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ニューノーマル時代の観光のあり方とは?JANEの提言をご紹介!

JANE事務局です!季節はめぐり、新緑の美しい時期になりました。自宅周辺の意外なお散歩スポットを発見したり、日常の中で初夏を楽しんでいる方も多いと思います。前にいった海外旅行の写真を見返してみたり、いつか行くための国内旅行プランを立てている方もいらっしゃるかもしれませんね。

ところで、JANEは観光に関しても結構積極的に政策提言をしているって、ご存じでしたか?例えば2015年2月には2020年のオリンピック・パラリンピックへ向けた提言、「観光立国2020」を公表しています。

さらに、その翌年の2016年3月には、「観光立国2020」において示した2030年までに実現すべきKPIである、
・年間訪日外国人数 1億人
・訪日外国人年間旅行消費額 30兆円

の達成のための具体的な施策についても提言を出しています。

これらは、主に「インバウンド」、外国人旅行者を増やすことに主眼を置いていました。実際、ここ数年で外国人旅行者の数は(1億人まではいかずとも)3000万人へと急増、京都など人気の観光地では旅館が不足するなど、受け皿が足りなくなる程でした。

ところが、ご存じのとおり世界的なパンデミックで、状況は一変しました。インバウンド需要は9割減、日本人による国内旅行も緊急事態宣言等の移動制限によって難しくなりました。それでも、感染対策と両立した経済活動をと、新経済連盟では「経済活動再開と感染防止対策の両立を図るための『官民一体リバイバルプラン』」を2020年8月に公表するなど、観光産業を含めた今後の経済の在り方をずっと模索してきました。

そこで昨年12月3日、JANEは観光振興に関する提言を政府に提出しました。タイトルは、「観光立国復活へ向けた緊急提言」。宛先は国土交通大臣と観光庁長官です。前回、政策提言の一般的な進め方について記事を書いたので、今回はこの観光に関する提言を素材として、具体的な政策提言の中身についてお話できればと思います!

1.はじめに

観光は日本の経済成長の主要エンジンであり、日本経済再生のカギとなるものとJANEは考えています。平成30年版観光白書によると、観光は、近年の経済成長に対しGDPに占める割合をはるかに上回る規模の貢献(2012年から2016年の名目GDP約40兆円増加のうち4.5%程度)を果たしていることが分かります。

観光産業に従事する人の数は約900万人ともいわれ、地域経済における重要な産業となっています。しかし、世界的なパンデミックの影響で各国の観光業界は大打撃を受けており、日本でも、インバウンド需要が消滅したことで経営危機に陥った旅館がクラウドファンディングで支援を募るなど、大変な状況に陥っています。

そして、何よりもコロナ終息後にお気に入りの観光地が衰退したり、行きたかったあの旅館がなくなっていたとしたら…。旅行が生き甲斐の筆者にとっても、死活的な問題です!(筆者、クラファン支援者でもあります('ω')ノ)

そこでJANEの上記提言では、「①旅行需要の平準化、②感染フリーな受け入れ体制の整備、③インバウンド回復に向けた環境整備」の3つの柱を軸に、アフターコロナを見据え、日本を観光立国として再び復活させるための施策を提案しました。詳細は提言本体を参照いただければと思いますが、ここでは提言に書ききれなかった背景をご説明します。

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2.提言の内容(3本柱)

①旅行需要の平準化

皆さんは、旅行に行く時期はいつでしょうか?サラリーマンの場合、休みの日がだいたい決まっていますよね。また、自営業の方でも、家族旅行の場合にはお子さんの学校のお休みに合わせて計画を立てると思います。結局、ゴールデンウイーク、夏休み、年末年始など、大型連休に多くの旅行者が集中し、旅行者視点では飛行機や旅館の予約が取りづらい、時期的にツアーや宿泊費が高くてコストが嵩む、移動も観光中も常に人が多く疲れてしまう、などの問題がありました。また、旅行業者視点でも、施設のキャパシティには限りがあるため、予約が一定の時期に集中しても対応しきれない一方で閑散期には価格を下げてもお客さんが来ないなど、需要に波があることで施設や人員を無駄なく活用することが難しくなります。

旅行需要の平準化は、実はコロナ禍以前の2010年から「休暇取得の分散化」という形で観光庁において議論されていましたが、反対意見も多く進みませんでした。

ちなみに、星野リゾート代表の星野佳路さんも、旅行需要の平準化について様々な媒体で訴えていらっしゃいます。

特に感染症蔓延後は、密を避けた旅行が求められるようになり、平日に観光地で仕事をする「ワーケーション」を導入する企業もみられるようになりました。コロナ禍をきっかけとして再び平準化へ向けた動きが出てきそうです。

