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チュンの家
夕方、街路樹などから「チュンチュンチュンチュンチュン!」とけたたましく鳴く大量の声を聞いたことはないだろうか。
暗いのと枝木が邪魔なのもあり、木を見上げてみてもその姿はなかなか確認できない。
しかし先日、葉の少ない木で声の主の姿を確認した。
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スズメだ。
やはり…という感じだが、声の主は彼らだったのだ。
家の近所にも、日が落ちる頃にチュンチュンうるさくなる木が存在する。ここではさすがに姿は確認できなかったが、おそらくスズメだろう。
スズメは群れで暮らす。日中はエサを求めて飛び回り(歩き回り?)、日が落ちると外敵から身を守るため木の陰に姿を隠す。隠れたいのなら鳴き声はあげない方がいいのではと僕は思ってしまうが、きっと鳴くことにはそのリスクに見合うだけのメリットがあるのだろう。
今日、その木に事件が起こった。
◇◇◇
枝が業者さんにより剪定されていたのだ。
街路樹だから車の走行を妨げないように?それともスズメたちの糞害や鳴き声のクレームなどが報告されたのか。
無惨に切り落とされていく枝を僕は眺めることしかできない。今はスズメは出かけているけれど、夕方にはそこに帰ってくるんだ。帰った時、そこに家がなかったらと考えると胸が締め付けられる思いがした。
「やめてください、そこはチュンの家なんです」
なんて言えるはずがない。そんなもの、ただの偽善だ。エゴだ。そんなことを本当に言ってしまえばヤバい奴の妄言だと思われるだろう。業者の人だってお仕事でやっているんだ。
◇◇◇
人間ごときがスズメの家の心配をするなんて、おこがましいのかもしれない。
野生のスズメは強い。それを僕はよく知っている。
顔の半分がえぐり取られていても、足が1本なくても、懸命に生きた子たちを知っている。
時に人間のパンをねだり、時に虫をついばんで、雛に与える。春先にはよく目にするスズメの子育ての光景だ。
僕はどうだ。貸してもらっているワンルームに住まい、電気、ガス、水道も1人では生み出すことすらできない。食料もスーパーやコンビニ頼みだ。安心して眠れる夜があるのは誰かのおかげで、自分で掴み取ったものではない。
さっきも書いたように、スズメは強い。
あの木が1本なくなったところで、彼らはまた新しい住処を探すだろう。
せめて彼らの安全と幸せを願わせてほしい。それだけが僕の頼みなんだ。
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