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【海街diary】綾瀬はるかの1着のブラウスを巡る物語−海街diaryを服装を通じて観る

海街diaryを登場人物の服装を通じて観てみると、「物語」が浮かび上がってくる。

腹違いの妹すず(広瀬すず)が鎌倉の家に越してきて、ある朝のこと。寝坊した次女の佳乃(長澤まさみ)が慌てて支度をしながら朝ご飯をつまもうとする時に、幸が自分が買ったブラウスを勝手に着ないでと怒る。それに対して、佳乃は幸(長女、綾瀬はるか)も私のブーツ履いたことあるなどと誤魔化してやり過ごそうとする。ところが、幸はそのブラウスが大事なようで、いつも以上にこだわって佳乃に抗議するのだ。「買ってからまだ着ていないだから!」と。

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では、幸がこだわるこのブラウスはどういう目的で買って着たのだろうか?

格好良い勝負服らしきところからすると、不倫状態にある彼氏(同職場の医師)とのデート用ではないだろうか。買ったデート用の服を着ていけていないというのは、幸が女としての自分を出せないでいるということだ。唯一女らしい顔をするのは病院内のエレベーターに乗って彼氏と別れるほんの数秒くらいで(それがまた良い表情なのだが)、それ以外の服装や表情は看護師としてのもの、母親らしいきっちりとしたものだけなのである。

ところが、映画後半ではそんな幸が、佳乃にあっさりと自分の洋服をあげるシーンがある。

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実はこの少し前に、幸は不倫状態にある彼氏から一緒にアメリカに行かないかと誘われているのだ。佳乃がこの服いいなと言うと、幸はあっさりと「ならアンタにあげるよ」と答える。勝負服なのにいいの?と驚く佳乃に、「私は服に頼らなくても、勝つときは勝ちますから」と返すのだ。冗談で誤魔化しているが、これは心の中では、アメリカにはついて行かない。もう不倫はやめるのだ、と言う決心を表しているのではないだろうか。

登場人物の装いだけでも様々な物語が紡がれているのだ。

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