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30年日本史(毎日投稿)

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2022年元日から始めた連載。「人間って面白いな」と思えるような、登場人物の個性に着目した日本史講座を目指しています。受験対策になるかどうかは微妙ですが、旅行がより楽しくなるはず…
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2022年3月の記事一覧

30年日本史00090【神代】天孫降臨 サルタビコの先導

30年日本史00090【神代】天孫降臨 サルタビコの先導

 さて、オオクニヌシが降伏したことにより、ようやく葦原中国をアマテラス方が治めることになりました。アマテラスとタカミムスビは、アメノオシホミミに対して
「葦原中国を平定したとの報告があった。今から出かけて統治せよ」
と命令しました。ところがアメノオシホミミは、
「準備をしている間に子が産まれました。ニニギ(邇々芸)という名前です。この子を葦原中国に遣わせましょう」
と答えます。これを受け、アマテラ

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30年日本史00089【神代】諏訪大社と縄文文化

30年日本史00089【神代】諏訪大社と縄文文化

 さて、タケミカヅチに敗れたタケミナカタは、諏訪に逃亡するわけですが、ここで古事記には載っていない諏訪地方に伝わる伝説を紹介します。
 タケミナカタがやって来るまで、諏訪地方はモレヤという神が治めていました。モレヤはタケミナカタの侵入を阻もうとして戦いになりますが、長い戦いの末、モレヤが敗北します。タケミナカタはモレヤを滅ぼそうとはせず、家来として召し抱えることにしました。
 タケミナカタは諏訪大

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30年日本史00088【神代】国譲りの意味

30年日本史00088【神代】国譲りの意味

 さて、アマテラスがオオクニヌシから葦原中国を譲られる「国譲り」の物語を紹介してきました。現在約8万8千社ある神社も、「譲った側」と「譲られた側」に分かれています。
○アマテラスら「天つ神」を祀る「伊勢系」
 アマテラスを祀る伊勢神宮、タケミカヅチを祀る鹿島神宮など。
○オオクニヌシら「国つ神」を祀る「出雲系」
 オオクニヌシを祀る出雲大社、タケミナカタを祀る諏訪大社など。
 タケミナカタは諏訪に

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30年日本史00087【神代】国譲り

30年日本史00087【神代】国譲り

 タケミカヅチとタケミナカタの力比べが始まります。2人の名前が似ているせいで混乱されるかもしれませんので、復習しておきますよ。タケミカヅチというのが出雲を譲り受けるためにアマテラスの送り込んだ刺客。一方、タケミナカタというのがオオクニヌシの息子で出雲を守ろうとする側です。
 まず、タケミナカタがタケミカヅチの手を取りました。するとその手がたちまち氷の剣となってタケミナカタを襲います。これに驚いたタ

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30年日本史00086【神代】タケミカヅチの派遣

30年日本史00086【神代】タケミカヅチの派遣

 オモイカネの提案がことごとく失敗し、葦原中国は未だアマテラスのものになっていません。アマテラス側の次なる手は一体何でしょうか。
 オモイカネは言います。「次はタケミカヅチ(建御雷)を派遣するのが良いでしょう」
 このタケミカヅチこそが、失敗続きだった葦原中国攻略に終止符を打つ男です。
 タケミカヅチの名をご記憶でしょうか。イザナギがヒノカグツチの首を斬ったとき、飛び散った血の中から産まれた神の一

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30年日本史00085【神代】アメノワカヒコの死

30年日本史00085【神代】アメノワカヒコの死

 頼みの使者、アメノワカヒコが8年経っても帰って来ません。この状況を受けて、タカミムスビとアマテラスはまた神々に相談します。
 オモイカネは、「ナキメ(鳴女)を遣わしてみましょう」と提案します。
 もうそろそろオモイカネの提案は頼りにならない……と気づくべきだと思うのですが、他に案がなかったのでしょう。
 ナキメとはキジのことです。タカミムスビとアマテラスは、ナキメに対して詔を覚えさせ、地上に遣わ

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30年日本史00084【神代】アメノホヒとアメノワカヒコ

30年日本史00084【神代】アメノホヒとアメノワカヒコ

 せっかくオオクニヌシが完成させた葦原中国を、アマテラスが「ここは我が子が治めるべき国だ」と主張し始めました。我が子とはアマテラスの長男・アメノオシホミミのことです。
 アメノオシホミミの名を覚えている読者は少ないでしょう。アマテラスとスサノオが誓約をして、互いに子を産み合って競ったというエピソードがありました。あのとき、スサノオがアマテラスの勾玉を手にとって、噛み砕いて産み出したのがアメノオシホ

