小鳥のハートで書店営業日誌①

かなり古い話ではありますが、小鳥のハートを持つわたくしの、情けない書店営業の体験日誌を綴りたいと思います。
では、どうぞ…..。

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伊 國 屋 書 店 新 宿 本店


 
 私の頭の中では、超極太な毛筆の明朝体で名が刻まれている、老舗中の老舗の書店。

 この極太毛筆書店に営業に行くことは、『魁‼男塾』の門を叩くことと同意儀である。 

 そんな、天下の紀伊国屋書店新宿本店さんに、『仏さまカード』の注文をもらいにいこうと本日、決意。
 
 さて、出版業界を知らな方に少し説明すると、出版の営業は他業種の営業と若干ことなる”書店営業”がある。
 
本も商品も置いてもらってなんぼだが、書籍の場合は、ただの‟商品”ではありません。というナーバスでシリアスな空気感を纏っている。
 
本は文化であるがゆえに、再販制度という他にはない販売制度があるのだ。

その制度自体は大賛成なのだが、それゆえに格調高い感じがあるような、ないような、どっちなんだい!という感じ…。

私は正直に言って、営業が苦手だ。
 
10年やっても慣れない。いや、難しい、、、、。
 
しかし、夢見る少女じゃいられない!
 
とにかく、超太毛筆書店様に置いてもらわねば!ならない!
 

書店営業の基本は、まず売り場チェックから始まる。 
その昔、さして売り場の見回りもせず売り場担当者に書籍を売り込んだら、
『おめーは、棚のチェックもしてねーで売り込んでくるな!」
という殺気で殺されかけたことがあった。
 
小鳥の心臓を持ち合わせた私は、それ以後、棚のチェックはもちろん、レジの混み具合、店員さんの疲労度など、細心の注意を払うようになった。
 
目指す売り場は3階。
 
そこは言わずと知れた、太ゴシック系・ビジネス書と極太ミン系・人文書という2大書籍を扱う硬質かつ高質な売り場!!
 
そう、書店員のエリートが集まる、書店営業にとっては恐ろしく敷居が高い場所なのだ!(そう思っているのは、俺だけか?)
 
人文書の一角、おそらく宗教関係の棚にあるであろうと予測を立てて、いざ踏み込む。
 
ちょっとだけ、丸ゴシックのポップな実用書売り場であってほしいという期待感も込めて歩き出す。
 
しかし、歩き出した瞬間から、違和感!?
 
な、なんと人文書売り場の入口に、<仏像フィギア>がガラスケースに並べられいるではないか!
一瞬、「ここは中野ブロードウエイ?それとも書泉グランデ?」と錯覚するほど、マニアなみさなん、よろしくどうぞ!的な感じ。
  
さらに、哲学・宗教の棚の並びの一番手前に
 
【スピリチュアル】と書いたプレートが、、、。
 
一瞬、我が目を疑った。
 
「哲学」、「宗教」を差し置いて、スピリチュアル!!
 
ど、どうなっとんじゃい!!!???
 
その棚には、所狭しと「タロットカード」や「オラクルカード」がずらりと並んでいる!!
しかも、テカテカした布切れが敷かれた平台まで!!
 
こ、これは、、、、
 
「いけるじゃん!! これぜってーいけるじゃん!!!」
 
『仏さまカード』がドーンと展開されるイメージが、もう3D状態で見えまくってるじゃん!!
  
心が猛烈スキップ!!
 
はやる心を抑えて、近くにいた店員さんに、この棚の担当者を尋ねると、
 
「あの棚の向こうにあるバックヤード、大きな鉄の扉にいます」
 
そいうと、その店員さんは、ささっとレジに向かってしまった。
 
え、せめて担当者の名前ぐらい、、、、。
 
いや、忙しい店員さんに声をかけてしまった私が悪いのだ。
 
再度、心のスカウターを調節し、相手の戦闘力を見誤らないようスタンバイ!
急いで棚の裏手に回ると、普通のドア二つ分はある重厚な鉄の扉が、
 
どーーーん!!
 
想像以上に、で・か・い!
 
<関係者以外立ち入り禁止>
扉に貼られた年季の入ったステッカーがさらに圧力をかけてくる!!!!
 
こ、これは開けづらい、、、、、。

これが、
歴史ある紀伊國屋書店新宿本店の人文書の重さなのか!!!

扉の前で立ちすくむわたし... 

ど、どうする???


つづく

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