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産地リポート #3 ~地場野菜を給食に!(取り組み編)~

JAにしたまnote編集部員のSです。
みなさんは学校給食にどんな思い出がありますか?
私は同級生と机を寄せ合って楽しく喋りながら食べていた光景を今でもよく覚えています。

食べるのが好きな子にとっても、苦手な子にとっても、
学校給食は育ち盛りの子供たちの成長を支える大切なもの。そこには
成長期の子どもにあった献立を考える人
何千食(※センター方式を想定)という膨大な量の食事を作る人
決められた時間に間に合うように子どもたちへ提供する人
そしてお米、野菜、肉、魚、牛乳などの食材を作る人 など…
毎日数えきれないほどたくさんの人たちが関わっています。そして私たちJAにしたまも。

今回の産地リポートのテーマは「地場野菜を給食に!」
JAにしたまの事業エリアである東京都羽村市、福生市、瑞穂町には、地元の子どもたちに地元で採れた安全・安心な野菜を食べて大きくなってほしい!と奮闘する生産者がたくさんいます。
今回はそんな生産者の栽培現場やJAの取組、給食センターとの連携にスポットを当てていきます。



農林水産省が打ち出す 地場産物の活用推進

地産地消という言葉は多くの方が耳にしたことがあると思います。地産地消は‟地域生産・地域消費”の略語で、地域で生産された農林水産物をできるだけ地域で消費しようという意味です。学校給食には大前提として「安全であること」が求めれるので、地域で顔の知れた生産者が作った農産物は、学校側も安心して使うことができます。

さらに、農林水産省がまとめた『令和4年度食育推進施策』の中にもあるように、学校給食に地場産物を使うことは以下のようなメリットがあります。

  • 子供がより身近に、実感を持って地域の食や食文化等について理解を深め

  • 食料の生産、流通に関わる人々に対する感謝の気持ちを抱くことができ

  • 生産地と消費地との距離が縮減されることにより、その輸送に係る二酸化炭素の排出量も抑制され環境負荷の低減になり

  • 学校教育に対する地域の生産者等の理解が深まることにより、学校と地域との連携・協力関係の構築につながる

子どもの教材にもなり、環境にも優しい。地場産物を給食に使用することはメリットだらけ!そのため多くの自治体で活用が進んでいるのです。


地場産物活用の現場

では実際どのように地場産物が給食に使われているのでしょうか。

子どもに必要な栄養摂取量をもとに、管理栄養士や栄養士が学校給食の献立を立てます。献立から使用食材の量を計算したら、給食センターが食材を各業者に発注します。給食に使われる食材は一般的には仲卸業者から仕入れ、業者が納品するのですが、地場産物を使用する場合は農業者団体や農家個人に発注が来るので、生産者自身が直接給食センターに納品しています。

工場で作るような食品とは違い、野菜は屋外の畑で作るもの。天候の影響を大きく受けますし、栽培期間も数か月かかるため、生産者と給食センター間での調整がとても重要になります。
JAにしたまは両者の間に立ち、農産物の栽培状況を伝えたり、毎月の使用食材の調整や出荷の取りまとめ、清算事務などを担っています。

また、地場産物の活用をすすめるため、生産者、給食センター、JAなどの関係者が定期的に集まって情報交換をしたり、学校給食関係者に栽培ほ場(畑のこと)を見学してもらったりしています。

関係者が集まり情報交換(H29)
給食センター職員のほ場見学(H28)。今年も開催予定


データで見る学校給食

JAにしたまが位置する羽村市、福生市、瑞穂町の3つの自治体には、「羽村・瑞穂地区学校給食センター」と「福生市学校給食センター(※正式名称は福生市防災食育センター)」の2つの給食センターがあります。

  • 羽村・瑞穂地区学校給食センターは、都内で唯一、複数の市町による一部事務組合を設立し複数自治体に給食を提供するセンター。羽村市の小中学校10校、瑞穂町7校の全17校に1日約7,200食を提供。

