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クジラと蛇口のいちごつみvol.2

クジラと蛇口のいちごつみ。1~30 の vol.1をまずどうぞ。

続きの31からです。
【31.鳩→32.種類→33.かわいい→34.犬→35.近づいて→36.モミの木→37.重ねる→38.鍋→39.あれ→40.やたら→41.タグ→42.仕事→43.こじ開け→44.クローゼット→45.世界→46.一冊→47.目の前→48.しずか→49.届かず→50.流るる→51.闇→52.気配→53.枝→54.クッション→55.サンドバッグ→56.欲しかった→57.くちづけ→58.すっぴん→59.すっぽんぽん→60.捕まる】


ヒッチコックの鳥の種類がならば平和の意味がまた深くなる/藤田美香

種類の中からお選びくださいと出された栞がすべてかわいい/蛇口ひろこ

犬が行く しっぽの先で飼い主のかわいいねえの暑気を払って/藤田美香

道端にがいるって喜んで近づいてみたら違ったときの/蛇口ひろこ

年末が近づいてきてリビングに出しっぱなしのモミの木がある/藤田美香

年齢を重ねて知りたいこともある教えてアルムのモミの木よ/蛇口ひろこ

豚バラと白菜重ねて蒸す鍋を「かんたん」と書くレシピが嫌い/藤田美香

穏やかにお互いを見て笑いあう数正とに祝福よあれ/蛇口ひろこ

太陽であれと示唆する育児書のやたらピカピカ明るい表紙/藤田美香

すれ違う人とやたらと目が合ってブラウスを脱げば襟元にタグ/蛇口ひろこ

急募とふ人そのものに付いているタグを片っ端から切る仕事/藤田美香

眠い目をこじ開け真夜中終わらせた仕事は小人の手柄に渡る/蛇口ひろこ

引っかかるクローゼットをこじ開けて何しに来たんだっけと閉じる/藤田美香

その奥の世界に踏み込ませぬようにクローゼットくのを拒む/蛇口ひろこ

本棚に並ぶ一冊一冊の世界にわたしの指紋が残る/藤田美香

目の前で一冊ごとにサインする憧れの人の袖口に蜂/蛇口ひろこ
(※noteにまとめるにあたり、一部改変しました。)

躊躇なく飛び越していた目の前の水たまりそっとしずかに入る/藤田美香

雨音に窓を閉めればどこからもひかり届かず秋のしずか/蛇口ひろこ

玄関の先に出て待つ宅配の届かず雲の流るるを見る/藤田美香

星たちが流るる夜更けふたりしか見えない闇を見つめ続けた/蛇口ひろこ

ぼんやりと人の気配を感じつつ夕の路地を早足で過ぐ/藤田美香

仄あかるい気配が漂い振り向けば枝を切られた金木犀の樹/蛇口ひろこ

ベランダにレジャーシートとクッションと本と小とポテチと酒と/藤田美香

クッションをサンドバッグにしたあとで顔をうずめて全力で泣く/蛇口ひろこ

通販のカゴに入ったサンドバッグ欲しかった理由わけを忘れてしまった/藤田美香

くちづけをして欲しかったと舞いながら銀木犀は密やかに告ぐ/蛇口ひろこ

飼い犬にくちづけされる(くりーむぱん)顔じゅう舐められすっぴんになる/藤田美香

星の降る露天風呂にてすっぴんのすっぽんぽんで友と語らう/蛇口ひろこ

人がすっぽんぽんで歩いたら美しくないから捕まるのです/藤田美香

美しい蝶は追われる美しいゆえにそしてときに捕まる/蛇口ひろこ


※太字は前の短歌からつんだ(もらった)一語(いちご)
※写真:蛇口ひろこ



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