フードポートレイトまたは食欲魔神の日常
いつものお蕎麦を、近所で買ってきた天ぷらでアップグレード。
私の好みで、天ぷらは少し囓ったあとで汁に浸し、一部は汁に溶かして食べる。
蕎麦を食べ尽くしたあと、天ぷらの旨味と油が溶けた汁をすする瞬間の至福は、思い出すだけでも生唾が滲み出てくる。
これぞまさに、日常のフードポルノ。
撮影5秒(麺もの丼物の場合は3秒)な日常の食べ物スナップからの一枚です。
こういう色気のある食べ物の場合、撮影は人撮りと似ていると思うんですよ。
ポートレートがその人の人となりや魅力を写し込もうとするように、こういう食べ物の撮影も、食べる前に感じた好ましさや暖かみ、そしてできれば匂いなんかも写し込みたい。
さらにそこに食する直前の欲求が加わると、これはもう立派なポルノグラフィーなわけで、はやる気持ちを抑えつつ冷静を装いつつ、「でももう我慢ならん!」 と戦いながらシャッターを切る。
そしてそうやって欲求を溜めに溜めて高め、手にしていた写真機をそそくさと置いて最初の一口をかぶりつく瞬間の至福は、これはもう写真を撮る人間にしか味わえない物であろうなあなどと、こういう写真を撮るたびに思うのです。
ま、そのへん思うだけにしとかないと、ファインダーをのぞきながらついつい無意識に「はあ、いいよ艶っぽいよ、美味しそうだよ」などと呟いてしまい、結果、妻子に生暖かい目で見られてしまうわけではありますが。
●撮影ノート
「Nikon D850」+「AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED」
焦点距離:55mm
FNo:5.6
シャッター速度:1/350
合成ISO:100
合成露出補正:±0EV
こういう食べ物の艶っぽい写真を撮るときは、やっぱりこのレンズ(60mm f/2.8G)がいいなあと思う一枚でした。
このレンズ、前玉が動かないいわゆるIFタイプなので、フォーカシングに従って画角がほぼ変動しないのも楽ちんなんですが、何よりトーンの感じが手持ちの他のどのマクロレンズよりもこういう被写体に向いるんですよね。
おかげで、最近のNikonのレンズに共通の後ボケの安定とかフォーカスの来ている場所からデフォーカス領域への素直な遷移といった部分のソツのなさと相まって、現像なんてほぼしなくとも被写体が魅力そのままに生き生きと写る気がします。
なお、逆に敢えてこのレンズの欠点を言うと、60mmという焦点距離が着席した位置からだとちょっと長めで、後ろにのけぞって撮らないといけないことが多いことでしょうか。
そのへんは、Z8購入と同時に今お出かけ時のスナップに使っているZ6が家でのスナップ用に降りてきたら、ZのMC 50/2.8を使えるので楽になるのではと期待しています。
あちらはこの60/2.8Gと違ってややフォーカスブリージングが気になるものの、軽く使った感じ描写は似ているようなので。
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