  • 福生市学校給食センターは、福生市内の小中学校10校、不登校特例分教室、学校適応支援室を含め1日約3,800食を提供。

JA管内では1日に約11,000食の給食が提供されていることになります。


JA管内の2か所の給食センターでの地場産物使用量は、年々増加しています。2020年度は新型コロナウイルスの影響で4~6月の給食がストップしたため減少しましたが、翌2021年度は両センターを合わせて年間で106トンの地場産物が使われ、過去最大の使用量となりました。

地場産物使用量の推移(重量ベース)


使われている野菜は長ねぎ、キャベツ、ニンジン、小松菜、大根、玉ねぎ、白菜などが特に多く、その中でも使用量トップ3はこちら。(2023年4月調べ)

使用量ランキング(重量ベース)


給食に野菜を納品する生産者に聞きました

学校給食に野菜を納品するためには、数十キロ~数百キロの野菜を一度に納品できる生産規模や、給食センターが求める規格に見合う品質の野菜を栽培する能力が求められます。
JAにしたま管内で地元給食向けの野菜を手掛ける生産者は現在9人おり(令和6年4月現在)、センターへ安定的に納品しています。

生産者へのインタビューは別の記事にまとめました。こちらもあわせてご覧ください!


JAにしたまの取り組み

学校給食での地場産物使用を進めるため、JAは次のような事業に取り組みました。

1.玉ねぎの定植機・収穫機の導入
給食での使用量が多い「玉ねぎ」。安定供給および品質の一定化を目的に、給食出荷向け生産者が共同利用できる定植機と収穫機を導入しました。導入までは生産者が主に手作業で行っていましたが、機械化により作業負担を大幅に軽減しました。

玉ねぎ定植機
玉ねぎ収穫機


2.福生市の中学校給食開始に伴う地区の垣根を超えた出荷体制を構築
2017年に新しい福生市学校給食センターが稼働を始め、これまで実施されていなかった中学校の学校給食が開始されました。これに伴い食材の使用量は大幅に増え、地場産物の需要も増加しました。福生市は農地面積が少なく、市内の生産者だけで地場産物の使用量を増やすことには限界があったため、羽村市、瑞穂町の生産者も納品ができるようJAが生産者、センターとの間に立ち、体制を整えました。

3.福生市学校給食センターへの納品支援と保冷庫の導入
新センターでは食材の前日納品が必要になりました。納品時間が14時からとなり、また納品場所が遠くなったことを受け、生産者の負担軽減のため、生産者に代わりJA職員が納品を行っています。
またこれに伴い、農産物の品質保持のため、各集荷拠点に保冷庫を導入。真夏の暑い中でも品質を維持したまま納品できる体制を整えました。

JAの給食専用配送車
責任をもって納品しています


地場産物のさらなる利用拡大に向けて

学校給食での地場産物の活用は、食育の推進のためにも
国は、食育基本法に基づき、食育の推進に関する基本的な目標を「食育推進基本計画」に定めています。第4次食育推進基本計画(2021年度から2025年度)では、
①生涯を通じた心身の健康を支える食育の推進
②持続可能な食を支える食育の推進
③「新たな日常」やデジタル化に対応した食育の推進
の3つの重点事項を掲げ、食育の推進にあたっての目標の中では
「学校給食における地場産物を活用した取り組み等を増やす」
という項目を掲げています、
学校給食関係者や生産者、JAは、この目標達成に向けて、より多くの地場産物を給食に活用できるよう工夫を凝らしています。

このような取り組みはJAにしたま管内に限った話ではなく、この記事を読んでいる読者のみなさんの地域でも、同じように生産者やJAが関わり、学校給食に地場産物を出荷しているかもしれません。

学校に通っているお子さんがいるご家庭では、そんな給食にまつわる取り組みを想像しながら、
ぜひとも食に関する会話を増やしていってほしいなあと思います!


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(この記事は2023年に取材した内容を編集したものです)