直感よ、権威に立ち向かへ!<ロスト・キング 500年越しの運命>

こんにちは、こうすけです。
急に涼しくというか、最早肌寒くなってきましたね。
突然の急襲に全く体が対応してくれません。

さて。
今日お話ししたい映画は、

『ロスト・キング 500年越しの運命』


イギリスの劇作家シェイクスピアが描いたことでも有名な「リチャード3世」の遺骨発掘を成し遂げた1人の女性にまつわる物語です。

筋痛性脊髄炎を患ったことにより昇進のチャンスを逃してしまったフィリッパ・ラングレー。たまたま息子の観劇に同行したことで「リチャード3世」の魅了され、その日を境にリチャード3世の幻影を追うようになる。仕事も上手く行かず、自分の時間を持て余すようになったフィリッパだったが、リチャード3世への興味関心は深まるばかり。いつしか彼女はシェイクスピアの史劇「リチャード3世」によって曲げられてしまった本当のリチャード3世像を取り戻すため、リチャード3世の遺骨発掘を目指すようになる。

実話ベースの物語なんです、これ。
恐らく8年くらい前くらいになるんでしょうか、確かに「リチャード3世」の遺骨発見というニュースを小耳に挟んだ記憶がありまして、しかもイギリスのチャーミング名優ベネディクト・カンバーバッチがリチャード3世の遠縁なんて事実まで明かされて、そんな、まさか?! とんでもないニュースじゃないか、なんてビックリしてました。

リチャード3世といえば、せむしで醜く、残虐非道な権力者としてシェイクスピアの史劇で描かれる姿が有名ですが、この映画からかなりシェイクスピアによる歪曲された人物像であったことが判明するのですが、そうした史実に関するポイントも面白いです。

筋痛性脊髄炎を患ってしまったことで、正当な評価を受けられなくなってしまった
主人公のフィリッパと、脊椎側湾症を患った姿が先行して悪逆非道な権力者というフィクションを作り上げられたリチャード3世の姿が重なって見えてくるのが、この物語の展開の妙なるところ。
要所要所でリチャード3世の幻想が現れてはフィリッパと語り合うのですが、この2人の会話も発掘が進むに連れて深みが増していきます。

リチャード3世の遺骨の発掘現場はパーキングエリアなのですが、発掘が始まる際にフィリッパは「R」と書かれたエリアに直感めいたものを感じるシーンが描かれます。
実際にフィリッパ本人が発掘作業を開始する際も、この「R」と書かれたエリアが気になったそうです。「R」はリチャード3世の頭文字ですし、何か繋がりのようなものを感じたのかもしれません。
こうしたひらめきや直感に従うと、道が開けるということを感じさせてくれる映画でもありました。

この発掘作業、フィリッパ自身はもちろん素人なので、大学の考古学部の力を借りて進めることになります。
ここで介入し、横槍を入れたり、最終的に手柄を掠め取っていく大学の経営陣が出てくるのですが、権威を笠に来てやりたい放題するあたりが、腹立たしくも滑稽です。

それでも自分の直感を信じ、権威に立ち向かっていくフィリッパの姿は凛々しく、イングランド王として戦って散ったリチャード3世を思わせるものがありました。

この映画はフィリッパとその家族についても焦点を当てているのですが、フィリッパの発掘作業への思いが段々と家族の絆を深めていくようになっていくのも、見ていて心が温まります。

最後に俳優陣について少し触れておきたいと思います。

フィリッパ役をサリー・ホーキンス、その夫ジョンをスティーブ・クーガンが演じています。
スティーブ・クーガンはこの作品の脚本も担当しています。ちょっとニヒルでクールな印象があるのですが、芯に温かさを感じる俳優です。もともとスタンダップ・コメディアンだったそうです。ちょっと皮肉な役柄が似合うんですけど、嫌味がなくて素敵。

フィリッパ役のサリー・ホーキンスは、どこか物憂げで、まとっている空気が淡いラベンダーグレー。
ご本人は折れてしまいそうなくらい細身な方なのですが、芯の強さを感じる演技がとても素晴らしい。

何というか「雨のイングランドがよく似合う」女優。

今回もいい映画に出会えました!
この日はもう一本見ていたので、早めに感想書きたいと思います。

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