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30年日本史00028【旧石器】自供

 藤村がやっと絞り出した言葉は、
「皆々ではない」
というものでした。山田キャップが
「みんな埋めたわけではないということですか」
と聞き返すと、藤村はうなずきました。藤村のこの第一声もまた嘘であることが、後に発覚するのですが。
「埋めたのは別のところで掘り出した石器ですか?」
「いつどこから持ってきたものを埋めたのですか?」
 山田キャップが次々と問いかけますが、藤村はほとんど黙ったままでたまにうなずく程度でした。「なぜそんなことをしたんですか?」と何度も尋ねると藤村はやっと答えました。
「小鹿坂、長尾根(ながおね:埼玉県秩父市)で50万年前の生活遺構と旧石器が出た。上高森は成果があがっていなかった。自分で何とかしなくちゃと思った。魔がさした」
 これも嘘です。小鹿坂遺跡も長尾根遺跡も上高森遺跡も、全て遺跡自体が捏造で、本物は全く出土しなかったことが後の調査で分かっています。
 しばらくして藤村は「全てお話しします」と言い、質問に答えるようになりましたが、上高森遺跡について
「土こうとか柱穴とかはまともです」「去年までのは全てまともに出したものです」
などと発言しています。
「総進不動坂は?」と尋ねると「やってません」と即答されたのですが、山田キャップが総進不動坂でも捏造を目撃していた旨を伝えると、「記憶にない」ととぼけ始め、さらに追及すると「一部埋めました。全部じゃない。今年の分だけです」と自供し始めました。しかし、総進不動坂も遺跡自体が捏造だったことが現在分かっており、まだ嘘をついています。
 藤村はさらに、
「病気を持ってるんです。狭心症に糖尿病がかなり進んでいて、しょっちゅう苦しくなる。あんまり長くないかもしれない。去年8月に軽い脳梗塞になったようで、入院もして、鬱のような状態になった」
などと病気をアピールし始めました。病気に追い詰められ、精神を病んだせいでやってしまったと言いたいようです。
 藤村の手口はこうです。発掘をしていると、縄文時代の地層から旧石器が出土することが頻繁にあり、それは大した発見とみなされません。そうした比較的新しい旧石器を保管しておき、旧石器の古い地層に埋め込み、それを自分で発見して大発見であるかのように演出するわけです。
 20時45分。鎌田理事長がホテルに到着しました。藤村が「鎌田さんに会いてえ」と言ったために呼ばれたのでした。ここからは鎌田理事長を交えて追及が始まります。

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