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30年日本史00083【神代】オオモノヌシ登場

30年日本史00083【神代】オオモノヌシ登場

 さて、オオクニヌシの国作りを手伝ったスクナビコナは、道半ばで常世国(とこよのくに)に去ってしまいました。まだ登場したばかりでキャラも立っていないのに、すぐにいなくなってしまうんですね。
 相棒を失ったオオクニヌシは大いに悲しみ、
「自分一人でどうやって国作りを進めれば良いのだろう。誰か一緒にやってくれる神はいないだろうか」
と呟きます。
 まさにそのとき、海の向こうからやってくる神がいました。

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30年日本史00082【神代】オオクニヌシの国作り

30年日本史00082【神代】オオクニヌシの国作り

 オオアナムジには「オオクニヌシ」という新たな名前が与えられました。ここからはオオクニヌシと呼ぶことにしましょう。
 さて、オオクニヌシには既にヤガミヒメという妻がいましたよね。因幡の素兎を助けた結果、娶ることができたあのヤガミヒメです。そもそも兄たちに命を狙われた原因は、ヤガミヒメとの結婚をめぐる騒動でした。そのヤガミヒメがいるのに、オオクニヌシは新たにスセリビメを正妻として連れ帰ったわけです。

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30年日本史00081【神代】オオクニヌシ誕生

30年日本史00081【神代】オオクニヌシ誕生

 スサノオの試練を次々とクリアしたオオアナムジでしたが、続いてスサノオはオオアナムジに対し、自分の頭の虱(しらみ)をとるよう命じました。ところが、スサノオの頭を見てみると、そこにいるのは虱ではなくムカデだったのです。これまたスサノオの嫌がらせと思われますが、スサノオ自身も嫌じゃないのかなあと不思議に感じてしまいます。
 ここでまたスセリビメが助け舟を出してくれました。オオアナムジに椋の実を渡し、

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30年日本史00080【神代】スサノオの試練

30年日本史00080【神代】スサノオの試練

 さて、オオアナムジはスサノオのいる根之堅州国にやって来ました。
 スサノオが産まれたとき、「亡き母のいる根之堅州国に行きたい」と言って泣き喚いたことは既に紹介しましたね。してみれば、根之堅州国とはイザナミのいる黄泉の国と同一の概念なのでしょうか。しかし黄泉の国との境目は、イザナギが既に千引の岩によって閉ざしてしまったはずです。どうもよく分かりませんが、これ以上追及しても仕方ないので、話を先に進め

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30年日本史00079【神代】八十神の謀略

30年日本史00079【神代】八十神の謀略

 さて、主人公がいきなり死んでしまったわけですが、オオクニヌシ(オオアナムジ)の物語はまだまだ終わりません。オオアナムジが死んだことを知った母・サシクニワカヒメはひどく悲しみ、高天原に上ってカムムスビに我が子を助けてほしいと願いました。
 さて、カムムスビが久しぶりに登場しました。どこで登場したか覚えている人は少ないでしょうから、古事記の冒頭を再掲しましょう。
「天地が初めて現れたとき、高天原に現

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30年日本史00078【神代】稲羽の素兎

30年日本史00078【神代】稲羽の素兎

 オオアナムジが兎に事情を尋ねると、兎は話し始めました。
 淤岐島(おきのしま)に住むその兎は本州に渡ろうとしていたのですが、良い方法がありません。そこで、海の和邇(わに)たちを騙して並ばせ、その上を渡ろうと考えました。和邇というのは、現在のサメに当たる生き物と考えられています。
 兎は
「僕ら兎と、君たち和邇のどちらが多いか競ってみよう。一族を集めて並んでくれないか」
と声をかけます。これに騙さ

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30年日本史00077【神代】オオアナムジ登場

30年日本史00077【神代】オオアナムジ登場

 さて、スサノオはクシナダヒメとともに須賀の地に住み始めました。2人は子を産み、その子孫がオオクニヌシ(大国主)です。次の主人公になります。
 スサノオとオオクニヌシの間にいる歴代の神たちは、名前が紹介されているだけで何らの事績がありません。一応書き出しておきましょうか。
 スサノオとクシナダヒメの間の子がヤシマジヌミ(八島士奴美)。
 ヤシマジヌミはコノハナチルヒメ(木花知流比売)を娶ってフワノ

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