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1周40秒キツネ園

そのキツネ園の看板には、キタキツネのような

かわいい黄色のキツネのイラストが描いてある。

フサフサの毛並みを持った愛らしい瞳のキツネたちが

迎えてくれるのだろうな~♪と、期待して入場した。

山の斜面に囲いを作って放し飼いにされているキツネたち。

金網の入場口を開けて入ると、

岩の上で、

   木の根元で、

      湿った地面から首をもたげて、

キツネたちの視線が、いっせいにこちらに向けられた。

視線が刺さるとは、まさにこのことだ。

フサフサの黄金の毛並みのキツネなど一匹もいない。

みな体色は黒っぽく、痩せている。

彼らは、にじ、にじ、とこちら向かって、歩を進めてきた。

・・・コ、コワイ・・・。

園内には、ご丁寧に、お稲荷さんの赤い鳥居まで立てられている。

それがさらに怖い。ここにいるだけで、憑依されてしまいそうである。

「ひっ」と言って、同行者が出口に向かって猛ダッシュをはじめた。

待ってぇー、わたしを置いてかないでぇー、お願いだよぉおー、

わたしもヒールでアップダウンのある斜面をダッシュする。

途中、糞も踏んだ。

通り道にいたキツネの横を、目を合わせないようにして走り抜けた。

出口にたどりつき、金網の外に出て、ホッと一息。

わずか40秒ほどで入園料700円のキツネ園見学は終了なり。

このキツネ園の唯一の救いは、メエメエ子ヤギだ。

タタミ一畳分ほどの小屋に客が入って、ヤギとふれあえるのだが、

小屋の扉を開けるたびに、コヤギも出ようとして、扉に挟まれそうになっている。

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