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2022年上半期ベストトラック・アルバム10

2022年上半期ベストトラック10

DOPING PANDA「Imagine」

復活後の楽曲として、変に気張らないシャープでソリッドなバンドサウンドがバシッとハマっていた。それはスターのソロでも行っていたことではあるものの、三人が音を出すと「DOPING PANDA」の刻印が捺されるのだから面白い。

佐野元春 & THE COYOTE BAND「新天地」

ラストバースが好きすぎる。特に「二人はあの空に瞬いている人工衛星さ」のフロウなんてもう!こんなかわいいくらいの二人の関係への没頭ぶりは近作で言うと『MANIJU』収録「天空バイク」のよう。常に佐野元春という詩人は下の世代に語りかけ続けている。

私立恵比寿中学「ハッピーエンドとそれから」

エビ中も「過ぎ去ったあの恋」を歌うようなお年頃になった。たしかに一つの物語は終止符が打たれた。打たれた後には何も残らないのだろうか。いや、簡単には消え得ない。しかしながら、この楽曲のリズムのように思った以上に軽やかに記憶は褪せ、思い出の場所も者も移ろっていく。無常だ。年を取った大人だからその無常さの持つ苦みを味わおう。ちょっと振り返るだけ。すぐに変わっていくよ。

adieu「旅立ち」

今年30歳になったけど、普通に日々思うよ。「大人になれたらいいのにね」と。adieuの楽曲はもう少しメロウでスモーキーな印象があるけれど、こういうリズムがハネた楽曲も、上げ過ぎない歌メロとうまく絡まっててよい。betcover!、提供曲も中々やるじゃん~と、何とも上から目線なことを思った。

THE 2「恋のジャーナル」

サカナクション山口プロデュース楽曲ということで、中華風なイントロとか、「ショック!」などを彷彿とさせるトーキング・ヘッズ的な全体の雰囲気とか、正直鼻につくっちゃつく。しかし冒頭から早く刻まれるベースや語感を重視した歌詞に持ってかれてしまった。。。

lyrical school「Wings」

現体制で何曲もキラーチューンを作ってきたが、それらをもとんでもないとこから見下ろすかの如くドロップされたこの曲。浮遊感のある、しかし各所でのキメはおろそかにしない名曲。「I wanna」がなけりゃ夢は現実になりえない。みんなに無理といわれようがその口なんて黙らせてきゃいい。この羽は飛ぶためについてるんだって言うっきゃないでしょ、そうじゃないと人生つまらないでしょ。個人的に一番アガったバースは「セレブよりもエレガント~Sickなバースをspitするベティガール」。まさにじゃん。

Cody・Lee(李)「愛してますっ!」

なぁぁぁぁぁあにが「愛してます」だよ。歌詞で表している「愛」って全部性欲でしかないし、ベボベの「愛してる」みたいな「愛してます」という言葉への逡巡がなく、「当然聖なる言葉」としての「愛してます」でしかなくて、その迂闊さもどうかと思うよ。てかパートナーと「オオギリッシュNight」なんてよう見切らん…あれは「幼稚な男性性」の磁場の中だけで笑えるものだと思うし、その中だからこそ俺も笑っちゃってるしね…と言いつつ、さ。このくらい迂闊に「愛してますっ!」て勢いよく言えるような瞬間が人生に必要な気がする。それがいくら幼稚で愚かなものでも、このくらいポップに華々しく奏でられるとこれもいいんだと思ってしまう。

米津玄師「M八七」

まず気になったのは歌詞に谷川俊太郎「二十億光年の孤独」「万有引力とはひき合う孤独の力である」以降後半部分を引用というか、示唆させる部分が多いこと。曲名もそうであるが、宇宙というマクロコスモスと感情というミクロコスモスがつながり、同化している様を有名文学からの引用を用いて表現した点に上手さを感じた。弦楽器の使い方も、Bメロの低音も好きだ~。『STRAY SHEEP』以降もギア上がりっぱなしだな…。

柴田聡子「ぼちぼち銀河」

この人の言語感覚もエグいなと思ってたけど、この曲はそのエグさが極まってる。一聴すると「ぼちぼち行こうかねー」以外日本語かどうかも怪しく聞こえる。歌詞を見ると普通に文章として読めるので、彼女の言語感覚のエグさというのはリズムへの乗せ方、言葉を音として配置する感覚の鋭さを指すのだと確認する。彼女のこの感覚の鋭敏さはぼちぼち銀河を突き抜ける。

ばってん少女隊「虹ノ湊」

昨年の「わたし、恋始めたってよ!」から引き続き好調なばっしょー。今作も九州の地方アイドルとして、曲名然り「3号線」というワード然り、地域に根差したものとなっている。音像も歌唱も軽やか且つ爽やかでこの夏の一曲としてもベストな一曲となっている。

2022年上半期ベストアルバム10

宇多田ヒカル『BADモード』

全曲シングル曲みたいなアルバム(実際シングルカットされた曲の割合高いけど)。そう、俺、そういうのが大好きなんだよね。

ROSALIA『MOTOMAMI』

ラテンみのある歌いまわしが焼き付いちゃってもう。クロージングの歌い上げるライブ音源も魅力的。

私立恵比寿中学『私立恵比寿中学』

30歳のおれにとっちゃ、彼女らのアルバムの中で一番聞きやすい。ヘタに面白に振った曲がない点と、「邦ロック」めいたテイストの曲が少ない点がそう思えるところ。

DAOKO『MAD』

個人的に『anima』以降の彼女はいい意味でメジャー感が抜けて、「巫女みこナースにみくみくだー」とかネットカルチャー的なワードセンスもだけど若干のアングラ成分が高くなってるのが超面白い。

KICK THE CAN CREW『THE CAN』

前作は「千%」はカッチェええと思ったけど…という調子だったが、今作は初めにアゲて、中はメロウめに、最後は岡村ちゃんも登場し…と全体として非常に聴きやすかった。どの曲もシンプルにキャッチーだしね。

佐野元春 & THE COYOTE BAND『ENTERTAINMENT!』

「エンタテイメント!」を筆頭に「最中」に生きている私たちや彼らを描き、鼓舞する楽曲が多めの作品。これも仕上がりきってる作品だが7月にリリースされた『今、何処』のキレ味ったらすさまじい。

The Linda Lindas『Growing Up』

「Racist,Sexist Boy」の図書館でのライブ映像でバズり、それで知った十代女子四人組バンド。キャッチーなパンクチューンが並んでて一曲のバズにとどまらない魅力がはち切れんばかりに詰まってる。

lyrical school『L.S.』

現体制ラスト作にして、またここまで極まった素晴らしい作品作るの何なのさ!本当にありがとう!

Cody・Lee(李)『心拍数とラブレター、それと優しさ』

ヘタにBPM上げ過ぎず、ミドルテンポでキャッチーな楽曲を並べられる若手バンドが出てくるの超嬉しい。ジャケットからも伝わるハートウォームさがいい。

山下達郎『SOFTLY』

ほとんど既出のシングル楽曲を並べただけ…ではない!!シングルのマスタリングも今なものになってるし、アルバム曲も一人アカペラ曲や、今時珍しくもある「あなた」への思いを滾らせたエイトビートの楽曲や、セカンドラインに若き夢追い人へのメッセージを乗せた曲と聴きどころ多し。どこがソフトリーなんすか。尖ってますよ。

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