しかし、全ての観光地でワーケーション環境を提供できるわけではありません。人気のリゾート地は離島や僻地にあることが多く、リモートワークやオンライン会議に対応できる程の通信環境が備わっていない観光施設も多いでしょう。また、住民票を置いていない自治体に滞在することが想定されますが、自治体からの案内は多くが郵送。各種証明書や届け出だけでなく、投票用紙や国税調査といった重要な通知も、基本的には住民票を置く自治体と住民票記載の住所地との間での紙(郵便)でのやり取りとなります。さらに、役所への申請は直接対面で行わなければならない場合も多く、平日日中の開庁時間帯に合わせて行かなければなりません。こうした、時間も場所も制約を受ける現状では、ワーケーションで長期間観光地に滞在することをためらう人も多いでしょう。また、お子さんの学校も基本的に通学が必要なので、平日にワーケーションをすると授業を休まざるを得ず、授業に遅れる懸念からご家族でのワーケーションは断念せざるを得ないかもしれません。

こうした事情を踏まえ、提言では、ワーケーションを促進して平日の観光需要を平準化するため、リゾート地の通信環境整備や滞在先における行政サービス享受の柔軟性、小中学校の休日分散化や遠隔授業の推進などを提案しています。

②感染フリーな受け入れ体制の整備

さて、旅行需要の平準化だけではもちろん感染対策として万全ではありません。観光施設が主体的に感染対策をすることも必要です。ところが、パーティション、消毒液、サーモグラフィーなどの感染対策設備購入にはそれなりのお金がかかることも事実…。お客さんに安心して旅行を楽しんでもらいたいけど、ただでさえコロナ禍で厳しい経営状況の旅行業者や飲食店は苦しい状況におかれています。

そこでJANEでは、サーモグラフィー等の導入支援に活用されている観光庁の「宿泊施設基本的ストレスフリー環境整備事業」の対象を拡大することや、一部の自治体で行われている感染対策費用の助成を全国に拡大することなどを提言しています。

その他、ホテルフロントにおける非対面チェックインの徹底、キャッシュレス決済促進のための非接触型決済端末の導入補助、ソーシャルディスタンスを確保した施設への改修・改築、新築における規制緩和、車両移動の増加へ対応した公共駐車場の拡充や高速道路の深夜割引の拡充、自動運転の規制緩和、MaaSの利用促進による地方創生なども提言しています。

また、感染フリーな受け入れ体制整備のための提言として、キャンプやグランピングなど密にならないアクティビティの利用促進のための様々な規制緩和も訴えていますが、こちらは、次回記事(2.自民党 観光立国調査会 観光業に係る法制度のあり方に関するワーキングチームで「観光立国復活へ向けた旅行関連法制の一体改革の要望」をプレゼン(2021年4月12日))の方で詳しく説明したいと思います。

③インバウンド回復に向けた環境整備

さて、ワクチン接種状況次第ではありますが、将来的なインバウンド需要の回復に備えておくことも重要です。なぜなら、日本政策投資銀行による2020年8月の調査(「アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査」)では、コロナ終息後に旅行したい国のランキングで日本はアジアで1位、欧米豪でも2位の高い人気を誇っているのです!

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筆者の外国人の友人も、日本のことが大好き。ご飯が美味しくて自然は豊か、先進的な都市と伝統的な文化が混在した不思議な魅力に溢れていることに加え、治安が良くて旅行者に優しい住民など、ハード面・ソフト面双方が素晴らしいといってリピートする外国人旅行者は少なくありません。

そんな日本が、世界に先駆けて感染対策と両立させた観光産業を復活させることで、日本の観光産業の長期的な発展にとってプラスの効果を生むことが予想されます。

そのためJANEの提言では、将来的なインバウンド回復時の円滑な受け入れと感染拡大防止のための空港の受け入れ体制の構築や、観光施設における医療機関のサポート強化を訴えています。さらに、日本の観光産業自体を外国人にとって魅力あるコンテンツにするため、新たな需要の掘り起こしとして、eスポーツの振興、ヘリコプターを使ったラグジュアリーツアーの促進、アニメの聖地巡礼をするファン向けの各種体験なども提案しているほか、観光施設における多言語環境の整備も要望しています。

3.終わりに

以上提言の3本柱についての簡単な解説でした。「言うは易し、行うは難し」ですが、この柱をもとに様々な機会で政府と意見交換をする中で、経済界からの声が「あと一押し」になって政府も動きやすくなったりすること、JANEのような機動力のある団体がガンガン言っていくことが大事なんだということを改めて実感しています。

次回は、4月12日に「自民党 観光立国調査会 観光業に係る法制度のあり方に関するワーキングチーム」においてプレゼンした、「観光立国復活へ向けた旅行関連法制の一体改革の要望」についてご説明したいと思います。

概略は既にJANEのウェブサイトにアップされていますので、よろしければご覧ください!


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