ためにならないICL体験記(前編)

先日ICL手術を受けたのでその時の様子を書きました。

■経緯
20年以上前。
僕はコナン君より先にメガネを掛けて生きてきました。
僕がメガネをかけると、コナン君もメガネをかけ始めました。
つまり、ずっとメガネの生活を送ってきました。

体育のバスケでメガネが大破して授業を中断させたり、
ヤンキーにメガネを取り上げられてレンズを指紋だらけにされたり…。
世間のメガナー(※メガネをかけてる人のこと)が経験するメガネあるあるは、僕にとってはもうやり尽くした感があり、メガネーとして生きるのも飽きてきました。

コンタクトも試したのですが、極度のドライアイなので、数時間でコンタクトがカピカピになって勝手に外れてしまうことが多く、諦めざるを得ませんでした。

それでもコンパなど、ここぞでカッコつけたい時や童貞感を薄めたい時は、その日だけがんばってコンタクトをつけたりしてました。

でも、友達からから「おっ、コイツ、今日は気合い入れてコンタクトで来てるぞ(笑)カッコいいと思われたいのかな?かわいい童貞だな(笑)」
と思われるかも・・・と、お得意の被害妄想に悩んでいました。

そんなときにICLに出会ったのです。

「これなら人目を気にせず裸眼でいられるな」と思い興味を持ちました。

■ICLについて

ICLとは、簡単に言うと目の中にコンタクトレンズを埋め込む手術らしいのですが、初めて聞いた時は、何とも信用できない手術だと思いました。

よく、バラエティ番組などで聞く

「この牛タンうまっ!!ぼくの舌、この牛タンに交換してずっと味わってたいですわ~~」的な、こすられたボケ。

ICLはバラエティ番組から着想を得た手術なのでしょう。
ICLはIQの低いアホが考えた手術だと思ったのです。

色々調べたところ、思ったよりリスクが低い技術のようなので、思い切って受けることにしました。

■事前検査
ICLを受けられる状態かどうか検査するため、新宿の病院に行きました。

検査では視力や眼圧や角膜の細胞の数などを調べ、ICLを受けても問題ないか診断してくれました。

レーシックは受けるつもりはなかったのですが、
先生から「角膜が薄いのでレーシックは受けられませんね」と言われました。
こうなるとICLを選んだのも必然だったのだなと思えてきます。

病院の待合室には大きなテレビがあって、ICLの紹介動画が流れていていました。

院長が、ICLを受けた患者の目を0.3秒くらい見て「全く問題ないです」とスピード診断していました。

嘘でもいいから7秒くらいは診てるふりしたほうがいいと思いました。

病院に若干の胡散臭さ感じながらも、帰るときに手術日を予約しました。

手術直後は外出できず家にいないといけないので、
手術は用事を済ませた夕方くらいにしたいと受付嬢に言ったところ、
「その日は朝9時だけ空いてます。」との残酷な返答。

ただ、どうしてもその日に受けたかったので、なんとか朝9時で予約することを伝えました。

「でしたら、病院のシャッターは朝9時に開くので9時ちょうどに病院に来てください。ただ、手術は遅らせられないので遅刻は絶対に許しません」
との冷たい返事。

自分なりにがんばって予約時間を譲ってあげた感覚だったので、てっきり
「ありがとうございます・・・!!」
と涙ながらに手を握って感謝してくれると思っていたのでショックでした。星1つです。


