日本の女性起業家をとりまく現状
本稿では、日本の女性起業家をとりまく現状についてお届けします✨
女性はもちろんですが、さまざまな方に読んでいただけると嬉しいです。ぜひチェックしてみてください!
目次
まずは日本の女性起業家の現状を外から観て、世界と比較して日本はどのような現状にあるのか理解します。その後、日本国内では女性起業家に関してこれまでどのような動きがあったのかを観ます。
世界と比較して観る日本の女性起業家の現状
働き方改革や女性活躍推進法などの政策により女性が働きやすい環境の整備が始まり、女性起業家も増えてきました。しかし、世界的にみると日本の女性起業活動の状況としてはまだまだなのが現状です。
下のグラフは、世界49カ国の男性の起業活動を青、女性の企業活動をオレンジで国別で表したものですが、左端にあるのが日本です。
2022年度における男女別および国別の起業活動総計
Global Enterpreneurship Monitorによると、以下が述べられるようです。
女性の起業活動が最も低い国はポーランド(1.6%)で、続いてモロッコ(3.1%)、ギリシャ(3.4%)、日本(3.5%)です。日本における女性の起業活動は下から4番目であることが分かります。
起業活動におけるジェンダーギャップについては、エジプト(W/M0.38)に続いて、2番目に起業活動におけるジェンダーギャップが大きい(W/M0.39)です。
女性の起業への関心はカタール(52.7%)とトーゴ(52.4%)が最も高く、最下位のポーランド(2.3%)に続いて日本(3.9%)がランクインしています。日本は女性の起業への関心が下から二番目であることが分かります。
起業を良いキャリアだと考える女性の割合において最下位です(25.8%)。
女性の起業のしやすさにおいては、イスラエル(11.9%)、スロバキア(16.5%)に続いて日本(23%)がランクインしています。つまりは、日本は起業のしやすさにおいて下から3番目の国であると言えます。
日本国内での女性起業家の動向
世界と比較すると日本の女性起業家を取り巻く現状はほぼ最下位ですが、日本国内の女性起業家の動向をみると、近年劇的に成長していることが分かります。
下のグラフは、1991年から2023年までの開業者の性別割合の推移を表したものです。
開業者の性別割合の推移
日本政策金融公庫総合研究所によると、2023年度の開業者に占める女性の割合は24.8%と1991年以来最も高く、1991年から徐々に女性開業者の割合が増えていることが分かります。
少しずつではありますが、日本における女性起業家をとりまく状況は改善していると述べられます。
ではなぜ日本では女性起業家の数が少ないのでしょうか。その背景について金融庁は以下を述べています。
構造的な問題
女性起業家が直面する困難は多岐にわたります。資金調達においては、男性中心のネットワークにアクセスしにくい、女性のビジネスアイデアが評価されにくいなどの構造的な障壁があります。これにより、資金調達や事業拡大が難しくなっています。資金調達の難しさ
女性起業家に対する資金調達は非常に困難です。VCからの資金調達においても男女格差が存在し、女性起業家は男性に比べて資金を獲得しにくい傾向があります。これは、VCが男性中心であり、男性のビジネスアイデアの方が評価されやすいことが影響しています。コミュニティへのアクセス不足
起業家ネットワークやVCコミュニティへのアクセスが限られているため、必要な情報や支援を得るのが難しい状況です。女性起業家は、男性中心のコミュニティに参加しにくく、重要なネットワーク形成が難航しています。社会的・文化的バイアス
日本社会に根強く残る性別役割分担の意識やステレオタイプが、女性の起業を阻んでいます。例えば、女性は家庭や育児を優先するべきという固定観念があり、これが女性のキャリア選択や起業に対するハードルとなっています。支援体制の不足
女性起業家に対する支援プログラムやメンターの数が不足しており、必要なサポートを得るのが難しいです。ピッチコンテストやアクセラレータープログラムにおいても、女性の参加が少なく、支援体制が十分に整っていない現状があります。自身の欠如
女性起業家自身も、資金調達や事業拡大に対する自信を持ちにくい状況があります。これは、過去の経験や社会的な期待によって形成された自己評価の低さが影響しています。
