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ジャバラのまどVol.15 モスクワのアコーディオン博物館 Alfred Mirek Russian Accordion Museum

アコーディオンの博物館といわれる場所は世界中にいくつかあり、イタリア・カステルフィダルドアメリカ・ウィスコンシンのものがよく知られていますが、モスクワにあるAlfred Mirek Russian Accordion Museumもそんな博物館のひとつ。
Alfred Mirek Garmon Museumとも呼ばれるこの博物館、楽器の収蔵数は他の世界的な博物館に比べると特に多いとは言えないものの、特筆すべきはバヤン、ガルモーニをはじめとしたロシア独自のアコーディオン展示が充実していること。ロシアには他の国には見られない、独特のアコーディオン文化があるのです。
どんな博物館なのかは、とりあえず下の短い動画をご覧ください。

ヨーロッパからロシアへのアコーディオンの伝播は、北米・南米のように移民労働者によるものではなく、交易を通して商人の手からというのが中心。アコーディオンが発明された頃のロシアには、ニジニ・ノヴゴロドの貿易見本市に代表されるような、アジアとヨーロッパの接点になるような大きなマーケットが何カ所かあったそうで、そうした場所には新技術を求めて各地の職人たちが集まりました。
ニジニ・ノヴゴロドの見本市がどのようなものであったか、ロシア語ではありますが以下の動画でその様子をうかがい知ることができます。マーケットと言うよりはちょっとした博覧会のような様相ですね。

アコーディオンは当時の最新メカだったので、職人達がサンプルとして入手のうえ、分解・研究となるのは自然な流れ。そこに地場産業の技術も加味し、ローカルな文化に合わせて改造した結果、ロシアにしか存在しないユニークな楽器が多数生まれることになったようです。それらが一堂に会しているのがこの博物館なんですね。
展示のほかにミュージアムショップやコンサートホールも併設。昔の職人の工房も再現されており、ロシアのアコーディオン文化に深く触れることができるスポットとなっています。また、ここには創設者のAlfred Mirekが研究して整理した、笙を起源としたフリーリード楽器の「系統図」があることでも知られています

写真2

ちなみにAlfred Mirek氏は1922年生まれ。出生地はウズベキスタンのタシケントで両親はチェコ出身ということで、もともとはロシア人はないのかもしれません。電気技師をしながらピアノ演奏者としても働いていましたが、のちにアコーディオンの研究者となり1970年代には博士号を取得。教則本も含め、フリーリード楽器についての本を多数執筆するなど精力的に活動していたというのに、なんとソ連時代には2回も投獄され、合計で約9年の服役生活を送ったというのですから驚き!もっとも凶悪犯罪ではなく思想犯的な容疑なので、現在から見ればほとんど言いがかりとも思える罪状でしたが・・・時代のせいとはいえ恐ろしいですね。

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