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この歌がいちばんいい歌、その次の歌ができるまでのあいだは

彼は、今、歌を頭にかぶっている。歌には花模様が描かれている。歌をかぶった理由は、ひょんなことからである。くだらない理由である。少年らしい理由であると言えなくもない一方、歌を脱げないのに理由はない。ただ脱げないのである。
物語の結末は至って単純だ。病院に行って取ってもらおうとした瞬間に歌が割れて取れてしまうというのだから。大人には、物足りないくらいと言ってもよい。せめて、割れた歌からはいっぱいの宝物が出てきましたとさ、とはいかないものか。

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