日本における女性起業家の数が少ない現状の背景を理解した上で、世界・日本の著名な女性起業家のキャリアを観ることで、女性が起業するためのヒントを見つけられればと思います。
従ってここからは海外と日本の著名な女性起業家を数人ずつピックアップし、そのキャリアを紹介します。
海外の著名女性起業家
■ Canva Melanie Perkins氏
オーストラリア生まれ。
西オーストラリア大学 Communications, Psychology and Commerce学部を中退
→ Fusion Booksを設立(2007年)
→ Canvaを設立(2013年)(26歳)
→ Canvaの共同創業者と結婚(2021年)
→ 第一子出産(2022年)
気づき:学歴にとらわれず、自身のビジョンを追求する勇気が成功を導くと言えます。
■ Tinder、Bumble Whitney Wolfe Herd氏
アメリカ・ユタ州生まれ。
サザン・メソジスト大学 国際学部に進学
→ 在学中にHelp Us Project を設立
→ 続いてTender Heartを設立
→ Cardifyに入社(2012年)
→ Tinderを共同設立(2012年)
→ マーケティング部門のヴァイスプレジデントに就任
→ セクハラ被害を受けたとしてTinderを起訴し、100万米ドルを受け取る(2014年)
→ Tinderを辞職(2014年)
→ Bumbleを設立(2014年)
→ 結婚(2017年)
→ 第一子出産(2019年)
→ 第二子出産(2022年)
気づき:自身の経験を活かし、あたらなビジネスモデルを構築する力が重要であり、また逆境を乗り越えることで新しい機会が生まれる、と言えます。
■ Glossier Emily Weiss氏
アメリカ・コネチカット州生まれ。
ニューヨーク大学 スタジオアート学部に入学
→ 在学中、Ralph LaurenおよびTeen Vougueでのインターンを経験
→ 大学卒業後、Into the Glossを設立(2010年)
→ VogueおよびInto the Glossで働く
→ Glossierを設立(2014年)
→ 第一子出産(2022年)
気づき:消費者との直接的なコミュニケーションを重視し、ニーズを理解することが重要であると言えます。
■ 23andMe Anne Wojcicki氏
アメリカ・カリフォルニア州生まれ。
イエール大学生物学部を卒業
→ Passport capitalに入社
→ Investor ABに入社
→ MCATを取得しメディカルスクールにて研究に励む
→ 23andMeを設立(2006年)
→ 第一子出産(2008年)
→ 第二子出産(2011年)
気づき:科学的知識とビジネスセンスを融合させることで、革新的なサービスが提供できるといえます。
■ SOHO China、Closer Media Zhang Xin氏
中国出身。
英サセックス大学経済学部を卒業
→ ケンブリッジ大学開発経済学修士号を取得(1992年)
→ イギリスでベアリングス銀行に就職し香港で働く
→ ベアリングス銀行がゴールドマン・サックスに買収され、ニューヨークに転居(1993年)
→ 北京に戻り、結婚(1994年)
→ Hongsi(のちのSOHO China)を夫と共同設立(1995年)
→ 博鰲鎮、海南省、長城コミューンの開発を含む、北京で18の都市、上海で11都市の開発に従事
→ Closer Mediaを設立(2008年)
→ 夫と共に1億米ドル規模の奨学金「SOHO China Scholarship」を設立(2014年)
気づき:国際的な経験とネットワークが、ビジネスの多角化と拡大に役立つと言えます。
日本の著名女性起業家
■ EventHub 山本理恵氏
イギリス生まれ、アメリカ・日本育ち。
米ブラウン大学経済学部&国際関係学部を卒業
→ マッキンゼー・アンド・カンパニー サンフランシスコ支社に入社
→ 在籍中に出向制度で認定特定非営利活動法人Teach For Japanへ出向
→ 日本に帰国し、ゲームベンチャーの新規事業立ち上げや宇宙ベンチャーの海外マーケティングをフリーランスとして担当
→ 株式会社EventHubを設立(2016年)
→ 日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2023」受賞(2023年)
気づき:国際経験と多様案職務経験が企業に役に立ち、ニッチな市場に特化することで成功の機会が増える、と言えます。
