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ジャバラのまど Vol.18 ロシア 究極の合奏用アコーディオン

アコーディオン関係以外の友だちにアコーディオンの話をすると、まずは「懐かしいー!学校の音楽室にあったよ」と言われ、二言目に「でも左側にボタンなかったよ」と言われるのはアコーディオン弾きの常。小学校や中学校にあるのはたいてい合奏用アコーディオン。左手に伴奏のためのボタンがありません。この楽器で合奏をした経験がある方も多いのではないでしょうか。
1台でいろいろできるのがアコーディオンのいいところなので、やはり独奏用が技術の華。1台にどれだけ盛り込めるかが勝負のようなところがあり、合奏用は魅力的な開発ターゲットにはなりにくいのか、あまり画期的なものを見かけない気がしています。でもロシアには逆に合奏用に着目した人がいて、世界に類を見ない楽器が開発されていたのです。ロシアなのでアコーディオンではなくバヤン、そして合奏用ではなくオーケストラ用と呼ぶようですが、この「究極の合奏用アコーディオン」とも言えるオーケストラ用バヤンが開発されたのは1950年、モスクワでのこと。それらはオーケストラで使われる管楽器、例えばクラリネットやホルン、ファゴットなどに限りなく近い音が出るように作られました。楽器の筐体や蛇腹、リードの形状もいろいろと工夫されており、例えばこの楽器はクラリネットの音が出るタイプ。

図1

この楽器はオーボエの音が出るように開発されたタイプ。音色によって形が違うんですね。

図2

この楽器を使った活動をしているグループが「Timbre Russian」(ロシア語で「Русский тембр」、意味は「ロシアの音色」といったところ)。まだソ連だった1982年に結成。バンドではなく楽団というスタンスのようで、ときどきメンバーチェンジしながら今も活動中。40年近いキャリアということになりますね。
メンバーは基本的には5人。これらのオーケストラ用バヤンの中からクラリネット、オーボエ、フレンチホルン、チューバ用のバヤン+普通のバヤンといった編成で演奏をしています。アコーディオン系の楽器だけでアンサンブルをすると、音の質感が近いせいかちょっとゴチャゴチャして聴こえることがあるのですが、これだとそれぞれの楽器の音が違うので各パートの音がよく聴こえ、アンサンブルの役割分担も分かりやすい。

今回紹介するためにひさびさにネットで動画をいろいろ観ていたら、なんとコロナ対応のリモート演奏版がありましたので、載せておきますね。各楽器の形がよく分かります。曲はゲオルギー・スヴィリードフの「トロイカ」。それにしてもリモート演奏だなんて、70年前に開発されたこの楽器はソ連崩壊を生き抜き、今コロナ禍の今もまさに時代に合った形で生き抜こうとしているわけで、感慨深いものがありますね。私たちも生き抜かねば。


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