見出し画像

アナタの真実 ~福祉現場でがんばるアナタに~

前回の記事では、社会の不条理な真実をお伝えしました。今回は、アナタ(自分自身)の真実を見極めておきましょう。要するに、現状分析です。

2015年の秋に、神奈川県川崎市で、Sアミーユ入居者連続殺人事件が起こりました。翌年の夏には、同じく相模原市で、やまゆり園大量殺傷事件というのがありました。横浜市では、わずか3ヶ月の間に50人もの患者さんが不審死を遂げた大口病院事件もありました。こうした社会的弱者を虐殺する事件が起きるたびに、そこで働く人たちのこころが危うくなっていきます。

私どもでは、アミーユ事件の直後から、福祉の世界で働く専門職を対象に、毎月10人ずつに聞き取り調査をしてきたんです。食事をしながら、事件に対する率直な感想や、福祉現場の課題などを本音で語ってもらいました。

そして、合計100人の調査結果を集計してみると、実に興味深い真実が見えてきました。もっとも驚いたのが、フリーコメントにもかかわらず、「自分が加害者になる前に仕事を辞めたい」と言った人が28人もいたことです。

いいですか!?

あらかじめ用意した選択肢ではないんですよ。自由に感想を述べてもらうなかで、異口同音に、自分が加害者になる可能性を語ったという事実。そこに、当事者以外には計り知れない福祉現場の過酷さを感ぜずにはいられません。

また、お客様である入所者からこんなことを言われて傷ついた、というエピソードも語ってくれました。

「よくこんなバッチイ仕事をやってられるな。あんたの親は一体どう思ってんだろうね。大切に育ててもらえなかったんだなぁ。ああ、かわいそう、かわいそう」

「別のヘルパーがあんたのことを使えないって嘆いてたよ。何度もおんなじ失敗をするんだって? それをあたしに言われたってねぇ。あんな先輩がいたらイヤだろうねぇ」

「おい、もっと丁寧な仕事ができないのか。こっちはお客なんだぞ。ったく、どうしようもないな、ヘルパーってぇのは。きっとろくに勉強もしてこなかったんだろ?」
 
「うちの娘は気立てがよくってねぇ。お金持ちの家の御曹司に頼むから嫁に来てくれって日参されて。目黒の一等地のこ~んな立派なお屋敷で暮らしてるよ。それを考えたら、あなたたちはつらいわねぇ。本当に気の毒よねぇ~。おほほほほ」

「来るのが遅い!何分待たせるんだ!まず謝れ。どうしてすぐに駆けつけなかったのか訳を言え。説明責任ってぇのがあるんだ。そんなことも知らんのか、ヘルパーは!」

「ほうら、出ちゃったよ。来るのが遅いからさぁ~(そう言って、オムツ交換時に、排泄物を手ですくって介護職にこすりつけてくる)」

「ああ、死にたい死にたい。生きてたってイヤなことばっかだ。いっそ死にたいよ。殺してくれよぉ。あんただって、こんなババア、死んでほしいと思ってんだろ! 顔に書いてあるよ。ったく、こんちきしょう」


他にも、「イエス・ノー」の二択形式の質問では、以下のような結果が出ています。

★憎らしいと思う入居者がいますか? ⇒ YES・・・72%                               ★今の待遇は妥当だと思いますか? ⇒    YES・・・20%                                ★5年後も今の仕事を続けていたいですか? ⇒ YES・・・23%          ★10年後の幸せな日々をイメージできますか? ⇒ YES・・・27%                ★生まれ変わったら、また今の仕事に就きたいですか? ⇒ YES・・・18%  ★あなたの子どもに、同じ仕事をさせたいですか? ⇒ YES・・・15%

正直、驚きました・・・。                       よくぞ本音を答えてくれたと思います。予想をはるかに超えるネガティブな数字でした。これはもう、非常ベルが鳴っているような状況です。ヤバいです。そこで働く8割もの人が、「できればやりたくない」と思いながら日々の仕事に向き合っているんですよ。これはちょっと恐いです。そう思いませんか?

また、現在の仕事および職場に係る最大の問題は、

①人間関係(40%)                        ②先行き不安(29%)                       ③上司不信(18%)

でした。ボトルネックをひとつだけ選んでもらったのですが、ほぼ全員がこの3つをすべて指摘していました。逆に、仕事そのものがボトルネックであるというコメントは10%程度でした。

あなたはどうですか?                          今の仕事や職場に満足していますか?                 明るい未来を描けますか? 

いずれにせよ、福祉や介護の現場が尋常ではないことはまちがいありません。

あなたには、非常ベルが聞こえますか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?