【図解】直近10年で伸びた市場に学ぶ、ビジネスアイデア⑥〜インフォマート〜

こんにちは!
JAFCOインターン生の鎌田です。

「直近10年で伸びた市場に学ぶ、ビジネスアイデアシリーズ」第6弾をお届けします!本シリーズでは、「成長業界を調べることで、社会のニーズや価値観の変化といった大きなトレンドが見えてくるのではないか?」「それは他の業界や事業にも役に立つのではないか?」という仮説のもとで、毎回一つの業界をピックアップして記事にしていきたいと思っています。

(来月からは新たなインターンメンバーを加え、新しい記事の企画も考えています!引き続きコメント・いいねお待ちしております✨)

突然ですが、皆さんは「日本で代表的なSaaS企業といえば?」と聞かれたらどの企業を思い浮かべますか?
Sansan , freee , マネーフォワードといったここ数年間に上場したような比較的新しい企業をイメージする人が多いかと思います。

しかし、20年以上前からいち早くSaasを展開してきたインフォマートという企業があるのをご存知でしょうか?
SaaSの先駆け的存在であるインフォマートの株価は10年間で30倍以上に成長しています。

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今回はそのビジネスモデルや、どのようにプラットフォームを成長させてきたか、そして今後の成長について分析したいと思います!

1. インフォマートのビジネスモデル

インフォマートは、フード業界に特化したBtoBプラットフォームを展開してきた企業です。

2020年末時点で50万社以上が登録しており、2020年の1年間で12兆7,295億円の取引がこのプラットフォーム上で行われています。
主軸の一つである「BtoBプラットフォーム受発注」は、流通金額1.5兆円を超え外食シェア20%(2017年度)と業界トップの企業です。

実際、5店舗以上を有する外食チェーンは日本に7,600社程度とされる中、インフォマートの受発注を導入している企業は約40%にあたる3,185社(2020年12月末時点)にのぼっています。また、外食に関連する卸企業に注目すると約73,000社のうち37,932社(同)が受発注を活用しており、約50%強の企業が利用していることになります。。

インフォマートのビジネスモデルは至ってシンプルで、卸業者やメーカー、小売業者などが定額の利用料を支払うことで、インフォマートのBtoBプラットフォームを利用する企業同士でやりとりができるというものになります。
従量課金制度やセットアップ費用などの収入源もありますが、売上高の95%が月額システム利用料で非常に安定した収益構造となっています。

同じプラットフォームビジネスでも先週記事にしたエムスリーとはビジネスモデルが全く違うことがわかりますね。

また、取引先もプラットフォーム内にいるため、自社判断だけで辞めづらく解約率も低く抑えられているようです。

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特に主力である受発注サービスについては2018年度には約47%、コロナの影響を受けた2020年度も40%と高い営業利益率を上げています。

2015年までは飲食業界に特化したサービスに注力していましたが、請求書サービスの開始に伴いそのターゲットを全業界に広げています


新しい業界で顧客を獲得するために投資に力を入れており、売上高に対する販売促進費の割合は年々増加し昨年は売上高の6.7%を占めています。

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その結果、売上高の伸びに対して営業利益は横ばい(2020はコロナによって主力の飲食系が減益)の状況です。

利用企業数にもその傾向は出ており、まずは既存大手顧客の取引先に無料IDを付与することでプラットフォームの利用社数を増やしている状況です。

多くの投資をして先ずは無料ユーザーを増やし、その後有料ユーザーへと転換させていく方針は、最近のSaaSベンチャーと変わらないように思えます。

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2. インフォマートの設立

今から20年以上前にSaaSやプラットフォームビジネスを立ち上げた創業者はどのような人で、どのようにしてこのビジネスに至ったのでしょうか?

