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30年日本史00368【平安後期】中世の始まり

 ここで「古代」「中世」という歴史区分についてお話ししておきましょう。
 西洋歴史学では、多くの場合「古代→中世→近代→現代」という歴史区分を用います。中世とは、封建制と農奴制による土地支配がなされていた時代を指す呼び名です。
 さて、日本の歴史学者たちは、こうした西洋の歴史区分を日本史にも適用しようと考えました。別の国なんだから、何も共通の考え方を適用しなくても……と思われるかもしれませんが、政治体制が近代化していった経緯について、万国に共通する普遍的な真理を見出そうとする態度は学問上重要だと思います。
 西洋における封建制と農奴制とは、日本では何に当たるのか。
 封建制とは物の本によると、
「君主の下にいる諸侯たちが土地を領有して、その土地の人民を統治する制度。諸侯たちは、領有統治権の代わりに君主に対して貢納や軍事奉仕などといった臣従が義務づけられ、領有統治権や臣従義務は一般に世襲される」
とあります。一方、農奴制とは
「農民が強く領主に隷属される制度」
とあります。
 日本における封建制とは「武士たちが御恩と奉公によって武家の棟梁に臣従すること」に当たり、農奴制とは「農民たちが荘園領主に隷属すること」に当たるといってよいでしょう。
 つまり、
・荘園が増えたこと
・武家政権が樹立したこと
の2点をもって中世の始まりと考えればよいのです。要するに鎌倉時代の始まりから江戸時代の終わりまでを指すということになりそうです。
 というわけで、中世の始まりは鎌倉幕府成立……と言いたいところですが、その後
「初めての武家政権は、鎌倉幕府じゃなくて平氏政権じゃないの?」
という意見が出て、仁安2(1167)年の平氏政権成立を中世の始まりとみなす考え方が出てきました。
 さらに近年では徐々に開始時期がさかのぼり、現在は
・寛治元(1087)年の院政開始
・治暦4(1068)年の後三条天皇即位
などとする見解が有力です。本稿では山川出版社の日本史教科書の区分に従って、治暦4(1068)年の後三条天皇即位としました。確かに後三条天皇の即位をもって貴族の時代は終わり、武士が活躍できる土壌が出来上がったといえるでしょうね。
 最近の説では、古代と中世の境目は平安時代の真っ只中になってしまうわけで、非常に分かりづらいですね。

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