■ ビビットガーデン 秋元里奈氏
神奈川県出身。
慶應義塾大学理工学部管理工学部を卒業
→ ディー・エヌ・エーに入社
→ ビビットガーデンを設立(2016年)
→ 食べチョクを開始(2017年)
→ Forbes 30 Under 30 Asia 2020 コンシューマーテクノロジー部門、アジアを代表する30歳未満の30人に選出(2020年)
→ 経済同友会 未来採択会議準備会合メンバーに選出(2022年)
→ 農林水産省 地理的表示登録に係る学識経験者委員会委員、福岡市農林業振興審議会 委員に選出(2023年)
気づき:利用者(地元の生産者と消費者)との直接的なコミュニケーションは重要であり、地域貢献とビジネスの両立は可能である、と言える。
■ SHE株式会社 福田恵里氏
滋賀県出身。
大阪大学に入学
→ 在学中にサンフランシスコ・韓国に留学
→ 初心者の女性向けのWebスクールを設立(2015年)
→ 大学卒業後、リクルートホールディングズに入社(2015年)
→ SHE株式会社を設立(2017年)
→ 産休と同時にSHE株式会社の代表取締役CEOに就任(2020年)
→ スタートアップワールドカップ2023 東京予選3位、ジャパネットグループ賞を受賞(2023年)
気づき:自分の経験に基にビジネスを創造していると言える。
■ iiba 逢澤奈菜氏
京都府出身。
同志社女子大学学芸部情報メディア学科に入学
→ 20歳で難病発症(2014年)
→ 手術、闘病を経て大学を卒業 & 結婚
→ 海外ウエディングの会社に入社
→ 第一子出産
→ 退職し、フリーランスとして働く
→ 第二子出産
→ リクルートホールディングズに入社
→ iiba を設立(2022年)
→ 内閣官房主催「イチBizアワード」優秀賞を受賞(2022年)
→ 日経クロストレンド「未来の市場をつくる100社【2024年版】」、EY Innovative Startup 2024に選出(2024年)
気づき:自身の経験を基にしたビジネスの創造しており、個人の経験がビジネスの強みとなると言える。
■ ミツモア 石川綾子氏
東京大学法学部を卒業
→ ベイン・アンド・カンパニーに入社
→ ペンシルベニア大学ウォートン校MBA取得
→ シリコンバレースタートアップ・Zazzleに入社
→ ミツモアを設立(2017年)
→ 日本スタートアップ大賞2023にて経済産業大臣賞(ダイバーシティ賞)を受賞(2023年)
→ みずほ銀行主催「Mizuho Innovation Award 2023.4Q」を受賞(2023年)
→ Japan Venture Award 地域貢献特別賞を受賞(2023年)
気づき:高度な学歴と職務経験が、起業の基盤となることもあり、多様な業界での経験が成功を後押しすると言える。
以上の女性起業家のキャリアから学べることは、以下の点です。
キャリアとプライベートライフのバランスを取る
家族のサポートや柔軟な働き方を取り入れ、キャリアとプライベートの両立を目指すことで持続可能なビジネス運営が可能となります。多様な経験と学びを生かす
異なる業界や国での経験が独自のビジネスチャンスを生む土台となります。逆境をチャンスに変える
困難な状況を乗り越えることで、新たなビジネスチャンスが生まれることもあります。ニッチ市場に特化する
特定のニーズにこたえる製品やサービスを提供することで、市場の差別化が図れることもあります。コミュニティとのつながりを大切にする
消費者や支援者との直接的なコミュニケーションがビジネスの成長を促す。自己の経験をビジネスに生かす
自身の人生経験が、ビジネスの強みや差別化要因となります。
おわりに
ここまで読んでくださりありがとうございました。
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※2024年6月24日時点の情報に基づいて執筆。
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参考文献
Global Entrepreneurship Monitor(2023)「Challenging Bias and Stereotypes」『GEM 2022/23 Women’s Entrepreneurship Report』pp. 24-64
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