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断片:「知性」という謎...

なかなかおもしろいお題をいただきましたので、僭越ながら「知性」について少し考えてみました。まあこのテーマ、様々な碩学が取り組んだ話でもあり哲学的な難問でもあるので、浅学非才というよりは無知蒙昧の身には重すぎる課題ではあるのですが、せっかく思いついたものなので(笑)。

結論から書きますと「知性とは世界を革命する力」なのではないか、と考えるのです。

「おいおい、「少女革命ウテナ」かよ、これだから学の無いヲタクは…」という声が聞こえてきそうですね(笑)。私も逆に話を聞く立場だったらそう思います。とはいえ、別にふざけているわけではありません。人類の歴史において「知性」が果たした役割というのは、やはりそれだと考えるのですよ。

化石、生活の痕跡等で確認されている人類史は、まず他の動物達と同じく狩猟採集ではじまります。食料を求めて狩りをして、木の実などを探し求める生活スタイルですね。一見他の動物達と何も変わらないように見えますが、違いがあります。そうです、道具の発明でありその使用です。
強力な身体能力や爪や牙を持ち得ない人類は、道具を用いることによってそれを補い、さらにその道具をより強力な使いやすいものとすることで他の動物達を圧倒する力を得ていきます。集団で狩りをすることでより強力な相手を圧倒する種は他にもいますが、これと道具を組み合わせているのは人類だけと言ってもいいでしょう。知性によって人類は他の動物達とは異なる狩りの手段を得たわけです。

次に人類は「農耕」という生活手段を得ます。蟻など一部の昆虫類/動物には菌類などを栽培するものもいますが、生活/生存を安定させるための手段として農耕を行い、それを大規模化することで社会を形成する手段とするのは現状人類だけです。歴史学的にも農耕の発明は産業革命のような人類史のターニングポイントと位置づけられるもので、ある意味、これが人類と他の種を決定的に分けた理由と言えましょう。種を植えてそれが成長するのを待つのではなく、意図的にそれをより有利な方法で繰り返して安定的な食料源とする。食料を意図的/計画的に作り出すことでそれを「天の恵み」から「生産物」へと変化させた。世界を革命する力、という言葉がうっすらと見えてきたと思います。

安定的な食料を得ることに成功した人類は「産めよ増やせよ地に満てよ」と数を増やしていきます。食物連鎖の頂点にいる種が数を増やせば、他の生物であればそれは乱獲による食料源の枯渇を生み、結局は数を減らして生存環境のバランスが取られるわけですが、農耕という手段を得た人類はそれに牧畜(他の動物類の飼育管理)という手段を合わせることで乗り越えて(他と比較すると)爆発的な増加をします。こうなると、狩猟採取を円滑に行うため/農耕を行うための共同体ではコントロールが効かなくなってきます。おそらく原始においては「生存圏」の獲得のために多くの共同体が戦いを余儀なくされていたことでしょう。食料源の枯渇以外の方法で種の数がコントロールされていく…かに見えた人類は、さらに革命する力を得ます。そう、国家の誕生です。

王/祭祀者という特権を持った者を戴き、その支配下/庇護下に入ることで集団を統括しコントロールしていく。人類はそれまでの所与の集団、つまり血縁や利害を共にする者達の集団から、より高度で複雑な集団へと変化していったわけです。血縁でもない、直接的には利害関係にあるわけでもない、しかし共同体の一員として「同じもの」と認識できる集団。「ローマは一日にして成らず」で徐々に環境と心理は変化していったと考えますので国家の誕生は当時の人々にとっては自然な推移だったと思いますが、時間軸を広げて見てみると、大きな変化であることがわかると思います。

ここから先は歴史の教科書でも読まれたほうが早いし正確ですね。
これらの一連の変化が知性抜きに行われた、と考える人はほとんどいないと思います。遺伝子の要請にしては複雑すぎる話ですからね。ただこれが「知性があったからこそ人類は変化した」と考えるか「生存環境を変化させていく過程で知性を獲得していった」と考えるか。おそらくそれは車輪の両輪で、相互補完的なものと考えるのが一番正確なように考えます。文章で書いて駆け足で見ていくと人類史はスムーズに変化したように見えますが、実際は失敗の連続でわずかな成功体験を積み重ねながら今に至ったのでしょうし。モノリスに触れたことで一夜にして知性を獲得した、善悪の知恵の木の実を食することで知性を獲得した、プロメテウスに火を貰うことで知性の火が灯った、という話はどれも後付なんでしょうな。成功した革命もまた失敗した/敗北した革命の死屍累々の上に成立するものですし。

世界を革命する力たる「知性」もまた、天上ウテナのように揺るがぬ心/挫けぬ魂から生み出されるもの、それ自身なのかもしれませんね…

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