インフォマートの創業者は山口県出身の村上 勝照さんです。
実は村上さんは、インフォマートの設立までにアパレルや水道の販売代理店など複数の事業を立ち上げを経験されています。

初めての起業であったアパレル事業ではたった1度の仕入れで事業を畳むことになるなど、失敗も経験されていますが、そこでの学びが後の企業に活かされているようです。

その後、起業のタネを探す日々の中で出会った百貨店役員や地元山口の食品関係者との対話の中で両者のマッチングに課題があることに気づき、当時誰もやっていない方法で解決するためにインターネットという手段を選んだそうです。

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1997年当時、まだインターネットが普及し始めたばかりのころで、開発経験もない村上さんがどのようにサービスを作ったか、インタビューでこう語っています。

仲間内にネットに詳しい人間がいなかったので、サイトの構築は詳しい人を紹介してもらってシステム構築から依頼しました。自分で初めてパソコンを買ったのも、「フーズインフォマート」のサイトが出来上がった後でした

パソコンの知識がほとんどゼロの状態でネットビジネスに参入していたことに驚きましたが、ネットビジネスの可能性への直感とニーズに応えるビジネスアイデア、そして外部の力を借りた迅速な開発によって、翌年の1998年6月には売り手と買い手が100件ずつ集まった状態で、「フーズインフォマート」(現在の「商談」サービス)を開始することができたのです。

その後、食材探しのプラットフォームだけでは、メニューや展示が変わるタイミングでしか使ってもらえず継続率に課題があったことから、毎日行われる食材の発注に注目し、現在収益の柱となっている受発注サービスの開始につながっていきます。

3. インフォマートの今後

食品業界で圧倒的地位を築いているインフォマートが、「請求書」サービスを皮切りに他業界へと展開を推し進めていることから、食品業界に特化しサービスを増やし続けることでのアップセルには限界があったと感じます。

エムスリーも、現在の製薬会社の営業コスト分が売上の限界点でもあったことから他の収益源開拓にシフトしていましたが、小規模な小売や飲食店から利用料金を取るモデルであるインフォマートは業界内に留まったまま成長することは更に難しいのかもしれません。

今後の成長のためには、①大手企業を取り込むことによる他業界展開の加速②蓄積されたデータの活用の二つがポイントだと感じます。

①については、BtoBプラットフォームという性質上、企業にとって取引相手もプラットフォームを利用していないとサービスを活用できません。
インフォマートは食品業界での拡大においても大手企業とアライアンスパートナーを組むことでその周辺の中小企業もプラットフォームに取り込んできました。今年の8月にはJCBがインフォマートの導入を決め、取引先への導入も促していくと発表しました。

電子化を模索する大手企業を信頼性や導入の手軽さで競合より先に取り込んで、業界のスタンダードになれるかが鍵となりそうです。

②について、食品業界の流通の20%を占めるデータはインフォマートしか持っていない強みであり、新しいビジネスモデル創出のための重要な役割を占めると感じています。

昨年から新しくFood Techに特化したファンドを立ち上げておりベンチャー企業ともデータの活用に向けて協働しようという動きが見て取れます。
紙ベースだったものを電子化する、というレベルを超えて発注の完全自動化やトレンドに合わせたメニューの提案など新たな付加価値の創造につなげる段階に入ってきているのかもしれません。

4. まとめ

・インフォマートは食品業界トップのプラットフォームをもつ企業である。
・創業者は20年以上前に、食品業界の課題とインターネットの可能性に目をつけ、ネットの知識はほとんどゼロの状態ながら、プラットフォーム型のSaaSビジネスモデルを構築した。
・今後は他業界への展開と蓄積されてきたデータの活用が成長の鍵となりそうだ。

SaaS系のサービスでの起業を考えている方や、新しい技術を活用した事業の立ち上げを考えている方にとって、インフォマート設立や成長の過程が参考になれば幸いです!

JAFCOのホームページでも、専門家の方とともに起業や事業成長に役立つ情報を発信しているので是非ご覧ください

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