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「死神の精度」 伊坂幸太郎 著

「死神の精度」 伊坂幸太郎 著

 死神が、これから死を迎える人物の一週間前に派遣され、その人を調査するという話し。

 一週間以内に「可」か「見送り」かを報告する役目なのですが、この死神、とにかくミュージックが大好き。

 人間の死には全く興味がなく、誰がいつ死のうとどうでもいいクールさを持ちながら、ミュージックを聴くために調査をぎりぎりまで引き伸ばしているという、ちょっと人間くさいところがあるのが面白い。

 かといって、調査をしないわけでもない。

 大手電機メーカーの苦情処理係の女
 任侠の男
 殺人事件に関わる女
 ブティックに勤める男
 母を刺した男
 美容院の老女

 わりと真面目にその人物と関わる。

 「人間というのは実に疑り深い。自分だけ馬鹿を見ることを非常に恐れていて、そのくせ騙されやすく、ほとほと救いようがない、と私はいつも思う」

 「人間は不思議なことに、金に執着する。
音楽のほうがよほど貴重であるにもかかわらず、金のためであれば、たいがいのことはやってのける」

 「人間というのはいつだって、自分が死ぬことを棚に上げている」

 等々、死神目線の発言はかなり鋭いものがあります。

 しかし、中には死神をも超えている?ような人物もいて(ネタばれになるので詳細は控えます)
最後に出てくる老女はとても素敵だと思いました。あんな老女になりたい♪

 「人が生きているうちの大半は、人生じゃなくて、ただの時間、だ」

 興味がないと言いながら、人間のことをよく観察している死神。

 なんだか憎めません。

 さらっと読めるので、お勧めです。

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