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Eiríksmál ー エイリーク(血斧王)の歌

古アイスランド語で記されたノルウェー王朝史 『ファグルスキンナ』 に全文が収録されているエイリークの歌 を訳してみました。

原文も参考にしていますが、まだまだ勉強中の為、英訳から日本語に訳したものになります。

エイリーク (885頃~954)は、ハラルド美髪王の後継者で、ホーコン善王 の異母兄にあたります。
彼は勇敢な戦士でしたが、自分が父王から与えられた跡継ぎとしての特権に難癖をつけて従わない兄弟を襲撃して殺し、その土地を掠奪したので、〈血斧王〉 と綽名され、恐れられていました。

その後、父ハラルド王が死去し、エイリークがノルウェーを支配するようになって1年が経った頃、異母弟のホーコンがイングランド(養父がアゼルスタン王)から帰国したのです。
圧倒的なカリスマ性を持つホーコンにノルウェーを追放されたエイリークは、アゼルスタン王の保護もあり、イングランドに移住しますが、次のイングランド王エドマンドとは相容れず、戦いの日々を送った末に戦死します。

エイリークの歌 は、後年、ホーコン善王のスカルド詩人エイヴィンドが ホーコンの歌 を書く際に大いに参考にしたと言われ、評価の高い作品です。

彼の妻グンヒルドが夫の功績を讃えるために書かせたと言われていますが、残念ながら作者が不明です。

詩の内容は、エイリークがヴァルハラ(戦死者の館)に迎え入れられる様子を描いたもの。
意訳になった部分も多いですが、雰囲気が伝われば幸いです。

Hvat er þat drauma? (kvað Óðinn)
ek hugðumk fyr dag lítlu
Valhöll ryðja
fyr vegnu fólki;
vakta ek einherja,
bað ek upp rísa
bekki at strá,
bjorker at leyðra,
valkyrjur vín bera,
sem vísi komi;
erumk or heimi
haulda vánir
göfugra nökkurra,
svá er mér glatt hjarta.

Hvat þrymr þar, Bragi!
sem þúsund bifisk
eða mengi til mikit?
”Braka öll bekkþili
sem muni Baldr koma
aptr í Óðins sali".

Heimsku mæla (kvað Óðinn)
skalt þú, hinn horski Bragi!
þó at þú vel hvat vitir.

Fyr Eiríki glymr,
er hér mun inn koma
jöfurr í Óðins sali.

Sigmundr ok Sinfjötli!
rísit snarliga,
ok gangit ígegn grami!
inn þú bjóð,
ef Eiríkr sé,
hans er mér nú ván vituð.

Hví er þér Eiríks ván, (kvað Sigmundr)
heldr en annarra konunga?
Því at mörgu landi (sagði Óðinn)
hann hefr mæki roðit,
ok blóðugt sverð borit.

Hví namt þú hann sigri þá,
er þér þótti hann snjallr vera?
Þvíat óvíst er at vita (sagði Óðinn):
sér úlfr enn hösvi
á sjöt goða.

Heill þú nú, Eiríkr! (kvað Sigmundr)
vel skaltu hér kominn,
ok gakk í höll horskr!

Hins vil ek þik fregna,
hvat fylgir þér
jöfra frá eggþrimu?

Konungar eru fimm, (sagði Eiríkr)
kenni ek þér nafn allra,
ek em hian sétti sjalfr.

どのような夢か? (オーディンが尋ねた)
まさに夜が明ける前に
我が思うたのはヴァルハラを調えること
殺害された者達の到来のために。
我はエインヘリヤルを起こし、
ヴァルキュリアらに立ち上がるように命じた、
長椅子にわらを撒き散らし
葡萄酒をもたせ、杯を探し集めさせるために。
我は期待する
英雄らの、この世からの到来を
偉大なる者たちは
わが心に多大な喜びを与えてくれよう。

なにやら雷鳴を聴いたか、ブラギ?
まるで幾千もの動乱の如き、
もしくはあまりに強き群集か?
全ての長椅子がきしむ
「まるでバルドルがオーディンの館に舞い戻ったかのようだ」

戯言だ (オーディンが言った)
そうではないか、賢きブラギ?
貴殿が真実を知り得る時
それはエイリークのために鳴り響く
だが今、誰かが此処にやって来る
このオーディンの館に。

シグムンドとシンフィヨトリ!
素早く立ち上がり、
その者に挨拶に行け!
そして招き入れよ
もしエイリークであれば、
我が見たいと期待する者ならば。

なぜ貴方はエイリークを期待するのか? (シグムンドが尋ねた)
他の王の誰よりも?
なぜなら多くの地を (オーディンが言った)
彼は剣で赤く染めた、
そして血にまみれた刃を運んだ。

なぜ彼の勝利を持ち去るのか、
勇敢なる彼を求めるゆえか?
未来は計り知れぬが (オーディンは言った)
老いた狼が探し求めるのは
神々の在りしところ

エイリーク、万歳! (シグムンドが言った)
勇ましき英雄、
貴殿は歓迎され、館に入るだろう!
我はひとつ貴殿に伺いたい
どんな首領らが貴殿とともに
戦場いくさばの刃の衝突からやってくるのか?

5人の王たちだ (エイリークが言った)
私は全員の名を語ろう、
そして私自身が6番目である。


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