおおきなメリットです。


―長年の取り組みが評価され、令和4年度東京都農業委員会・農業者大会の「企業的農業経営顕彰」の部では、最も栄誉ある東京都知事賞を受章されましたね。おめでとうございます。

ありがとうございます。約30年前に先輩たちが始めた学校給食への取り組みが実を結び、評価してもらえたことはとても嬉しかったです。


―子どもたちへ伝えたいことは。

子どもたちには新鮮なものは美味しいんだってことを知ってもらいたいですね。共働きの家庭が増えて食事に冷凍食品を使うことが増えてきている中で、給食は”新鮮な食材から作った栄養バランスの整った食事”を1日1回食べられる、とても良いものですから。
「今日の給食は美味しいな」って思ってもらえたらすごく嬉しいです!




瑞穂町

瑞穂町農畜産物直売所/みずほベジくらぶ

(納品先:羽村・瑞穂地区学校給食センター、福生市学校給食センター)

左から 佐藤さん、近藤さん、青木さん

―3人が力を入れている品目はなんですか。

3人全員で栽培しているのがコマツナです。ビニールハウスの中で栽培すると施設栽培(青木さん、近藤さん)と、屋外の畑で作る露地栽培(佐藤さん)があります。栽培を始めたばかりの頃はデータがないので、この品種の種をまいたらいつ収穫できるかは手探りの状態でした。でも何年か経験を積んでいくとデータがたまってきて、安定的に供給できるようになりました。今は3人で協力しながら、1年中給食センターに出荷しています。年間を通じて作りやすく、栽培できる期間が長いのがコマツナの強みです。
その他にもキャベツやサツマイモなどを納品しています。


―3人ともコマツナを作られているということですが、複数人で同じ品目を作ることのメリットはありますか?

コマツナは成長が早いので、収穫するタイミングが難しいんです。夏なんかは種をまいてから30日で収穫できてしまうし、暖冬など天候が成長スピードに大きく影響します。学校給食は納品する1カ月以上前に、給食センターに納品を約束しないといけないので、もし自分が出せなくなったときに他の人に助けを求めることもできる。自分も安心だし給食センターにとっても安心感がある。そこがみんなでやるメリットかなと思います。


―収穫のタイミングが難しいとありましたが、他にも難しさはありますか?

ビニールハウスの中で作る施設栽培の場合、何回も同じ場所でコマツナを栽培することになります。これを長く続けていると「連作障害」という症状が出てきて、同じように作っているのになぜか調子が悪い という問題が出てきます。特にコマツナはサイクルが早くて1年で4~5回種をまきますからね。症状が出てしまうと原因を探るのが難しいんです。対策にはかなりの時間がかかります。
露地栽培だと、コマツナはキャベツと同じアブラナ科の野菜なので、虫がよく付きます。防虫ネットをかけたりして、安心して使ってもらえるように気を付けています。


―学校給食への出荷は農業経営の中でどのような位置づけなのでしょうか。

子供の人数も減り長い目で見れば使用量は減っているけど、やっぱり年間の見通しが立てやすいので、重要な取引先です。もちろん、その分作る責任は大きいので、品種を研究してより良いものを出せるように頑張っています。


収穫したてのコマツナ

―「コマツナのここが自慢!」を教えてください。

やはり何といっても鮮度!スーパーで買ったものとは全然違うし、特にコマツナは収穫してから品質低下が早いので、新鮮な状態で給食として提供していることが自慢ですね。給食センターの方からも「良いコマツナだね」と言ってもらえます。


―子どもたちへメッセージをお願いします。

コマツナが苦手な子もいるかもしれませんが、コマツナだけが残されていたらすごく悲しいので(笑)手間をかけて作っているので、ぜひ好き嫌いなく野菜をたくさん食べてほしいと思います。



福生市

村野さん

(納品先:福生市学校給食センター)

―学校給食に出荷を始めた経緯を教えてください。

父に代わってメインで経営を担うようになってから、直売所に出荷を始めたころ、他の生産者が学校給食に野菜を出荷していると聞いて、私も給食に出し始めました。


―農地面積の少ない福生市に生まれ育った村野さんですが、隣町のあきる野市や日の出町に畑を借りながら農地を拡大し、今ではたくさんの野菜を給食に納品していますね。

学校給食に納品するのに力を入れて作っているのがニンジン、タマネギ、ジャガイモ、長ネギの4品目です。畑の写真は西多摩地域特産の「のらぼう菜」。毎年福生市学校給食センターから依頼があり、3月10日頃に納品しています。のらぼう菜は昔この地域の飢饉を救った野菜と言われていて、その話を給食の時間に子供たちに伝えているそうです。


―村野さん自身も「食育」に力を入れていると聞きました。

私自身、市内のサッカークラブでコーチをやっていたので、学校に通っている教え子たちがたくさんいて。給食に出荷を始めようと思ったのも、教え子たちが自分の野菜を給食で食べてくれることが、自分のモチベーションになると思ったからなんです。

―子供達と給食の話ができるわけですね。

そうそう。サッカーの練習の時に子どもたちに「給食ってどう?」って聞くとみんな結構美味しいよって言うんですよね。それで「昨日のジャガイモ、コーチのだよ」っていうと子供達からは「え~!コーチのなんだ!」って反応が返ってきて(笑)。子供達も喜ぶし、食に対する興味が違う角度から増えるじゃないですか。私自身、そういう食育をテーマにしているので。


―食べている子供の顔も見えて、野菜を作っている自分の顔も見られていて、すごくいい関係ですね。村野さんは職場体験も積極的に受け入れているそうですね。

8年くらい前から毎年市内の中学校の職場体験を受け入れていて、種まきや収穫、納品作業を体験してもらいます。一番面白かったのが、職場体験に来た中学生に収穫を手伝ってもらって、給食センターに収穫した野菜を一緒にを納品して、それが次の日給食として出てくる。中学生が自分で収穫した野菜が給食に出てくるってすごく良いと思って。あるいは玉ねぎの種まきなんかもするから、「来シーズン給食に出す玉ねぎは今種をまいているやつだよ」と繋がる話もできます。
地域の保育園児やサッカークラブの教え子たちにも収穫体験をさせたりしているけど、そのゴールにはやっぱり学校給食がありますね。


中学生の職場体験を受け入れ。種まきをしているところです


―ご自身の中で今後課題やテーマはありますか。

力を入れている長ネギで、給食センターが地場産の長ネギを使いたいと希望した量に対して、全量出荷するという目標があるのですが、かなり目標に近付いてきました。もう少し作付けを工夫すれば、今抜けてしまっている月も出荷できそうで。学校給食のおかげでネギの栽培技術も上がりました。


―最後に子どもたち、学校給食関係者への想いを聞かせてください。

子どもたちには、農家さんが野菜を作っている姿とか大変な部分も想像して給食を食べてもらえたら、作り甲斐がありますね。
給食関係者へは、例えばこの野菜作れませんかと提案してくれたら面白いと思います。それをきっかけに栽培に挑戦して、上手くいったら給食で使ってもらう。生産者としては、給食に出荷する野菜は袋詰めをする手間がなく、取り組もうとするハードルは低いので挑戦しやすいですから。
また、栄養士さんに畑を時々見学してもらっていて、それは今後も続けていきたいですね。現場を見れば食材選びにもっとリアリティが出てきますから。



今回は学校給食に生産者へのインタビューをご紹介しました。
今後も産地リポートでは、JAにしたま管内の農産物や生産者にスポットを当て、農産物の知られざる魅力や生産現場のリアルをお伝えしていきます。
お楽しみに!



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(この記事は2023年に取材した内容を編集したものです)