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日露翻訳 日本人だからこそ気づけること

こんにちは!翻訳チームの諸見里です。今日は翻訳業務をする上での困難と、翻訳班で学んだことについてお話ししたいと思います。

そもそも私は、このインターンに参加するまで「翻訳」というものをしたことがありませんでした。ほとんどのメンバーもそうだと思います。そんな中で、字幕翻訳とは何かというワークショップから始まり、翻訳を作ってみる勉強会を経て、いよいよ今年の上映作品『君の膵臓をたべたい」と『AKIRA」の翻訳業務に入りました。実際に業務をやっていると、困難に直面することもあります。それは字数の問題と、日本語ならではのセリフを訳す難しさです。

日本語からロシア語への字幕翻訳は、観客の読むスピードを考慮して、文字数が1秒15文字になるように決められています。しかし、どうしても情報量が多く、文字数オーバーをしてしまうことがあります。そういう時は、もっと違う言い回しにできないか話し合ったり、ほかのチームに相談したりします。また、日本語ならではのことわざや格言も、翻訳するのが難しいです。基本はロシア人インターン生に、似た意味のロシア語の格言が無いのかを聞いて決めますが、さらに格言になぞらえた言い回しがあったりすると、どうしようかと皆で頭を悩ませることになります。

翻訳はできるだけ原作のセリフをそのままロシア語に訳すべきですが、文字数を超えたり、ロシア人にとって意味が通じなくなる場合は、別の言い回しに変える必要があります。しかしそれで物語の流れが不自然になってもいけません。それを考慮しつつ、より良い訳を皆で考えていく作業は、答えがなく不安にもなります。しかし良い訳ができたときには嬉しくて一気に報われるような、とても面白い業務でした。

グループミーティングでは、それぞれが作ってきた訳を、実際のアニメ動画に入れて見ながらチェックします。最初のミーティングの時、日本人は私一人でロシア人二人の高速なロシア語に全くついていけませんでした。二人が作るロシア語のほうがもちろん正しいし、「私がいる意味ってあるのかな」と自信を無くしました。でもリーダーの岡本さんが「このセリフは流れ上こういう意味を持つからこんなニュアンスが欲しい」とか「このロシア語を見てロシア人はこういう感情を抱きますか」とか積極的に発言しているのを見て、日本語の細かいニュアンスや、物語の構造、人物のキャラクターをちゃんと把握して伝えられるのは日本人である私しかいないのだと実感しました。そして、ロシア人がこう訳しているから正しいんだと思うのではなく、違和感を感じたところはどんどん質問して確認していこうと心掛けるようになりました。自分の力不足を痛感した点も多いのですが、日本人とロシア人が何度も何度も話し合って作った翻訳はとても良いものになったと胸を張って言うことができます。ぜひ、たくさんのロシアの方に見てもらいたいです!


2015年から日露交流プロジェクトを行ってきた国際文化フォーラム様が、今年はオンラインで「日露高校生パフォーマンス交流」を実施します。イベント内容は、日本語とロシア語それぞれの言語で翻訳されている絵本を読んだあと、文化的背景やメッセージについて対話しながら理解を深めます。そして対話をもとに作った自分たちの物語を、影絵やイラストを使ったり、演じたりして作品を作ります。日本語を学ぶロシアの高校生と、ロシア語を学ぶ日本の高校生を繋ぐ素敵なイベントです。こちらもぜひ応援よろしくお願いします。


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