朝9時ぴったり集合。
受付嬢との約束を果たすには60秒しか猶予はありません。
緊張で手に汗をかいているのを感じました。


■手術前夜
手術したくないなと思いました。
怖いからです。

手術そのものも怖いけど、失敗して目の健康が損なわれることがとにかく怖い。

最悪、視力は一切変わらなくてもいいから、失明したり、ガチャ目になったり、回復不能な状態にならなければいい。

明日の朝には手術なのに、今更になって眼科医がICLの問題点を解説するYouTubeを見てしまいます。

病院を批判する口コミを探してしまいます。

手術を受けなくてもいい理由を探すのに忙しかったです。

そして夜更けと共に気分はネガティブなゾーンへ・・・。

メンタルが落ち込むとあらぬ妄想も膨らんできます。

もし手術が失敗して失明したら、病院を相手取って裁判することを考えてみました。

「これは医療ミスだ。僕の目を返して!!」

そんな無念を抱えながら賠償金を請求するぼく。
たくさんのスーツの人と盲導犬と一緒に入廷していきます。

世間はどうでしょう?
こういうとき、世論はぼくの味方してくれるでしょうか?
答えはNOです。

例えば、ガンの手術が失敗して、それが医療ミスだとわかったら、
「患者がかわいそう」とか「病院はずさんだ」とか、
世論は味方してくれるでしょう。

しかしICLは違います。

なぜならICLって美容整形手術みたいなもんで、
生きるためではなく、欲深い人間が受ける手術だからです。
別に必ず必要な手術ではない。

インターネットを見ると、裁判の様子がヤフーニュースになっており、僕に強烈なクソコメが浴びせられていました。

「眼科医はメガネの時点で答えは出てる。ICL受ける方が馬鹿だよね(笑)」

「コイツの担当になった盲導犬がかわいそう・・・」

失明した僕に代わって、母親が耳元でクソコメを読み上げてくれた。

「悔しい…!!!」

僕はそんな心ない言葉に涙した。

「目は見えなくても、涙は出るんだな…」

そんなことを考えながら、ぼくは枕を濡らしたのだった。


~~~~

そんな被害妄想を浮かべながら横になりました。

不安で眠れない夜。


■手術当日
あまり眠れませんでした。
気が重いです。

家を出ると外は爽やかな五月晴れでした。

爽やかな気候と不安な心境のギャップがすごくて吐きそうで、まるで入学初日の登校中の心境でした。


病院に向かう道中、いろんなことを考えました。

「看護師はくれぐれも丁寧に接してほしい」

「看護師はずっと優しい言葉をかけてほしい」

「受付嬢にはお釣りを渡すとき手を握って渡してほしい」

祈るような気持ちでした。

僕の心は不安で弱りきっていました。

受付嬢との約束通り9時ぴったりに病院に入ると、すでにたくさんの患者が待っていました。

受付嬢に嘘つかれていました。

もう信頼関係はボロボロです。


■手術1時間前
個室の待合室に通されました。

「手術後につける保護用メガネのサイズを決めたいから、試しに掛けてください」
と言われ、保護用メガネのサンプルを手渡されました。

緊張のせいか、自分のメガネの上から保護用メガネを掛けようとしてしまいました。
看護婦さんが眉一つ動かさず「ハハッ」と笑ってくれました。

乾いた笑いでした。

俺、優しくしてって言ったよね?

その後、5分置きくらい看護師さんが来て、何回も何回もいろんな種類の目薬を差してくれました。

消毒の目薬だけでなく、瞳孔を開く目薬も差されました。

光が異常に眩しく感じて、眼鏡をつけても外しても目の前がぼやけて見られなくなりました。

4、5回目薬を差し終わると、看護師さんに「移動お願いします」と言われ別室に案内されました。

「いよいよ手術かな?」と思ったら、手術室の前室みたいなところに通され、また何回も目薬を差されるのでした。

目が水分でひたひたになり、これ以上目薬させないなーと思っていたら、
「手術始めるので手術室に移動してください」
と言われ手術室に移動しました。

瞳孔ギンギンの身としては眩しくてあまり見えなかったのですが、
手術室は白い壁やガンガンに明るい照明で、宇宙船の中のように真っ白な空間でした。

歯医者みたいな椅子に腰掛けました。

「今から手術始めまーす」

と声が聞こえ、宇宙服のような手術着を着た先生が現れました。

※後半に続く

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